表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まぁ、ちゃんと戦う戦国軍記 ~めざせ!御屋形様と経済勝利~  作者: 東木茶々丸
第四章 武田家の逆襲 ~砥石城攻防戦~
96/349

外伝 村上の思惑

砥石城攻めの村上サイドの話になります。

天文十九年 九月五日 午前 場所:信濃国 中野 村上軍本陣


村上義清「そうか!武田め!やはり攻めてくると思っておったわ!」


 この時、村上軍は高梨氏との戦いのため、高梨氏の居館を包囲していた。

その居館のある地、中野は村上の居城である葛尾城かつらおじょうから千曲川沿いに、

十五里(約60キロ)北上した地点にある。


「はっ!主の清野信秀が申すには、先日、九月一日に武田軍は砥石城の麓に布陣。翌二日より攻撃を始めております!」

井上清政「義清さま♥お考えが当たりましたね!武田も清野様を信頼しきっていることでしょう……」


 この井上いのうえ清政きよまさ[1]。女ながら村上家でも名高い猛将である。


義清「強欲な武田が、一度きりで諦めるはずがないからな!至急、高梨に講和の使者を送れ!」

井上「わかりました~」


 命を受けた清政が急いで陣を出ていく。


屋代やしろ正国まさくに[2]「しかし……武田は動きましたか」

石浦「なぁに……また上田原の時のように、ブチ破ってやれば良いじゃねぇか!」


 石浦は興奮のあまり、勢いよく立ち上がる。


義清「仮に武田が動かずとも、そのまま高梨を滅ぼせば良い。どちらに転んでも村上に損はない」

石浦「そうじゃ!そうじゃ!」


 石浦は上田原の戦いによる戦功で厚遇されている男である。

己が思うがままに暴れることのできる戦場は、彼にとって理想の場なのだ。


 五日後、高梨氏が当主の妹であるを嫁がせることで講和が成立。

村上軍は取って返すこととなった。


義清「須田すだ[3]・落合おちあい[4]にこの場を任す。残りの者は反転する!続け!」

村上軍兵士「「「おおおおっ!」」」


 村上軍は、六日をかけて葛尾城に帰城した。



▼▼▼▼

九月十七日 昼頃 葛尾城 城内


義清「砥石城の戦況はどうなっておる?」

屋代「城将の矢沢・布下ぬのした[5]は守りに徹しており、武田は攻めあぐねておるようです」


 中野で知らせを受け取って僅か十二日後、義清は武田軍の包囲殲滅を謀っていた。

軍議を開いて、配下の将から報告を受けている。


石浦「楽巌寺らくがんじの坊主からは、真田に動きなしってことです」

義清「よし!」


井上「義清さまが依頼されていた上杉からの援軍ですが……」

義清「おっ!どうであったか?」

井上「はい。すでに碓氷峠を越えているとのことです」

義清「わかった。丁度いい頃合いになりそうだな」


 義清は各軍勢の状況が、自分が描いた予想図の通りになって満足していた。

だが、それでもまだ物足りなく思っていた。


 義清は地図を眺めながら、武田にとって嫌な一手を思いつく。


義清「そうだ……花村を動かそう!小笠原の者どもに助力して攻め寄せよ!」

井上「なるほど……ここで深志の方面でも動きがあれば、武田にはさぞ辛いことでしょう~」


 小笠原への援軍として義理立てにもなる。

以前の林城への援軍の時は、小笠原がもろすぎた……と石浦から報告を受けた。


義清(正直……戦力としては、さほど期待していないが……)


屋代「高遠様はどうです?」

義清「高遠か……」


 武田に不満ながら従属している高遠頼継は、村上にとって情報源の一つであった。


義清「動く気があるならば、とうに動いている気もするが……。一応、催促の使者だけ出しておけ」

屋代「承知」


義清「そんなところか。武田の若造め……いろいろ小細工をしておるようだが、まだまだ若い」

石浦「義清様は五十目前の大ベテラン!負ける気がしねぇぜ!」


義清「ははは、言うたなコイツめ!明日は休みを取り、明後日に出陣だァ!上田原では叶わなかった晴信が首、今こそ討ち取ろうぞ!」


石浦・井上「はい~」「おうっ!」

屋代「……はっ」


 意気揚々と石浦・井上の両将は広間を出ていく。

一方で後から広間を出た屋代の顔が、あまり優れていなかったことに気がついた者はいなかった。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

[1]井上清政:村上家臣。井上城主。女性なのは本作オリジナル。

[2]屋代正国:村上氏庶流。1520年生まれ。上田原の戦いにも従軍をしている。

[3]須田:須田 満親みつちかのこと。1526年生まれ。大岩城主。村上家臣。

[4]落合:落合 治吉はるよしのこと。生年不明。葛山城主。村上家臣。

[5]布下:布下 雅朝まさとものこと。生年不明。村上家臣。


お読みいただきありがとうございます。

村上家臣団は、もう少し省いても良かった気もしますが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ