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なんだか聖女に選ばれたみたいです

魔界にも花は咲く。

夜一番の闇がひとしきり辺りを支配した時、白く、ユキノハナが淡い光を発し、その頭を深く深く垂れる。

ぽとり、と落ちて、また次の晩に新しい花が咲く。


「メアリージェニー様!こんな所にいらしたのですね!探しましたよ、もう」

「だって、お父様ったらすごくお怒りなんだもの」

「そりゃ、そりゃあそうでしょう。私だってメアリージェニー様に人間界になんて行って欲しくないんですから」

「よくわからないんだけど、そんなに駄目なところなのかしら。お母様は人間だったってお父様は言ってた」


はーっとため息をついて、ローブのフードを取り去る鬼は、私付きの執事・ヴォーレ。

「もう一度、魔王様と話されてはどうですか?」


それで、私はヴォーレと一緒にもう一度お父様とお話しすることにしたのです。





それは魔界の真っ昼間、お父様と仲良く朝食でも摂ろうと思っていたら、天界から神がやって来たのです。

父は大喜びでした。だって、もともと魔王である父も魔界を司る神であって、久方の再会に嬉しそう。

いらしたのは、父の兄弟神で、地上の、特に人間を助ける神であります。

「時に弟よ、人間には聖女というのが必要なのだが、訳あって今の人間には聖女が務まりそうな女がおらなんだ」

「それはなぜです?」

父も私もふんふんと話を聞きました。

「人間の女は…何がどうしてそんなもん流行ったんだか、何やら腰巻きでキツく縛ったり、踵が高い靴を履いたり、まあそれだけじゃないが…諸々自分を痛めつけてばかりで、昔のように身体が丈夫なのがおらんのだよ」

「それで、」と言って、神は私を指さした。

私も自分の鼻を指さしてみた。

「お前の娘は人間の女との混血だろう?魔界生まれとなれば身体は丈夫なんだろうし、何よりお前の子なんだから申し分ない素質があろう。聖女に人間界へ遣わしてはどうか?」


父は、永い永い時を生きて、ただの暗闇となりました。

神も、永い永い時を生きて光となったので、それが突然に衝突するのは困ったものでした。

父は怒ると手がつけられませんので、私は父の怒りを諌めるためにも言ったのです。

「お父様、私、人間界に行きます!」


しゅうしゅうと蒸気を上げて、闇も光も一度間合いを取りました。

「メアリージェニー、何を言っているんだい?ち、父は反対だ…」

「お母様が生まれた人間界、見てみたいです」

「そ、それは…」


お母様は私を産んだ時に死んでしまったらしいです。

だから、人間なんて魔界に来る死んだ人にしか会ったことがありません。私の見た目は人間ですのに、生きた人間に会ったことがないのです。

そういうわけで、お父様はお母様の話しになると、たじたじになってしまうのです。

神は言いました。

「ほら、メアリージェニーもそう言っているし!可愛い子には旅をさせよ、だぞ!弟よ!それに私にとっても可愛い姪だ。悪いようにはせん。というか、人間には、メアリージェニーを連れてくる約束をしてしまったので反故にできん。私の顔を立てると思って!頼む!!」

神は人間に良い格好しいなので、一度交わした約束を破れないらしいのです。

それで、父は「そんな勝手な話、許せるわけがない!」と言って拗ねてしまいました。




ヴォーレはすっかり怯えて、私の後ろに隠れました。

黒い、暗い、大きな闇であるお父様を突いてみます。

「お父様、いつまで拗ねているんですか?」

「うぅっ…メアリージェニー、魔界におるのは面白くないか?つまらんか?」

「いいえ。みんないいお友達です。全然つまってます」

「つまって…?まあ、なら良いじゃないか…ここに居ればいい」

「…お母様はなぜお父様と結婚されたのですか?お母様は生きた人間だったんでしょう?」

「うん…。あれは、可哀想なことをした。私がまだ形をなしていた頃だったかな。一目惚れでな、あんまりおっとりしていて、警戒心もないので連れて来てしまった。お前は母さんにそっくりだ。だから…心配なんだ」

「…そうやって私も閉じ込めるつもりですか」

「お前は時々鋭いことを言うな」




そんな訳で、私は鞄一つで人間界に行くことになりました。

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