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まぁ、ちゃんと戦う戦国軍記 ~めざせ!御屋形様と経済勝利~  作者: 東木茶々丸
第三章 小笠原家攻略~林城の戦い~
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3-3-1 第六十八話 小笠原の残光

天文十九年 六月二十八日 午後 場所:信濃国 林城 城外

視点:律 Position


 用事が一通り終わったので、今度こそ諏訪に戻ろうとしていると、虎姉さんに捕まった。


高坂「すまない……もう一日だけ出発は、待ってくれないか?」

京四郎・律「えぇ~」


 虎姉が言うには、今後の小笠原対策の会議がこの後に行われるらしく、その会議の方針次第で深志城近辺への補給体制が決まるらしい。


 確かに補給の話となれば、富士屋も無縁じゃない。


京四郎「仕方ない。少し出発を遅らせよう」

律「そうね~、こればかりは仕方ないわね」

高坂「そうか!ありがたい。助かるよ」


 出発を後らせたため、戦利品の運搬のために来ていた店員のまささんと達五郎さん、一刀さんに諏訪までの輸送を託した。


京四郎「虎姉~。これは貸しですからね?何かあればよろしく頼みますよ?」

高坂「うっ……、わかった。出来る範囲で何でもしよう」


 うわ……。コイツもS体質だなぁ~。

ちゃんと見返りを得ようとしている辺り、商人気質である。



▼▼▼▼

同日 夕刻 場所:林城城内


 小笠原の本城である林城とその一帯の城が陥落したことで、対小笠原作戦はひと段落ついた。

そして今、武田軍の首脳部による軍議が開かれている。


智「今の敵の様子はどうなっておる?」

秋山「報告させていただきます。」


 進み出て地図を広げたのは、秋山殿である。

彼は別動隊である馬場隊に属して転戦しており、つい先日も犬甘城を落としたばかりである。

彼は別動隊の報告役として、この場にいる。


秋山「地図をご覧ください」


 諸将は一斉に地図をのぞき込む。


          ↑安曇野(仁科)

             上ノうえのやま城(村上)[1]



                平瀬城(小笠原・平瀬)



                  犬甘城(武田・馬場)


中塔なかのとう城(小笠原・二木)[2]       深志城(武田)

                                   林城(武田)

                      井川館(武田)


秋山「現在、我々馬場隊は犬甘城を拠点に敵の来襲に備えております。先日に平瀬城の灯りが急に煌々《こうこう》とし始めましたので、恐らく長時はこの城に落ち延びたと見られます」

飯富虎昌「長時め、一命はとりとめたか。運の良い奴め」


 口惜しそうに虎昌は床を小突く。


秋山「林城が落ちたことで、安曇野の仁科を含む敵方の城に降伏の使者を送りましたが、いまだ返答はなく……」

信繫「徹底抗戦の構えか……」

秋山「ええ、そのようです」


高坂「村上の様子はいかがでしょうか?」

秋山「偵察の報告では、目立つ動きは無いとのことです」

智「ふ~む」


 智は、そのまま黙ってしまった。

武田軍は、小笠原方の城をいくつも落とし大勝利といっても過言ではない戦果を挙げた。

しかし、このまま小笠原家を滅ぼし尽くすとなると骨が折れる。


勘助「ここらが、潮時かもしれねぇな。村上の動きも気になるし……いい機会じゃあねぇか?」


 勘助が智の考えを代弁する。


内藤「良きお考えかと存じます」


 他の諸将も異存がないようだ。


智「よし、明後日にも引き上げを開始しよう。板垣の報せでは鈴岡の小笠原に動き無しとのことだ」

信廉「お、お~。武田の圧倒的な勢いの前に小笠原もなす術なしということだな!」


 調子よさげに信廉が相槌を打つ。


信繫「自信と慢心は違う。そのことは忘れてはならんが……

秋山「今夜は飲みましょ~!敵の館にあった酒も持ってきております」


 秋山が女たちに酒を持ってこさせる。


智「そうだな。戦に勝ったというのに、まだ勝利の宴もしていなかったな。……馬場には悪いが、今夜は飲もう!」

一同「おおおおおおおおおーーーーーーーーーーーー!」



●●●●

翌日(六月二十九日) 昼 場所:信濃国 上ノ山城


 ここは、小笠原の拠点平瀬城の北方6キロの地点に位置する村上氏の拠点である。

城主の花村はなむらは、ようやく到着した軍を率いる将を責める。


花村「今頃来たのですか?もうとっくに林城の一帯は武田の旗で埋め尽くされております。もはやどうにも出来ませぬ」


 花村はすっかり呆れ顔である。


「だって、本城の葛尾かずらお城からは50キロの山道だし~」


 謝罪よりも先に不満しかいわない、この肥満の男。

昨年の武田領内での略奪以来、失敗続きである。


僧の姿の武将「申し訳ありませぬ。この石浦いしうらが道案内も断ったあげく、道に迷うものですから……」


 この出家している武将は、楽巌寺らくがんじ 雅方まさかた[3]

彼は主君の義清が絶大な信頼を寄せる肥満体の男、石浦の副将として付けられたのである。


石浦「うるせぇ!てめぇらがナビゲーターを用意させねぇのが、いけないんだろ!」


 石浦は楽巌寺の脇腹を軽く殴る。


楽巌寺「申し訳ありませぬ……」


 元はと言えば、この石浦が道もわかっていないのにどんどん軍を進ませるから起きた事態である。


 人に丸投げさせておいて、自分は責任を取らずに逃げる。

新参者であり、この性格である。

時折、意味不明な単語を使う彼は家中の中でも厄介者であった。


 結局、村上軍の増援は小笠原を救援することは無かった。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

[1]上ノ山城:村上家花村氏の居城。平瀬城の北に約6キロ、標高768メートルにある山城。

[2]中塔城:小笠原家二木氏の居城。深志城から約15キロ西方にある。

[3]楽巌寺雅方:村上家家臣。生年不明。楽巌寺というお寺の僧侶。1548年の上田原の戦いでは村上側の先鋒を務めた。


お読みいただきありがとうございます。

石浦は創作上のキャラクターですので悪しからず。

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