2-10-4 第五十六話 何事も程ほどに
時間軸が全く進みません。
ご了承ください。
天文十九年五月上旬某日 午後 場所:甲斐国 志磨の湯付近の神社
視点:京四郎Position
智様「よし。これで久々に二人きりだな、京四郎♡」
注ぎなおした牛乳を片手に智様は、くっついてくる。
まずい。非常にまずい。
衝動的に手を出してしまったら、律・虎姉・シスコン信繁様等々フルボッコにされるのは確定である……。
よりによって智様とオレが、何故にサシで他の二人を待っていないといけないのか……
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時は10分ほど前に遡る。
智様が牛乳を飲もうとしたタイミングで、虎姉が筒ごと奪い去ろうとした。
ところが急に取ろうとしたためか、中身は見事に虎姉の胸元に吸い込まれていったのである。
律「虎姉さま、早く着ている物を脱いだ方がいいです。牛乳の臭いって早めに洗わないと、臭いが残るんです」
高坂「ええ~、着替えは持ってきてないなぁ。私は温泉には入っていなかったし」
たぶん、虎姉は前の時みたいに警護だけするつもりだったのだろう。
京四郎「オレが虎姉の家に行って取ってきましょうか?」
高坂「それはダメだ。あらぬ噂が立つ!」
智様「それじゃあ、私が」
高坂・律・京四郎「「「もっと駄目に決まってます!」」」
それじゃあ……、
律「じゃあ、アタシが取ってきます」
京四郎・智様「「どーぞどーぞ」」
智様もオレに合わせてくる。
律「ハァ~、わかりました。アタシが回収してきます」
高坂「申し訳ない。服の場所は、すぐにわかるはずだ」
律「はい!」
律は、部屋から慌ただしく出ていく。
高坂「それにしても、ビッチャビチャだなぁ」
虎姉は、気にもせずに帯を緩めていく。
京四郎「と、虎姉……!まだオレいますって!」
高坂「あ、そうだった。智様といつもの感覚だったから、つい……」
智様「ちょうどいい、虎も温泉に入ってくれば良いではないか」
高坂「そうですね……。そうします」
はだけかけている着物を、いそいそと着なおす。
高坂「京四郎殿、智様の警護を《《くれぐれも》》頼みます」
虎姉は温泉へ行ってしまった。
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そしてこの有様である。
警護って言っても、警護対象から近づいてきているんですけど!?
智様「私は……律がうらやましいのだ」
京四郎「へっ!?」
智様の思わぬ言葉に、驚きの言葉が漏れる。
智様「律は私の知らない、ヌシのことをたくさん知っておる。さっきの牛乳の話もそうじゃ」
京四郎「そりゃあ……昔からの付き合いですからね」
智様「虎とは、いつの間にか虎姉とか呼んでおるし」
あー、さっきの時ね。とっさに虎姉って呼びかけちゃったわ。
智様「律や虎は、ヌシと一緒に何処へでも行けるが、私は武田の領地を離れるわけにいかん」
普段の気丈な話ぶりと真逆のトーンで、智様は話し続ける。
武田家の影の当主、表舞台に出ることのない立場だけに思うことも多いのだろう。
智様「そうだ!知っておるか?虎は、ああ見えて経験があるのだぞ」
高坂「経験って……?」
オレはゴクリと唾を飲みこみながら智様に追及する。
智様「わかったおるクセに~、《《アレ》》の経験だ。ヤツのおっぱいは……感度が良くてな」
その情報、使う場面あるかなぁ……。
小笠原領から戻ってきて以来、以前よりオレに対する接し方が厳しい気がするんだよなぁ。
二杯目の牛乳を智様は飲み干していたようで、三杯目に突入する。
智様「どうだ、京四郎……。私の胸、触るか?」
智様、どさくさに紛れて何言ってるの!?
京四郎「い、いえ……」
智様「かまわんぞ、減るものでも無いしな」
以前から思っていたけど、戦国時代のセンシティブゾーンって現代の基準より緩々すぎるんだよな……。
まささんも、着けてない人がいるって言ったからな。
智様「ほ~れ、どうだ?」
智様は、無理やりオレの手をグイっと掴んで自分のおっぱいに当てる。
感触は、ハリがあって……押し返してくる。
智様「……んっ!牛乳の効果は……ありそうか……?」
京四郎「……即効性の物ではないですからね……継続が大事です……」
智様「そういう物か……」
このタイミングで、誰か部屋に入ってきたら確実にアウトだ。
オレが迫っているわけでは無いと言っても信じてくれないだろう。
智様「京四郎……
智様が言いかけたその時、
グ~キュルルルルル~。グキュル~。
智様のお腹が鳴った。
お腹が空いている時のヤツではなく、お腹を下している時の音である。
京四郎「あー、智様」
智様「はい……」
京四郎「牛乳、飲み過ぎです」
音を聞かれたのが恥ずかしかったのか、智様は溶岩の如く、顔を真っ赤にして厠へ逃げ込んでしまった。
高坂「いいお湯でした~」
虎姉が温泉から戻ってきたのは、それからすぐのことであった。
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