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まぁ、ちゃんと戦う戦国軍記 ~めざせ!御屋形様と経済勝利~  作者: 東木茶々丸
第一章 甲斐と合戦と御用商人 
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1-2-5 第十九話 轟く大地

天文十八年五月十五日 午の刻 場所:甲斐国 韮崎 韮崎氷川神社馬場


一回戦は富士屋の敗北に終わった。

まさかの大差に、観客席も大騒ぎである。


「さあさあ、小林屋の勝ちに賭けるならば今が最後だよ~」

「小林屋に二分にぶ[1]賭けるぜ!」「いや、まだ……まだわからねぇ!」


▼▼▼▼


少し離れた所の馬上から一人の男装の姫が、この競馬を見ていた。

そばには、山本勘助と護衛の女が控えている。


「虎、この富士屋と小林屋の勝負をどう見る?」


馬上の姫は、護衛の女に問いかけた。

この虎と呼ばれた女性。この人物こそ、後の武田四天王の一人の高坂昌信こうさかまさのぶ[2]である。


虎「う、うーん……。秋山様が浅利様相手に手加減したんじゃないですか?あの人ならあり得るでしょう?」

姫「勘助はどうじゃ?」

勘助「恐らく……あれでしょうな」

姫「あれか!あれだよな」

虎「お二方とも、あれで通じているのですか!?」


 高坂には、この二人の考えがわからない。

そして何より、二人がニヤニヤして見つめ合っているのが気に食わないのだ。


▲▲▲▲

視点:律 Position


二番手の山本律は、秋山の敗北に動揺していた。

浅利様に遠慮して負けたのならば、わりと好きな戦国武将でもさすがに許せない。


 それでもなんとか自信を保っていられるのは、己の馬の鑑定眼である。

馬術を少しやっていただけあって、いい馬と悪い馬の違いはわかる。

もちろん馬の種類の違いはあれど、同じ馬だ。

着眼点は変わらない。


 京四郎が先程と同じように、乗り手の紹介をしている。

盛り上げ上手なイベント好き男にはこういった仕事は向いている。


 あぶみに足をかける。

西洋式の鐙と違う鐙だけれど、ここに足をかけるとスイッチが入る。


宮司さんが旗を振る。

すぐさま棒が抜かれて、馬のお腹を蹴る。


 走っているうちは、隣の人など気にならない。水泳とかと同じことだ。

それでも、いつの間にか観客席の最前列に陣取っていたアイツの顔はわかった。

何も叫ぶことは無く、ただガッツポーズをしているだけだ。


 だが、十年以上の付き合いだ。それで十分伝わる。


 気がついたら、ゴールしていた。もちろん、結果は勝利だ。

これで、一勝一敗に持ち込めた。

てっきり、アイツも迎えに来るかと思ったが……来ない。

次の出走の準備をしているのだろうか?


 三番目の出走は弥七さん。

正直、数合わせで出てもらった感じで申し訳ないのだけれど……。

勝負は最終戦に持ち越された。


 ドントンハシレ号。いかにも現代の馬の名付け方って感じだけれど、おかげで戦国時代では浮きまくっている。

そのドンドンハシレ号が走り出した。


 意外にも早い。相手の馬が離されていく。


 なんとそのままゴール!!!!!!

やった、やったわ!ドンドンハシレ号!


結果

一回戦 × 富士屋 ― 〇 小林屋

二回戦 〇 富士屋 ― × 小林屋

三回戦 〇 富士屋 ― × 小林屋


 二勝一敗でアタシたち富士屋の勝利。


 観客席は大荒れである。

令和の競馬場なら馬券の飛び交う展開だったはずだ。


 それにしても何とか勝ててよかったわ……。負けたら洒落にならないもの。

協力してくれた武田家の人たちの面目を潰してしまうことにもなる。


 京四郎と合流すると、小林屋と小山田さんと一緒にいた。


京四郎「おう!戻ったか。ここで小林屋が負ける有様を一緒に観戦していたんだぜ!」


 なんて性格の悪いやつなんだ。

もう点差がついているのに、負けているチームのファンを最後まで試合を見させる人のようだ。


小林屋と小山田に負けを認めさせて別れた。

使いが来て慌てて去って行ったので、何かあったのかもしれない。


京四郎「作戦が成功するか心配だったが、予想通りになったな。よかったよかった」


 ま、まさか……。これも想定内だったの!?

いったい、どんな手を使ったわけ!?


京四郎「聞きたいかい?トリック」


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[1]分:甲州金の単位の一つ。一両の四分の一。一分は約一万九千円。

[2]高坂昌信:武田家家臣。春日虎綱などと呼ばれることもありますが、本作では高坂昌信とします。虎は姫からの愛称です。女設定は本作オリジナルです。

お読みいただきありがとうございます。

細かい金額は現在の価値への換算が欠かせなくなってしまうので、なるべく避けるようにします……。

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