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口は禍の門-琴ノ葉扇の不可思議結友譚-  作者: 角笛譲治
序章:始まりは禍と共に
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神のいたセカイ

「…希さん流石に端折りすぎです」


「安心した…そんなノリで高校生活滅茶苦茶にされたのかと思った…」


「たは〜でも掻い摘んで言えば間違いじゃないんだよね。まぁ一個ずつ説明するから」


 何わろてんねん…いかんこの人のノリに振り回されたら途中で倒れそうな気がしてきた。ただでさえ人智を超える話や経験を今日だけでいくつもしてるから風邪がぶり返しそうだ。


「まず管理ミスについてだけど…私ら以外にも管理を任された一族は存在してて、そこと揉めた事件があったの。そのゴタゴタで封印が緩んじゃったのね。全部飛んでったわけじゃないけれど半分以上は失くなっちゃった」


 話を聞く限り「あ!うっかり天変地異!」って感じじゃ無さそうだし一旦怒りを引っ込めよう。そもそも三代前の話なら希さんは関与してないし色々言うのも筋違いか。


「で、神の力…神力(しんりき)って言われてるんだけどそれが降り注いだ結果、たくさんの人に吸収されちゃった。コレは神も一族も予想外だったんだけどね」


「…でもそれが三代前のことなんですよね?その時点で能力があるならもっと目立っててもおかしくないのでは?」


「いや、神力が入れば即能力が開花するわけじゃないのよ。能力に目覚めるには一定量以上貯まる事と何かきっかけになる出来事が必要だから。ただ…神力って子孫に遺伝するのよね」


 希さん曰く、神力を持つ者同士が子供を産むことでその子供は両親の分を足した量の神力を生まれ持つらしい。さらに兄弟姉妹らにも平等に神力は引き継がれるためねずみ算的に神力の総量が増える。さらにさらに戦後2回のベビーブームでついに神力が一定量を突破する人が多く現れる。


「だから数代経た今の時代に能力を持った人が産まれてる…と。もう一つの条件のきっかけって?」


「何か願いを抱いたときがきっかけになることが多いわね。願いの大小・強弱関係なく少し()()()形で能力は願いを叶えようとする。友達を欲して洗脳を手にした君みたいにね」


 と言う事は俺が能力を開花させたのはやっぱり転校の挨拶の時ってことか…確かに能力のおかげで友達に類する関係を一時的に結ぶ事はできたが、決してあの関係が正しい関係とは思えない。本質的には屈服や隷属と呼ぶべき関係だろう。言われた通り歪んだ叶え方って訳だ。


「……」


「…何よ、いきなり見つめてきて」


「いや、刀を取り出す能力ってのは何を望んだら開花するのかなって」


「目の前の失礼な奴を八つ裂きにしたい、とかじゃないの」


 目が笑ってない…科学室を爆破した辺りから当たりが強いんだよな。確かに大変なことをしてもらったけどそんなに目の敵にしなくてもいいだろうに。


「そういった経緯があって今、全国各地に段々と能力を開花させたであろう人が多くいるの。その中には故意か否かに関わらず事件や事故を起こしてしまう人が居る…だからこそ私達が居るってワケなのです!」


「私が急な転校として貴方のいる高校にやってきたのも、能力者がいることがわかったので探りを入れるためだったんですよ。3日目で大事件を起こすとは思ってませんでしたが…」


 キメ顔でポーズを決める希さんと大きくため息を吐いて呆れる桜木さんとでテンションの差がすごいのだが…でもそうか、さっきまで俺の事ばっかり考えていたが似た境遇の人がもっといるのか……俺はたまたま桜木さん達の助けが入ったがそうでなかったら。そう考えるだけでゾッとする。




 質問会をしながら歩いているとようやっと目的地に着いたようだ。着いた場所は神社の境内、入口には<神巫神社>と彫られた大きく苔むした石柱が置いてある。


「さて、質問は終わりにしてこれからの事を話しましょう。和、少し席を外しててもらえる?」


「わかりました。疲れたので応接間で休んでますね」


「琴ノ葉君はこちらに」


 少し雰囲気に気圧されて押し黙りながら後ろに着いて行くと案内されたのは本殿の中、御神体というのかわからないが儀式とかはここでやるんだろうと想像がつくくらい荘厳な雰囲気の場だった。持っていたお菓子入りの袋を横に置き、敷かれた座布団に正座した希さんに倣って俺も腰を下ろす。


「それでは今から琴ノ葉君に大きく分けて二つの選択肢を与えます。一つは「能力をこの先一生使用することなく一般人として生きていく」選択です。世間体の都合上、和はすぐに学校を離れる訳にはいかないので少しだけ一緒の学校に通うことになりますが、貴方はこちらのお仕事にも一切の関係を持たずに生きてもらいます」


「…ここ3日であった事は墓まで、って事ですよね。わかってます…それでもう一つは?」


「「私達と一緒に神社(シュライン)として活動する」選択です。この選択肢は誰にでも持ち掛けている訳ではありません…貴方の能力が『洗脳』であるから故の提案です」


 希さんは真っ直ぐこちらを見つめながら淡々と話を進めてくる。先ほどまでの全てをケラケラと笑い飛ばす緩い雰囲気の彼女がそこに居ない事が、この選択の重要性を俺に伝えてくるように感じた。


「それは俺の能力が危険すぎるから…という認識で間違いないですか」


 希さんは肯定しない…しかし否定もしなかった。少し目を落として次に発する言葉を考えてから話を再開する。


「…「口是(くちはこれ)禍之門(わざわいのもん)」、と言われます。口から発される言葉は禍をもたらす故に余計な口を出すことは身を滅ぼす…だなんて、まさに今の琴ノ葉君ですね?願いを口にしてしまったばかりに友人を洗脳、あと校舎爆破」


「…到底、扱いを覚えられるとは思えません。封じて生きていく方がまだ…」


「されど他の人はこうも言っています──


 俺の言葉を遮り、けれども優しく、神が教えを解くように彼女はこう続けた。


 ──口は「禍福の門」とも。貴方がもたらすのは本当に()だけですか?」

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