表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まぁ、ちゃんと戦う戦国軍記 ~めざせ!御屋形様と経済勝利~  作者: 東木茶々丸
第二章 女当主の信濃侵攻 1549年夏~
60/349

2-8-4 第四十九話 現れるタイミングに定評のある内藤様

一部、差別的とも受け止められかねない単語を使っています。

戦国時代当時の描写に基づくものですので、ご了承ください。

天文十九年三月下旬某日 午前 場所:甲斐国 韮崎 牧場

視点:律Position


 京四郎と高坂様、……それと三八様が小笠原領に偵察に行ってしまったので、

アタシは、まささんとお留守番である。


 牧場の弥七さんにお願いして、牛を集めてもらった。

この辺りは、民家も多くなく放牧地として使えそうだ。


牛舎と鳥小屋は去年のうちに立ててもらってある。


まさ「牛や鳥を育てることはいいんですけど、皮とかってどうやって剥ぐつもりなんですか?」

律「えっ?弥七さん、やらないの?」

弥七「とんでもない、そんなことしたら穢れちまいます」


 聞いたところによると、動物の皮というのは防寒具や軍需品に使う一方で、その皮は穢れとして河原者かわたものと呼ばれる人々がやるらしい。


律(また、仏教の教えが絡んでくるのね……)


 確かに屠殺とさつ[1]を自分でやれるかと言ったら、厳しいところはある。


弥七「そもそも、六斎ろくさい日もありますからね」

律「六斎日?」


まさ「仏教の教えで殺生が禁じられた日のことです。8日・14日・15日・23日・29日・30日の六日のことを指すんですよ」

律「ベジタリアン向きな世界ね……」


まさ「ベジタリアン?」

律「ああ、菜食主義者のことよ。ひとまず肉食を増やすにしても、河原者の協力を得ないと駄目ね……」


 この問題は、京四郎が帰ってきてから協議するとした。


律「でも、殺さなければいいのよね?」

まさ「まぁ、そうなりますね」


律「じゃあ牛乳よ!ミルク!乳製品を作ろう!」


 ちゃんと牝牛も飼育してあるので、さっそく搾り取る。

ホルスタイン種、つまり乳牛ではないのが懸念材料ではあるけれど……。


 搾り取った生乳は、釜で低温殺菌をする。

衛生観念とか希薄な戦国時代ではあるけれど、殺菌をすることで穢れを薄められるとアピールできるので、一挙両得だ。


 冷蔵技術は無いので、水を使って冷やす。


律「完成!富士屋牧場ミルクの完成!デデーン!」


 弥七さんとまささんの反応は薄い。


弥七「これ、飲めるんですかい?」

まさ「牛になったりしませんよね?」


 そこまで、心配なのか。

そういえば、織田信長が牛乳を飲んで周りから不思議がられたって、エピソードがあったっけ……。


律「じゃあ、アタシが飲むわ」


 グイっと、口に入れる。

言い出しっぺなので、引くわけにもいかない。


 味は……普通ね。

品種改良も何もない時代に贅沢は言えないけれど。


 アタシが口にしたので、二人も恐る恐る口にする。


まさ「う、う~ん。なんだか口の中にまとわりつく感じですね」

律(普段飲むのは、水かお茶だもんね。無理もないか)

弥七「思っていたほど悪くないですね」


 弥七さんは、抵抗が薄いようだ。

臭いに慣れているからかもしれない。


律「やっぱり、売れないかな?」

まさ「売れないですよ」


 ピシャリと、まささんが言葉を返す。


弥七「やり方次第だと思います」

律「例えば?」

弥七「夏場にお湯は売れませぬ。しかし冬場ならお湯は歓迎される……そういうことでは?」


 なるほど、あの手この手でアプローチをしていけば、評判も上がるかもしれない。

これも、要検討ね……。


 色々とプランを検討していたその時だった。


「お、いたいた。律殿!」


 馬でやって来たのは、内藤様である。


内藤「律殿、御屋形様が兵を集めるとのことだ。兵糧か武具を早急に手配してくれ」


律「京四郎が戻ってきてからでは……?」

内藤「駄目」

律「明日からでは?」

内藤「駄目」


律「もしかして今すぐに手配しないと……?」

内藤「駄目です」


 うう……っ、まだ畜産関係をやっていたかったのに……。


 仕方ないので、まささんに後を任せて内藤様と甲府に戻る。


律「いよいよ、【御屋形様】も出陣なさるんですか?」


 智様の甲冑姿は見てみたい。きっと似合う。


内藤「いや、ひとまず先に馬場様が諏訪に入られる。その準備だ。」


 なるほど、先遣隊ってことね。


内藤「手配は出来そうか?」


律「馬借衆のツテを使って集めてみます!」

内藤「よし、では頼む!」


 言いたいことは全て終わったのか、そのまま内藤様は先に駆けて行ってしまった。


律「はぁ~~~~」


 思わぬ急な要件に、思わずため息が漏れてしまった。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

[1]屠殺:動物を食肉・皮革などにするため殺すこと。魚や鳥を〆るの〆ると同じ意味。





お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ