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0-2-3 第八話 駿府の酒場で

視点:京四郎 Position

天文十八年??月某日 夕方 場所:駿河国 駿府城下 酒場


 居酒屋と言っても、さほど綺麗なものではない。

時代劇で見るような物より少し汚らしい。埃っぽさは時代劇より西部劇の感じに近い。

あいにく、ガンマンもネイティブアメリカンも気弱そうなマスターもいないが。


 律は甘酒と焼き魚を注文。どんな組み合わせだよ!っとツッコミたくなるが、メニューのバリエーションなんてほとんどないのだ。仕方ない。


 自分のオーダーも焼き魚。何の魚かは知らない。それと謎のお茶。抹茶ではない……と思うけど気にしないでおこう。


律と並んで座って夕ご飯をいただく。

ひとまず魚を食べてみる。あれっ、この味知っているぞ……。


律「ねぇ……これって……?」

京四郎「マグロ……だよな」


 美味い。もしかして戦国時代ではマグロって安いのか。

何やら後ろ向かいの席が騒がしいが、気にならないそぶりで箸を進める。


 どうも一人の客が、四人の徒党に絡まれているようだ。リーダー格の男は見た目の良い服を着ている。


徒党A「おやおや~?甚内じんないさんじゃんかぁ。どうしてこんな所に?」

甚内「…………」


徒党B「消えな、この酒場には余所者の席はないぜ」

徒党C「そーだ、そーだ。ここはこちらにおられる義就よしなり様が通われている酒場なんだぞ」


そう言って甚内と呼ばれた男に水をバシャっとかける。

まさにチンピラの挑発だ。


三浦義就みうらよしなり[1]「それにしても獣臭いのう。山国育ちの者は臭いが染み付いておるのかぁ?」

 

 う~ん。海なし県生まれとしては、かなり同情するぞジンナイさん。


律「さっきから、うるさいわね。磯風で頭がサビてるんじゃないの?」


 おいおい、わざわざ絡みに行くのか?律ぅ~。

確かに正義感強いヤツだったけど、それでモメてからは学校では大人しくしてたじゃん!


甚内「いいんですよ、お兄さん。慣れてますから……」

徒党B「見知らぬ人にまで、助け舟出してもらって情けなくないか?」

律「京四郎も何か言ってやってよ。言われ放題なのよ」


 そうは言ってもまだ、マグロを食べている最中なのだ。


義就「やめじゃ、やめじゃ。相手にする時間がもったいないわ……。( ゜д゜)、ペッ」


そう言って、義就はジンナイさんの皿に唾を吐いた。

店から四人が立ち去ろうとした時、


甚内「待ちな」


 ジンナイさんに袖を掴まれた徒党の一人は、振り向きざまに鉄拳をくらって、床に倒れた。


律「ジンナイさん、雑魚は任せてください。あなたは義就を!」

甚内「おう!」


 かくして酒場の店内で乱闘が始まった。

律は鞘をしたままの刀で残り二人を相手に殴っている。

日本刀、元はと言えば鉄の塊だ。痛いに決まっている。もちろん、刃こぼれするかもしれないけど。


 俺はそのまま夕飯を食べる。律が食べるのが早いのと対照的に、俺は味わって食べるタイプなのだ。


 その時である。


律「悪かったわね。海なし県出身で!!こっちは海が無くても別にエンジョイしてんのよ!」


 律の渾身のスイングが、徒党の頭に直撃する。

体勢を崩した彼の体は、そのまま俺のまだ魚の残っている皿の上にフルダイブした。


京四郎「俺の夕飯をおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 飯の恨みは深いぞ。


徒党C「く、くっそうー!」


俺の夕飯を台無しにした張本人は刀を抜いて、斬りかかってきた。

おいおい、噓だろ……。


 とっさに、椅子で相手の日本刀をガード。これが上手く刺さった。


徒党C「あ、クソっ!抜けねぇ」

京四郎「夕飯の恨み!!」


 俺の鉄拳は見事に相手に命中。そのままノックダウン。


律「あ、どう?終わった~?」

京四郎「お、終わった……」


 まさか、こんな所で相手に切りかかられるなんて……

まったく、予想だにしなかった。


甚内「いやはや、かたじけない」

律「ジンナイさん!」

甚内「どうです?加勢していただいたお礼に、我が家に来ませんか?男三人で語り明かしませんか?」

律「あ、あの……。アタシ、一応、女で……」

甚内「あ、これは失礼……」

京四郎「せっかく、なのでお邪魔させてください。あ、そうだ」


 酒場の端で震えていた店の人に、


京四郎「申し訳ないんだけど、散らかってしまったお代はあちらの方々に……」

酒場の店員「はい、お任せください。実は前からあの人達がタチの悪い飲み方をするもので困ってたんです」


 今回の乱闘は、どうやら起こるべくして起こったことのようだ。


▼▼▼▼

坂本「侑、侑~?」

侑「ふぁい?」


 今日の視聴のお供は、十二万石まんじゅう。

埼玉県民なら、誰でも知っているキャッチフレーズのお菓子だ。


坂本「マグロってさぁ。戦国時代じゃあ、高価じゃなかったの?お寿司って江戸の頃からあるじゃん」

侑「それでは説明しましょう」

坂本「手短にお願いします。尺短めで」

侑「鮪は魚の中でも鮮度が落ちやすく、冷蔵できない戦国時代では腐ってしまいがちだったんです。」

坂本「なるほど」

侑「生け簀に入れるにも大きく、まだかつお節には使われていなかったので使い道が無かったのです。もっともマグロ自体は『万葉集』などでも詠われるほど馴染み深かったようです」


坂本「ほーん……。(思ったよりは解説短かったな。マンヨーシューがなんだかわからんが)」


坂本「なぁ、侑~」

侑「はい~」

坂本「マグロ食べたくないか?」

侑「あ、やっぱり?」


坂本「マグロを食べ《《まぐろ》》~」

侑「……。京四郎のほうがマシですね」

坂本「oh……」


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

[1] 三浦義就:今川家臣。元は三浦半島から流れてきた三浦の一族。三浦義村の同族の末裔である。


お読みいただきありがとうございます。

食べ物は大事にしましょう。

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