第二章 世界の果て
依頼してるイラストレーターがほっぽった…絶望…
未だに他に依頼できそうな人がいない。風邪も相まって約1ヶ月更新してない…恥辱!!!
ガガバーカは野を駆ける。
部族が棲む小さい森を抜けたら、辺り一面は果てしない草原と荒地だった。
ここは見晴らしがよくて隠れる場所は少ないが、羚羊の群れが生息してるから、一人で狩りに出る時はたまに来る。まだ見覚えのある地域だった。
そして太陽が枯れ木の頂上を登り切った折に、ガガバーカは河に辿った。
どこへ行く、これからどうするとか。最初は迷いもあったが、走っているうちに考える気も失せた。
無心とは呼べないが、本能がままに赴いた。
水源が身近にあれば、それに沿って遡ろう。
途中に蛇がいたから、それの頭を砕いて、食糧に取っとこう。
余計なことを考えた瞬間絶望に沈みそうだから、目先のことだけを追った。
そしてついに、境い目に来ちまった。
一見終わりのない草原にも、涯はある。
夕日が射す影で底が見えなくなったこの峡谷が、ガガバーカの知り得る限りの世界の果てだ。
ここは狩りに出ていた時の、一番遠い折り返し地点だった。
ここから部族に戻るには、獲物を抱えずとも半日以上はかかるからだ。
この谷を越えて逃げた動物は、追わないと決めていた。
この谷の向こうにあるものや景色は、ないに等しかった。
ここまで来ると、ガガバーカはとうとう最大の問題に直面しないといけなくなった。
ーーいや、ここまで来たんだ、その問題はもう問題じゃない。
立ち止まるガガバーカは谷を見て、忽然平静になった。
恋しい家も、これからのことも、今の自分にはどうしようもできない。
ガガバーカは谷底に溶け込んでいく自分の影を見ながら、そう思った。
荒い息を立てる度、谷底の影がどんどん大きくなっていく。
その影も息を吸っているみたいに、冷たい風が背後から吹き抜ける。
日の入りだ。
今日の寝所を作らないと。
ここは地勢が高い、火を起こしていれば獣が無暗に襲ってこないはずだ。昼に狩った蛇も焼ける。
ガガバーカは風の当たらなさそうな場所を選定し、地面を削るようにすこし掘って、周りに石を積んだ。
荷物も石の下に隠して、火起こしの材料を集めに行った。
草と枯れ木、多ければ多いほど良い。枯れ木は切らずに燃やせば、火を見張らなくても一晩は持つ。
ガガバーカは材料を集めながら悩んだ。今持ってる毛皮で一晩凌ぐか、ちょっと縫って被り物にするか。それを考えてる時に、微かな音に気付いた。
目の前の草むらが変に動いている。風とも違う音が中からする。
緊張感がすべての考え事を吹き飛ばした。そこにいるのは獲物か狩人か。
槍は寝所に置いてきた、手に持ってる斧で対処するしかない。
五感を研ぎ澄ました中、さらに聞こえてきた「うぅーうぅー」の鳴き声。
仔の声だ。幼い動物が草むらの中に隠れている。
ここは何かの巣だ!
そう思った途端、ガガバーカの背筋が凍った。
猛獣で親も近くにいれば間違いなく殺される!
あの草むらを視界に入れつつ最大限度に周りを見渡した。怪しい姿はない。
暫くそこで草むらと睨み合ってたら、襲ってくる気配もなかった。
ただその鳴き声だけが延々と続く。
しめた!今日は腹いっぱい食える!そう思い切って草むらに入り、斬りかかろうとしたガガバーカ。
が、そこにあるものは既に死体となっていた。
狼だったものが二匹、そこに横たわっている。
首と背中に大きな咬み傷、横腹が爪で引きちぎられていた。そこは既に空洞になっていたが、内臓はあまり残されていない。
傷の大きさから見ると、狼よりデカい何か。ここで生息しているものなら、獅子の可能性が大きい。
ガガバーカはもう一度、周囲を見渡した。
怪しい影はない。もうどっかへ行っちゃったのか。
他の狼も見当たらない。
にしても、ガガバーカは思った。さっきの音はどこから?
しゃがんで死体の温度を確かめようとするその時だ。小さい何かが死体の下から飛び出して、咄嗟にガガバーカの手に噛み付こうとした。
だが、ガガバーカの反応速度が一枚上手だった。手をそのまま横に振り払い、小さい影を叩き飛ばした。
「うぅ゛ぅうぅ゛ぅ」と悲鳴をあげながら体を起こそうとしているそれ、よく見てみたら、血まみれの狼の仔だった。
その正体を確認したガガバーカは、目下一番興味をもつ所に視線を戻す。
死体は既に冷たく、ばら撒かれた血も固まってた。
体型からすると2匹とも成熟した個体で、恐らく番だっただろう。
子供は一匹だけのはずがない。長の二匹が襲われているうちに、群れの若いのが他の子を連れて逃げたのか?
残っているこいつは逃げそびれたか、はぐれて戻ってきたのか?
死体の様子も気になる。
獲物として持ち帰られてはいない。食べられたのは内臓だけだ。これは縄張り争いなのか?それとも何かの見せしめか?
ガガバーカはまた視線を仔の方へ投じた。
その仔はよろめきながら体勢を立て直そうとしてる。脅かそうとしてるのか、呻き声をあげようとしても、幼さゆえにただの「うぅーうぅー」になってる。
その様子じゃ、ずっと親を離れたくなかったのかな。
さっきの音も鳴き声も、親を揺すって起こしたかったのだろう。
少し戸惑ったが、ガガバーカは斧を腰の帯に収めた。
親の前で仔を殺める趣味はない。
そして幼いそれに向き合ったまま後ずさりして、この場を去った。
仔の前で親をどうこうするつもりもない。
今夜は蛇肉がある。
まだ続く!