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眠りから醒めて(前半、フェンネル公爵視点)

「う、」

酷い夢を見た気がする。

起き上がろうとしたら、目眩でベッドから落ちた。


(あれ?俺、確か黒龍に刺されて…)


夜着を捲ってみたが、何の傷もない。


(本当に夢だったと…!?まさかそんなわけがない!)



「お目覚めですか。主様、三日間昏睡してましたよ」

「みっか…?俺は確かに黒龍に…」

「メアリージェニー様が治癒魔法で治してくださったのです。魂が体に戻ってからお辛いだろうからと」

「そうだ、メアリージェニーは!?」

「かなり消耗されて、今もお部屋で休まれています」


立ち上がり、裸足で駆けた。

目眩で畝る床。

何度も絡れそうになる足。

それでも構わず走った。




メアリージェニーはベッドの上で、文字通りすやすやと眠っていた。

「大変心配していたと、メアリージェニー様の目が覚めたら、いの一番に報告差し上げなくては」

「やめろ」

「ただ眠るだけだと仰っていましたから。一週間でお目覚めになるそうですよ、心配しなくて良いと」

「早く言ってくれよ…」


セレスが退出した後、メアリージェニーの前髪を整えて、手を握った。





✳︎ ✳︎ ✳︎





あったかいなあ。

まだ眠いし、ずっとこの暖かい所にいたい。

でも、そろそろ起きる時間だ。


「…メアリージェニー?メアリージェニー!」

「フェンネル、公爵様」

ふあ、と欠伸を一つする。

お腹が空いた。


「本当にきっかり一週間…。良かった、目が覚めて」

「…ただ眠っていただけです」

「そっけないな…君はまだ怒っているんだな?」


そっぽを向いた私に、頭を下げたのが分かる。

「傷を治してくれたと聞いた。ありがとう。それから、君に酷いことを言った。今からでは遅いだろうが、ちゃんと謝らせてほしい」

そろっと見ると、ほとんど泣きそうな顔で私を見ています。

なんだか、その顔に触れたくなって手を伸ばします。

私の手にフェンネル公爵様の手が重なりました。

それから、手の甲に口付けを落とされて、しっかりと私を見つめました。


「本当に、ごめん。俺が馬鹿だったのだ。それから、君を傷つけてしまった男が、こんなことを言っても信じてもらえないかもしれないが…俺は君を愛している。だから、一生俺のそばにいて欲しい」

「っ…!えっと、わ、私…私は魔王の娘で…」

「俺は、魔界で父君にお許し頂いたと理解したがそうではないのか?」


魔界でのことが思い出されて、顔が真っ赤になっていくのが分かります。

「それは、そうなのですけれど…人間界の方はそう上手くいくでしょうか…?」

「そんなことはその時考える。今は君の気持ちが聞きたい。正直に言いなさい。君が俺をどう思っているのか包み隠さずに」

「私…私は…ずっと、フェンネル公爵様のことお慕いしてました。知ってるくせに…意地悪ですね」

「それは死の匂いがしなくなってもか?」


あれ?

そういえば…私を強烈に惹きつけたあの香りがいつの間にか消えています。


(死の危険は終わったのですね)

そう思って胸を撫で下ろしました。


「香りなどではなく…フェンネル公爵様をお慕いしています」


私の頬に手が触れられたかと思うと、優しいくちづけが交わされて、溶けてしまいそうになります。

でも、初めてじゃない不思議な感じがしました。

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