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まぁ、ちゃんと戦う戦国軍記 ~めざせ!御屋形様と経済勝利~  作者: 東木茶々丸
第四章 武田家の逆襲 ~砥石城攻防戦~
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4-1-1 第七十話 そば にいるよ

天文十九年 七月一日 午前 場所:信濃国 諏訪

視点:律 Position


京四郎「ようやく、諏訪に戻ってきたな」

律「そうね~。アタシには色々と刺激が強すぎたわ。」


 初めての戦い、妖怪、人買い……様々な感情を揺さぶられる機会……。

意図せず、韻を踏んでしまった。

そのことについて自分でも、少しにやけてしまった。


京四郎「おいおい……。いくら諏訪湖が近いからって、あの晩のキッスを思い出してるのか?おませさんめ!」

律「あ、あれは気の迷いよ!さっさと忘れなさい!」


 アイツが急にからかってくるものだから、ムキになって言い返してっしまった。


律(もしかしたら、二度と会えなくなっちゃうのかも……そう思ったら想いが止まらなかったのよね……)

京四郎「おい、前!前!」

律「何よ!うおっ!」


 道の脇から伸びていた木の枝が頬を直撃したのだった。


▼▼▼▼

正午 場所:信濃国 諏訪 富士屋支所


 諏訪には、富士屋の支所が存在する。

諏訪への販路延長を計画した時に、この街の馬借と油屋を傘下に加えたことで、信濃における初の滞在先と蔵が確保されたのである。


 今後は信濃おける富士屋の重要な商業拠点として発展させていくことになるだろう。


京四郎「これぞ……S・K・S政策だな!」

律「SKS?」


京四郎「諏訪(Suwa)・甲府(Kofu)・駿府(Sunpu)でSKSってわけだ。どうせなら3C政策[1]みたいに頭文字を合わせたかったんだけどな」

律「それには甲府の街を改名してもらわないとダメね」


 不毛なやり取りをしていると、


まさ「あの~、諏訪の御寮人様の使者が来ております」

京四郎「あ、いけね!諏訪の姫様に戦いが終わったら、食事に誘われてたんだった!」

律「そういうことは早く言いなさいよ!」


 使者の人には、「一刻(1時間)程で参ります」と伝えさせた。


 御寮人様の屋敷に行く前に、サクッと部下への指示を済ませる。

雨による増水で牛乳が運べなくなってしまった時の手筈や在庫状況の確認。


 そして林城での人買いで得た新入社員を、このまま諏訪に残ってもらう人と甲府まで向かってもらう人に振り分けた。


 まささんと辰五郎さんには、このまま甲府までの戦利品と新人の道案内を任せる。

一刀さんはもちろん、警護役だ。


京四郎「それじゃあ……後は頼みます!」

律「留守の京乃介さんと平次くん、伝蔵さんにも無事だって伝えてください」

まさ「わかりました。任せてください」

京乃介「……わかった」


 珍しく、辰五郎さんの言葉が聞き取りやすい。

喉が潤っている状態なのだろうか?


 やがて富士屋の一行は支所を出発した。

その様子をアイツと二人で見送る。


京四郎「おやおや~まささんと辰五郎さん。けっこうイイ感じなんじゃないの?」

律「えっ!?」

京四郎「見てみろよ、あの距離感。手が振れるか触れないかって近さで……甘酸っぱいねぇ~」


 言われてみればそう見えるかもしれない。

普段の辰五郎さんが草食すぎて、恋愛とかのイメージが無かった。


 もう見えなくなりかけているのに、二人の様子を目で追いかけてしまう。


京四郎「お、おい!のんびりしていられないんだぞ!早く早く!」

律「そ、そうだった!」


 二人で慌てて、御寮人様の屋敷へと走ったのだった。



●●●●

場所:諏訪 諏訪御寮人様の屋敷


諏訪姫「やっほ~元気~?京四郎く~ん!」

京四郎「げ、元気~でございます」


 屋敷の奥の部屋に通されて、入った瞬間にコレである。

明らかに京四郎も、御寮人様のノリに飲まれている。


諏訪姫「こちらの女の子は~?」

京四郎「あっ、はい!同じく富士屋の代表の律です」

律「よ、よろしくお願いします」


 アタシは御寮人様に向かって平伏する。


諏訪姫「あまり、形式的にならなくていいよ~。屋敷の中なんだし、気楽でいいよ~」

律「あ、ありがとうございます」


 そのまま三人でしばらく談笑していた。

御寮人様はフランクな人柄で、何かと堅苦しくなりがちな目上の人との会話では一番気楽かもしれない。


諏訪姫「あ、夕餉ゆうげ食べてく?作らせてあるから、食べてき~」


 ここで、断るのも逆に失礼だろう。

律「ぜひご馳走になります!」

京四郎「お言葉に甘えて……」

諏訪姫「よしよし、それじゃあ三人分おねが~い!」


 御寮人様は、侍女に膳を持ってこさせた。


諏訪姫「お口に合えば、いいんだけど……」


 米と共に出されたのは、餅?だろうか。

お椀の中にねられた、塊が入っている。


京四郎「なんです、これ?」

諏訪姫「蕎麦そばがきって料理なんだけど、苦手だったりする?」


 そばがき!牧場経営ゲームで作ったことがあるけれど、食べたことは無いかもしれない。


律「いただきます」


 味はもちろん、そばの味である。

食感はモチモチとして、すいとんみたいだ。


京四郎「美味しいなコレ。……ちなみに《《そば》》ってあったりします?」

諏訪姫「蕎麦ならば、それのことだけど~?」


 どうも二人は話がかみ合わない。


京四郎「なぁ……もしかして戦国時代って、麺のほうのそばって無いのか?」

律「無いっぽいね……」


 それを聞いて京四郎は少し黙り込む。

やがて……、


京四郎「諏訪の姫様、よろしければ明日に新たな蕎麦料理を作りますがいかがでしょうか?」


 ええっ!!?こ、コイツ!そばが打てるのか!?


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

[1]3C政策:19世紀後半頃からのイギリスの政策で、カイロ (Cairo) 、ケープタウン (Capetown) 、カルカッタ (Calcutta) を結ぶ植民地政策をこと。


お読みいただきありがとうございます。

サブタイトルのギャグセンスが小学生並ですみません……。

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