第八章 〈カイシア〉の城塞② 新世界より
いつもより字数多めなのに、そんなに書いた気がしない。
この章はほぼ設定を述べているようなものだからかな…
ガガバーカはあの高い建物の中に通された。
タリシテンも一緒に。
それらを迎え入れるのは〈ズィンズィ〉と〈ソオム〉と呼ばれる二人の長老だった。
ガガバーカはすぐにでも自分の腕を披露したかったが、長老と見張りたちに止められた。
「まずはこの城塞の中を案内しようと思います。話はそれからですね。」
『城塞』というのは、どうやらこの集落全体を指す言葉のようだ。
すでにあの変な口調と語尾を無視できるようになったガガバーカだが、この人たちの作り出す「物」とその「呼び名」にはやはり少々興味がある。
長老と見張りに連れられて、『城塞』の中を廻ることとなった。
ここの構造はなんと不思議。
さっき中へ通された時、『門』に入ったらそこは高い柵に隔てられている独立な空間、少し歩いてれば変な坂がある。そこを登ったら高い建物の入り口だ。
その坂の変わった所と言えば、足の踏むところはちゃんと平らに整っていて、まるで坂の表面を入念に削ったようにできた一つ一つの突起部が、平穏な上りと下りを実現している。更に地面には表面を綺麗に削られた小さな石がぽつぽつと埋め込まれていて、恐らく足元の土地を固めるためにあるのだろう。
雨の日に足は滑らなくなる効能もあるかも、とガガバーカは推測する。
そして今度一行はその囲まれて出来た空間へ戻り、入ってきた『門』と違う側にあるもう一つの『門』を通った。
「ガーーガガガガガ」
軋む門をくぐった先は、見たことのない新天地だった。
「我が〈カイシア〉の歴史は長いですが、今のこの様子があるのはすべて先々々代首領のおかげでした。」
「あの方は流れ着く人々を集落だったここにお招きし、まとめ上げ、それぞれの技術や知識を活用させる場を設けました。」
「人員が増え、やがて人々は住む土地を広げ、知識と発想を応用し、首領のためにあの高い楼閣を築き、ここも『集落』から『城塞』へと変わりました。」
「その偉業を讃えるため、人々はここーー〈カイシア〉の名にちなんで、その首領をこう呼び始めました。」
「それが一代目〈シア長〉です。」
二人の長老がだらだらと何かを説明をする中、ガガバーカは既に興奮を越えて心臓が止まりそうになっている。
ここの人は皆、帳幕ではなく木で組み立てられた住処に暮らしている。
それだけじゃない。
住処の並びには明確な計画性を感じる。ちゃんと誰かが考案して建てる場所を指示したのに違いない。
そして何より、その間には意図的に草の生える場所も組み込まれている。しかも手入れもされている様子だ。
あの種類の草はガガバーカも知っている。寒い季節が過ぎてちょっと暖かくなれば先端にブツブツと毛が生えるやつだ。
そのブツブツの殻は石で叩いて割れば中身を食べられる。ちょっと硬いが割と美味しい。
確か子供の頃…トルンとクーチャがそのブツブツをいっぱい集めたら、少し凹んでる石の上にそれを置いてすりつぶして食べてたな。兄たちは賢い。
「一代目の〈シア長〉が亡くなられたあと、〈シア長〉という名はその息子の二代目に継がれ、更にその孫の三代目にまで続いてました。」
「お二人ともその名に恥じぬ為人でした。誰とでもすぐに打ち解けられて、皆と親しんでいらっしゃったのです。三代目が早くも父の後を追ったのは遺憾でしかなかった。」
「あれは私たちにとってもあまりにも突然で信じ難いことでした。あの人は若くも世継ぎを残さずに去されました。」
「だから当時一番あの人の傍で見て、あの人のやりたかったこと、〈シア長〉たちが三代に続いて思ってた〈カイシア〉の在り方に詳しい私たちがその任を継いで、手を取り合ったのです。」
「それが<ヤクウィン>、私たちのことです。」
「ズィンズィ、ソオム、ジギオ、エギオ、ケイルイ、ホム、カイハッツ、全部七人です。」
「あれからも長かったですよ。皆老いましたね。」
そんなことを言われても、ガガバーカはほぼ何も聞いちゃいなかった。
ずっと驚いてる様子で口を半開きにし、周りの斬新な事物ばかりに目を惹かれていた。
「……………………ガガバーカ様?何かございましたでしょうか?」
ズィンズィと自称している初老男性がこちらに問いかける。
するとソオムのおばさんがすぐに気づいた。
「あれのことですか?無理もありません、最初に見た時誰もが驚いてました。
ガガバーカさんは以前どの様な所に住んでました?」
口と頭をうまく動かせないガガバーカが何とか唇を震わせて、
「……とっ、と、と…ばり。
こここ、こ…こ、これは…なんて…うん……」
同時にそのアホみたいな顔をそのままソオムに向けて、あの住処に指さして聞いた。
「はい。木造の居宅ですね。少なくとも〈カイシア〉ではそう呼んでいます。」
「あそこの草は…」
「はい。食用ができますね。ある人の発見のおかげで、現在は試しに植えています。」
「う…植え?」
「はい。食用できるあの粒を私たちは『種』と呼んでいます。特定の季節で種を土に撒いたらできるとのことのようです。」
ガガバーカの目が飛び出て顎も外れそう。
「た、種で、生やせるの?!」
無理もなかった。
今まではずっと勝手に土から出て来るものだと思っていた。
こんな仕組み、トルンからですら聞いたことがない。
恐らく兄も父も知らなかったであろう。
でもここには、そういうのを発見できる人がいる。
いや、それだけじゃない。
ガガバーカの頭の中にはさっきから見てきた門と坂と建物が浮かんで回り始めた。
ここには自分の考えたこともない、もっと広大な世界を知ってる人が、わんさかいる。
ここでなら、もしかして……
「続けて廻りましょうか?」
「お…う、うん!」
もしかしたら、タリシテンを育ててやれるかもしれない。
ガガバーカが言うその「草」は、大麦のこと。実は大麦も小麦も栽培化の時期はほぼ同じです。
地中海沿岸は昔から色んなイネ科植物の原産地でした。ただし大麦は小麦より乾燥に強いというイメージ。
え?古くからはホモノ科と呼ばれてた?ホモノか…
9/21追記。叙述中に矛盾が見つかり、ちょっとカイシアの歴史についてちょっと修正を行った。




