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まぁ、ちゃんと戦う戦国軍記 ~めざせ!御屋形様と経済勝利~  作者: 東木茶々丸
第一章 甲斐と合戦と御用商人 
32/349

1-4-2 第二十四話 大事な話は先にして欲しい

天文十八年七月十三日 午の刻半 場所;甲斐 恵林寺 市場

視点:京四郎 Position


 な、内藤昌豊!?

ま、また知らない人が出てきたな……。


内藤「御屋形様より言伝だ。冷泉卿[1]の和歌集。確かに受け取った。おかげ様で礼状を出すことが出来たとのことだ。」

律「あ……、それはどういたしまして……」


 い、今になってその話?

渡したのって三ヶ月くらい前の話だよ。

アイツも困惑して、微妙な返事しかできてないし……。


僧「内藤様、実は富士屋の者どもが騒ぎを起こしまして……。これは喧嘩両成敗に触れるのではと思うのですが……?」

内藤「ふ~む。こいつ等がかい?」


 そう言って、じっくりと俺と律の顔を眺める。

反論したいけど、口を挟ませないようなオーラを感じるんだよなぁ。

THE・中間管理職って印象がする。


内藤「それで、富士屋の者どもが殴ったりしたのを見た者はおるのか?どうだい?」

「いや……」「まぁ、殴ったりはしてないよな」「そうそう……」


 よ、良かった……。これは手を出していたらアウトなヤツだ。


内藤「暴力沙汰で無いならば、気に掛けることはあるまい。もしも喧嘩だというならば、証しをしっかりと示してもらうぞ?」


 そう言って、じろりと僧の方を見る。


内藤「そもそも喧嘩相手がここにいないのならば、成敗しようがないじゃないの。いいよ、今回は無罪放免。これにて終了!」


 パァンと手を叩いて、集まった群衆を解散させた。

群がっていた通行人や僧がバラバラに去っていく。


内藤「まっ、今度からは気を付けることだな」


 ぶっきらぼうな感じが、優しさなのか面倒くさいのかわからない。


京四郎「今後は気を付けます」

律「あ、ありがとうございました!」

内藤「うむ。それで良し!」


 そのまま立ち去ったかと思うと、慌てて戻って来た。


内藤「失礼、失礼!御屋形様から奉書ほうしょ[2]があるのを、すっかり忘れてたわ」


 いや、和歌集のお礼うんぬんとかより、そっちが大切でしょ!


内藤「富士屋の松本京四郎、山本律!」

京四郎・律「は、はい!」

内藤「御屋形様の命により、両名を蔵前衆くらまえしゅう[3]に任ずる!」


 えっ、智様……?人の話聞いてた???

武士として仕えたいわけじゃないって伝えたよね????


京四郎「し、しかし……」

内藤「それじゃあ、伝えたからさ。そこのところ、よろしく」


内藤様は今度こそ本当に去って行ってしまった。


京四郎「内藤昌豊って、ああいう人なのか?」

律「さすがに、武将個人個人の性格までは知らないわよ。……でも武田四天王のうたわれた一人よ。ただ者ではないと思うけど」


京四郎「じゃあ、何をしたの?」

律「うぐっ……、長篠の戦いで戦死した人……くらい?」

京四郎「死に場所情報は要らないなぁ……」


 とにかく、クラマエシュウ?については、店の他の人に聞くしかないな。

まささんに聞いたけれど、名前しか聞いたことが無いらしい。


京四郎「今日はひとまず帰るか」


 内藤様から受け取った奉書を携えて帰路につくこととなった。


▼▼▼▼

数日後  甲斐国 各所


 近日、勢力を伸ばしつつある富士屋が蔵前衆に任じられたことで、他の商人には動揺と焦りが広がっていた。


「小林屋が評判を落として、すぐの任命。晴信様も冷酷なことをなさる……」

「いや、信虎様の代から商人司を務めている坂田屋さんが、塩や魚の商いで大金を稼ぎ続けているだけで、他の商人には儲けが少ないからいけないのではないか?」

「もうそろそろ変化が必要とされる時期なのかもしれないですな」


 かくして富士屋は、蔵前衆に命じられたことで思わぬ戦いに巻き込まれることとなる。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

[1]冷泉卿:冷泉為和のこと。1549年8月3日、駿府にて病没。

[2]奉書:大名や武将が、右筆うひつ(代筆人のこと)に書かせた書状。

[3]蔵前衆:詳しくは次の話で説明します!



お読みいただきありがとうございます。

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