プロローグ
もしかしたら途中で終わってしまうかもしれません。
ハッピーエンドで終わるつもりです。
「キャア!」
幼い少女の悲鳴が聞こえる。またか、と思い振り返ると、そこには首に刃物を当てられた少女と刃物を当てる男がいた。何度見てもなれないな、と思いながら戦闘態勢に入る。心臓がバクバクと音を立て、汗が頬を伝う。
「レオネをはなせ。」
俺がそう叫ぶと、男はニヤリと笑い、刃物を持っていない手を俺に向け、何かを唱えた。すると地面からツタが伸びてきて、足に絡みつく。足が、動かせない...。
男を睨むと、笑った顔を歪ませ、怒りに満ちた表情でなにかブツブツ呟いている。
「...お前たちさえいなければ...」
男は刃物を持つ手に力を入れた。レオネの首から赤い線がすっと入る。俺は覚えたての攻撃魔法を唱え、男に手をかざす。手から青い閃光が走るが、男はいとも簡単に避け、こっちに弾き返してきた。俺は衝撃でよろめき、ツタのせいで盛大に倒れてしまった。血でにじむ手をぐっと握り、男の方に立ち直るとレオネの首からはポタポタと血が滴り、白い服を真っ赤に染めていた。それを見た瞬間、頭が真っ白になった。
どうすればいい...。
すると痛みと出血で真っ青になった顔を上げ、レオネはこっちを見て無理やり微笑んだ。
「...大丈夫、私は大丈夫だから...。コウくんなら...。」
そう言うと、レオネはふっと目を閉じた。レオネ!と何度も叫ぶが、レオネは目を開けてくれない。だんだんと涙で視界がぼやけてきた。それと同時に体が熱くなってきた。
『いい、この魔法は命の危険がある時以外、絶対使ったらだめだからね!お母さんとの約束だよ。』
俺は体から湧き上がる怒りと悲しみを込めて両手に力を込めた。命をも奪う魔法。お母さんとの約束。俺は男をにらみ、両手を向ける。
その瞬間、空から男に向けて一筋の雷が落ち、衝撃が地面を揺らす。
次に目を開けると、擦り傷だらけで倒れているレオネの姿があった。男の姿はそこにはなかった。俺はレオネに駆け寄ると、まだ目を閉じたままのレオネの体を揺すった。しかし、いっこうに目を覚まさない。するとだんだん周りからヒソヒソ声が聞こえてきた。
「あの黒髪と赤い目は、魔王の末裔か。」
「あの少女は可哀想に。魔王の子があんな魔法を使ったがために...。」
「あの魔法、なんと恐ろしい...。」
「あの子、殺そうとしてたわね。」
だんだんと体から血の気が引いていき、意識が遠くなる。
そして最後に一番聞きたくなかったあの言葉が...。
「生まれなかったら良かったのに。」