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沈下橋

作者: 口羽龍

 ここは高知県。最後の清流として知られる四万十川をはじめとする高知県の川には、多くの沈下橋がある。沈下橋は、桁の低い橋で、増水すると橋が沈む。これによって、増水して流れが速くなっても、橋が流されない仕組みになっている。とても素晴らしい風景で、それを目当てに来る観光客も時々いるという。


 悠斗ゆうともその1人だ。悠斗はその写真を撮って、ホームページやSNSで公開するのが好きだ。多くの人からお気に入りをもらっていて、もらったらもっとしたくなってくる。


 今日向かっているのは、高知県西部にある、仁志にし沈下橋だ。仁志とはこの辺りにかつてあった集落の名前で、すでに集落は消滅している。だが、沈下橋にその名前を残している。その集落に続く唯一の道だった沈下橋で、今ではめったに人が通らなくなった。だが、秘境感あふれる場所にある沈下橋という事から、観光客がたまにやってくるらしい。


 しばらく走っていると、山奥に1つの沈下橋が見えてきた。それが仁志沈下橋だ。秘境感あふれていて、周辺に民家が1軒もない。あるのは山林ばかりだ。今となっては、どうしてここにあるんだろうと疑問に思うが、その先に集落があり、子の橋こそが集落の外へつながる唯一の橋で、生命線のような橋だった。そう思うと、この橋のすごさがよくわかる。


「これが沈下橋か」


 悠斗は車を走らせて、沈下橋の手前にやって来た。川はとても澄んでいて、飲んでもおいしそうだ。沈下橋は何年も整備されていないものの、原形を保っている。


「すごいなー」


 悠斗は車から降り、沈下橋を眺めていた。とても美しいな。悠斗は泳ぎたくなってきた。ここで泳いだらとても心地よいだろうな。


「よし! ダイブしよう!」


 悠斗は海水パンツ一丁になった。ここ最近、暑い日々が続いていて、日差しが強い。


「うぉー!」


 悠斗は元気よく沈下橋からダイブした。水しぶきが飛ぶ。とても気持ちいいな。だが、誰もその様子を見ていない。この辺りは誰も通らないようだ。


 悠斗は水面から顔を出した。とてものどかな風景だな。これが日本の原風景なんだろうか?


「ふー、気持ちいいー!」


 と、悠斗は足元に違和感を感じた。誰かに引っ張られているような気がした。悠斗は足元を見た。だが、誰もいない。


「あれっ!? ど、どうした?」


 確かに引っ張られる感覚があったんだが。何だろう。まぁ、足を引っかけたんだろうな。


「き、気のせいか・・・」


 沈下橋でダイブをするという目標もした事だし、もう帰ろう。悠斗は沈下橋に戻ってきて、海水パンツを脱いだ。そして、体をふいた。


 と、悠斗は後ろに誰かがいる感じがして、振り向いた。だが、そこには誰もいない。さっきから何だろう。全くわからないな。


「帰ろう」


 悠斗は車に戻り、沈下橋を後にした。沈下橋はいいものだ。また別の沈下橋を見てみたいな。そして、ダイブしたいな。




 悠斗は峠道を走っていた。この辺りには峠道があり、それが秘境感をより一層感じさせている。峠道はどこまでもつづら折りになっていて、終わりが見えない。


「ここまでの道のり、大変だな・・・」


 悠斗は疲れてきた。この峠道はいくつもつづら折りが続く上に、道幅が狭い。車のすれ違いができない部分が多い。この先で対向車が現れたら大変だ。延々バックは勘弁だ。


「ちょっと休もう・・・」


 悠斗は疲れたので、少し休む事にした。ここは峠の中腹にあり、沈下橋を見下ろす位置にある。悠斗は車から出て、その景色を見た。とてもいい景色だ。遠くの山々が見える。こんな高い場所まで登ってきたんだな。


「気持ちいいなー」


 悠斗は下を見た。そこには今さっき訪れた仁志沈下橋がある。とても美しいな。


「いい眺めだなー」


 突然、悠斗は誰かに気配を感じ、振り向いた。


「あれっ!?」


 だが、そこには誰もいない。今さっきもそんな事があった。一体何だろうか? まさか、沈下橋にダイブした時に、呪われた? いや、SNSではそんなのは聞いていない。


「誰もいないよな・・・」


 悠斗は再び前を向いた。その時、悠斗は誰かに押された気がした。そして、悠斗は足を踏み外した。


「うわっ・・・」


 悠斗は崖から落ちた。まさか、こんな事になるとは。悠斗は驚いていた。


「うわぁぁぁぁぁぁ!」


 叫び声を残して、悠斗は谷底に消えていった。


 後日、悠斗の遺体は仁志沈下橋で発見されたという。そしてその横にはもう1人の白骨化した遺体があった。


 これは噂だが、仁志沈下橋を訪れ、ダイブした人は、その日のうちに何らかの理由で死ぬという。それは、仁志沈下橋でダイブして、溺死した人の亡霊だと言われている。

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