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閑話 今川を学ぶのは、いまだわ

例によって、ほぼ解説回です。

作中より前の時期に関しての、簡易的な今川史の説明になります。

あえて、表記を簡易的にしています。

最下部に現時点での登場人物の説明があります。

令和XX年 西暦20XX年 場所:埼玉県さいたま市坂本宅


坂本と侑は、いつもの様に映像を視聴しながら、お茶をしている。


侑「今日のおやつは、大判焼です」


 そういって、ビニール袋から取り出す。


坂本「いや、これは今川焼いまがわやき[1]だろう?」

侑「あ、今川焼派なんですね。まったく信じられません!」

坂本「べ、別にいいだろう……」

侑「そもそも、名家の名前である今川を焼くってネーミング信じられます??」

坂本「いや、今川家が名家なんて知らないので……」


侑「それでは、ご説明しましょう!!!」


 侑は、どこからとプロジェクターを取り出して、スクリーンをガラッと降ろす。


侑「それでは、スクリーンをご覧ください」

坂本「いや、別に解説は……」


侑「そもそも今川家とは、足利家の親族である吉良きら家の分家なのです」

坂本「キラ……?イザークの方が好き。イジドール・イザーク・ラービ[2]」

侑「アメリカのノーベル物理学者が、なぜ突然出てくるのかわかりませんが……。話を続けますね。室町初期の名将として名高いのが今川了俊いまがわりょうしゅん[3]です。彼は三代将軍の足利義満あしかがよしみつ[4]の下で、南朝などの反幕府勢力を潰して九州統一を成し遂げました。その功績で今川家は駿河と遠江を支配していたのです。」

坂本「九州を平定するくらいだから、手練れの武将だったんだろうなぁ」


 サラッとボケたのに、侑の反応が薄かった。


侑「ところが、了俊はその武勇を警戒されて冷遇されてしまいました」

坂本「強ければ良いわけでもないのですかぁ」

侑「その境遇を嘆いてか、彼は『難太平記なんたいへいき[5]』という名の、今川家は足利にこんなに尽くしてきたのに~という歴史書を記しています」

坂本「歴史書というか、自己推薦書というか……」


侑「時は下って、今川義元の祖父である今川義忠いまがわよしただ[6]の代。遠江の実権は管領[7]の家柄の一である斯波しば家に奪われつつありました。」

坂本「司馬……?」

侑「スクリーンを見れば漢字、わかりますよねぇ~?彼は遠江を今川家の統治下に置くために、応仁の乱[8]に乗じて東軍について遠江での戦いに勝利します」

坂本「フムフム……」


 話が長くなりそうなので、今川焼をくわえる坂本。


侑「ところが、この義忠は城に戻る途中に戦死してしまいます。残された子供の氏親うじちかはまだ幼少。今川家はピンチに追い込まれます。そんな時に現れたのが義忠の義弟[9]である伊勢新九郎なのです」

坂本「お、出た。イセシンクロウ!律が言っていたな」

侑「彼はこの危機を調停した功績により、相模との境界を任されます。こうして結成された今川・伊勢連合は勢力を拡大していきます」


(つぶあん美味しい……)そう思いつつも、(電子レンジで温めた方が良かったかも)と坂本は後悔している。


侑「氏親は武田家の内紛に紛れて甲斐へ侵攻したり、伊勢新九郎の関東進出も援助して相互関係で力を伸ばしていきます。軍事行動の一方で、京都の公家から正室を迎えて名実ともに着実に力をつけます。この正室が、義元の母である寿桂尼じゅけいに[10]なのです」

坂本「つまり、元々北条と今川は仲良かったってわけね」

侑「そう、そうなんです!ご褒美に今川焼を四分の一あげますよ!」

坂本「あ、ありがとう……(どうせなら半分くれっ!)」


侑「氏親の死後、義元の兄である今川氏輝いまがわうじてるが跡を継ぎます。氏輝は父の方針を引き継ぎ、武田と対立を続けて北条と協調路線を取りましたが、なんと24歳の若さで急死してしまします。」

坂本「あらま、まだ若いのに……」

侑「私たちより年上ですけどね。ここで氏輝の後継者争い[11]が起きます。この時義元は、母の寿桂尼と家庭教師の雪斎と北条の援助を得て勝利します。」

坂本「雪斎先生とは、この頃からの付き合いなのか」


侑「ところが義元は後継ぎ争いに勝利すると、方針転換して敵対していた武田家と婚姻同盟を結びます。」

坂本「武田もよく応じたねぇ」

侑「妻を亡くした武田信玄[12]の妻に、寿桂尼の実家のツテを使ったことと雪斎先生の交渉術の賜物ですね。」

坂本「それじゃあ、北条はブチギレだね」

侑「もう伊勢新九郎の孫の代ですけどね。実際、北条に攻め込まれて今川は窮地に陥ります。ところが義元は、駿府の今川・甲斐の武田・関東の勢力と結んで北条を包囲することに成功します」

坂本「ピンチをチャンスにってわけね」


侑「ところが、北条も関東諸勢力連合軍に勝利[13]。北条はこの局面を乗り切った。今川も松平家を支援という名目で三河に侵攻して、斯波の家臣の織田信秀《織田信秀》、つまり信長パパと戦う方に専念しつつあったの。」

坂本「つまり北条・今川・武田は、ある程度拮抗状態にあったわけね」

侑「二人がいる頃までの今川の歴史。こんなものでオッケー?」

坂本「うん。《《きっこう、きっこう》》。拮抗……。結構……なんちゃって……」


侑「………………。心が温まる本。買ってきますね」

坂本「あ、坂本も本屋行く~」


 二人はそのまま出かけてしまった。


▼▼▼▼

数十分後


?「博士~、お邪魔します~って、いないわね。丁度いいわ、これが言ってたタイムマシン……かな?」

??「触らない方がいいぞ」

?「悔しくない?兄貴にガツンと決意を見せつけるチャンスだよ。律先輩に勝つ方法が見つかるかもしれないよ」

??「そういうものか……」

?「このボタンかな?ポチっとな」


ヴヴヴヴヴヴヴ……ブオン!


 二人は渦の中に消えた。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

[1]今川焼:筆者は今川焼派です。

[2]イジドール・イザーク・ラービ:電子レンジに使われるマイクロ波を研究した人物。原子爆弾の実験にも関わっている。オッペンハイマー博士の映画にも登場する。

[3]今川了俊:本名は貞世。筆まめだったようで著書も多い。

[4]足利義満:金閣寺建立を命じた人物。遅刻する人には厳しい。

[5]難太平記:後半には足利義満への不満の箇所がある。

[6]今川義忠:今川義元グランパ。

[7]管領:鎌倉幕府で言う執権。

[8]応仁の乱:戦国時代の始まりともされる大乱。京都の名所の中には兵火で焼けた場所も多い。

[9]義弟:妻の弟。

[10]寿桂尼:今川義元の母。今後の展開に絡んでくる……かも。

[11]ここの後継者争いは、1536年の花倉の乱を指す。

[12]まだこの頃は、武田晴信と名乗っている。

[13]1546年の河越夜戦を指す


●●●●

駿府の登場人物

・今川義元:1519年生まれ。妻は武田信玄の姉。律と京四郎の採用面接を盗み聞きしていた。登用しなかったことを少しだけ悔やんだ

・太原雪斎:1496年生まれ。臨済宗妙心寺の住職。駿河に下向している。律曰くスーパー僧侶。義元は家庭教師をしていたころからの付き合い。

・庵原忠胤:今川家採用面接の面接官。老け顔。

・桑原甚内:20代くらいの若者。雪斎に師事する。甲斐の出身。酒場での乱闘により、西国へと旅立つ。

・三浦義就:今川家臣。他国者へのあたりが強い。相模の三浦一族庶流の末裔。甚内を寄ってたかって挑発するが、律と京四郎の加勢によってボコボコにされる。お酒の飲み癖は良くない。

・盗賊の首領:本栖湖周辺で平蔵を襲っていた肥満体の男。部下を置き去りにした。


お読みいただきありがとうございます。


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