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まぁ、ちゃんと戦う戦国軍記 ~めざせ!御屋形様と経済勝利~  作者: 東木茶々丸
第四章 武田家の逆襲 ~砥石城攻防戦~
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4-3-2 第七十四話 新たなる戦い

天文十九年 七月二十日 午後 場所:甲斐国 甲府 躑躅ヶ崎館

視点:律 Position


真田幸隆「お初にお目にかかります。富士屋の律殿」

律「あ、はい!初めまして律と申します!」


 虎姉さまと智様の着替え待ちの間、喋り相手が欲しいと留め置かれてしまった。

この眉毛……コホン。真田様は普段、対村上の最前線を守っている。

その真田が甲府に呼び出されているのは普通ではない。


幸隆「隆永から色々と聞いていますよ。小山田様を蹴落としたり、南部様を蹴落としたり……」

律「ははは……。よくご存じで……」


 隆永っていうのは、弟のトッキーこと常田隆永さんのことだろう。

情報に偏りがある気がするが、あながち間違いでもないから困る。

アタシが答えに窮していると、


幸隆「でもお気持ちはわかりますぞ。丸に上の字の村上の家紋を見ていると、こちらも腹が立ってきますからな……」


 ……どうやら、同志として認識されているようだ。


智様「待たせたな」


 智様が広間に、虎姉さまと勘助さんを連れて入ってくる。


律「それじゃあ、アタシはこれで……

勘助「あ、律さんは別にいてもいいぞ。口が軽い性格じゃないのは、よく知っている」

律「そりゃどうも……」


 かくして、アタシも武田家の戦略会議に付き合わされることになった。


智様「今日、真田に来てもらったのは他でもない村上攻めについてだ」


 虎姉さまが地図を広げる。

その地図に書き込みながら、幸隆様は解説をし始める。


                    ↑高梨たかなし

   善光寺平ぜんこうじだいら

                          

         葛尾城(村上居城)

              砥石城(村上)         

          千曲川

           塩田しおた

←林城            長窪ながくぼ城(武田)    岩尾城(武田・真田)



      諏訪


幸隆「お求めの砥石城への攻め込み口ですが……、塩田城[1]を起点にするのが良いでしょう。塩田の城へは長窪城[2]を経由して北上していくことになります。諏訪から砥石城へ向かう場合には、山道を行軍することになるので塩田で一息ついてから攻撃に移るべきです」


勘助「砥石城の手前には千曲川ちくまがわが流れてる。ここを越えてまで村上は攻撃してこないはずだ」


 川というのは厄介なもので、大抵こういう勢力圏の境の川は橋がかかっていないため。行軍にも輸送にも手間がかかる。


幸隆「砥石城が落とせれば、葛尾城の山の裏側から攻め込めます。相手に大きな心的影響を与えると思います。」

智様「わかった。……律は何か思いつくか?」

律「……」


 こういう時、京四郎ならば何か思いつくだろうが……アタシには戦術がどうこうとかさっぱりなので、力になれない。


律「アタシにはさっぱり……。地元の真田様が一番頼りになると思います。ねっ、高坂様?」

高坂「わ、私!?私ならばそうですね……。もし退却する時に千曲川があると大変だなぁ……って……」

真田「ふっ……。あっ、すみません。随分と悲観的な見方をされる方だと思ったもので」


  虎姉さまの意見に幸隆様が茶々を入れる。

そう言えば、真田幸隆は『攻め弾正だんじょう』。高坂昌信の場合は、受け……じゃなかった。たしか、『退き弾正』って呼ばれていたんだっけ。


智様「それに関しては心配ない。実は最近、村上は越後との国境を治める高梨氏[3]と抗争状態にあるとの情報を得た。すぐには戻ってこれまい」

幸隆「さすが智様。お耳が早い」


 すかさず幸隆様は智様を口で褒める。


律「でもそれならば、また戦いが起きるってことですよね。ついこないだ林城を落としたばかりなのに……」

勘助「秋になれば、米の収穫の時期になるからな。嫌がらせとしても十分だ。」

高坂「小笠原に勝った勢いがある今こそ。戦うべきだとも言えるからね」


 どうやら開戦の意思は堅そうだ。


智様「上田原の戦いでの雪辱から、はや二年……。いよいよ村上を打ち破る時が来た!」


▼▼▼▼

八月上旬


 出陣の太鼓が鳴り、信繁様と穴山の部隊が諏訪で小笠原の反撃に備えることになった。


武田軍 部隊構成


・砥石城攻略隊 武田智・信廉・板垣信憲・甘利信忠・小山田信有・真田幸隆・常田隆永・小山田虎満・高坂昌信・山本勘助・横田高松・小幡虎盛

・小荷駄隊 内藤昌豊

・諏訪駐在部隊 武田信繁・穴山信友・原虎胤・長坂虎房

・林城防衛部隊 馬場信春・飯富虎昌・飯富昌景・浅利信種・多田満頼・山家昌治

・甲府留守役 駒井高白斎・諸角虎定


 攻城戦ということもあり、砥石城攻撃部隊の武将は足軽大将が多く見られる。

逆に騎馬部隊、赤備えの武将たちは林城にいるのが特徴的だ。


 今回の戦いでは林城の戦いでの戦利品に味をしめてか、坂田屋など他の商家が乗り気であり、富士屋は手伝い程度になりそうだ。


 それでも随行員は出さなければならず、京四郎・律・一刀、そしてお龍が行くことになった。


 試しに聞いてみたところ、お龍は意外にも乗り気だった。

孤立気味な甲府にいても仕方が無いと思ったのかもしれない。


 天文十九年(1550年)八月上旬、武田家の砥石城攻めが遂に始まった。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

[1]塩田城:現在の長野県上田市にあった山城。

[2]長窪城:現在の長野県、長和町ながわまちにあった城。上田原の戦いでも武田家の拠点として使われた。

[3]高梨氏:信濃(長野)と越後(新潟県)の国境を治めていた小大名。善光寺周辺をめぐって村上氏と対立している。


お読みいただきありがとうございます。

いよいよ次回から砥石城攻め編です。よろしくお願いします。

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