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39.よろしくお願いします ※ライナー視点

「ソアラ……」


 アメジストのような美しい瞳をまっすぐ俺に向けて、ソアラが「好き」と言った。


 俺に、〝好き〟と。


 彼女が口にした「好き」という言葉は、まるで甘い蜜のように俺の心に染み渡り、どうしようもなく幸福感が押し寄せてくる。


 普通の女性なら引いてしまうような、恐れ多いほどの感情を抱えた俺に対して、ソアラはそのすべてを受け入れてくれた。

 たとえ俺がどんなに歪んだ形で愛を表現していたとしても、彼女は一つ一つを優しく包み込んでくれる。


「ずっと想ってくださっていたところも、それをすぐに伝えられないところも、私が勧めた小説を完璧に覚えるまで何度も読み返してしまうところも、この八年間、毎日私を想って日記を綴ってくれていたところも……全部、大好きです」


 ぜんぶ、だいすき。


 その言葉が、俺の心を梳かすように流れ込んでくる。

 全部、大好きだと。何度も心の中で繰り返すその言葉が、心の奥深くで響き、俺の感情を揺さぶる。


 ああ……待て……待ってくれ……。それはなんの呪文だ? 魔法か? これは幻聴ではないだろうか……?


 思わずそう呟きそうになるほど、信じられないほどの幸せに包まれている。

 しかし、目の前のソアラの表情が、すべてが現実であることを示していた。彼女の微笑みが、これは幻ではないと教えてくれる。


「大好きなのは俺のほうだ……。嬉しすぎて、死にそうだ……」

「ふふ、死なないでください」


 まるで愛しい何かに触れるようにそっと目を伏せ、重ねた手にきゅっと力を入れるソアラ。

 ソアラの温もりが、この瞬間が現実であることを確信させてくれる。


「俺はソアラが笑顔でいてくれるなら、それだけでいいと思っていた……。だが欲を言えば、俺がソアラを笑顔にしたいし、その笑顔を隣で見ていたい……そしてできれば他の男には見せたくない」


 思わず本音を口にして、こういうところが重いのだろうかとはっとしたが、ソアラは可愛く笑ってくれた。


「ずっと隣にいさせてください」

「ソアラ……」


 ああ……それはつまり、そういうことだと思っていいのだろうか?

 ……いいよな。むしろここで言わなければ男ではない……!!


 幸せすぎて倒れてしまいそうな自分に活を入れ、改めてソアラに向き直る。


「好きだ、ソアラ。日記を見て知っていると思うが、俺はソアラのことが誰よりも何よりも愛おしい。ソアラのためならなんでもできるほど、愛している」


 直接自分の言葉で想いを伝えられることがこんなにも幸せだとは、知らなかった。

 これまで何度も一人で口にしてきたこの想いを、ただ紙に綴ってきたこの想いを。

 ソアラに直接聞いてもらえる日が、ついに来たのだ。


「嬉しいです……。私も、好きです。大好きです、ライナー様」

「俺のほうがもっと、もっと、もっと大好きだ!!」


 たまらずソアラの身体を抱きしめると、彼女は躊躇いながらも俺の背中に腕を回してくれる。

 その瞬間、彼女の温もりが俺の心を包み込み、すべてが現実であることを感じさせてくれた。


「本当に可愛い。……ああ、ソアラ、好きだ。すぐに婚約してくれとは言わないから、今すぐ結婚してくれ……!」

「え?」

「あ、いや、婚約を前提に結婚してくれ!」

「え?」

「違う違う、何を言っているんだ俺は! まずは付き合うのを前提に結婚したい……ああ、とにかく好きだ!!」

「……もう」


 だめだ。頭の中が真っ白だ。いや、ソアラ一色だ。

 彼女の驚いた表情も、頰を染めるその姿も、すべてが愛おしくてたまらない。


「ライナー様ったら。恥ずかしくなってしまうくらいの愛ですね」

「引いただろうか……?」

「いいえ。とても伝わりました。とにかく私と結婚したいということですよね?」


 身体を少しだけ離して見つめ合うと、ほんのりと頰を赤らめたソアラがにこりと微笑んでくれる。

 その笑顔が、俺の胸の奥深くにまで響き渡り、心臓が跳ね上がるような感覚を覚える。


 ああ……そうだ。俺はとにかくソアラと結婚したいのだ。


「……ソアラ・ハース。あなたを心から愛している。どうか俺と結婚してほしい」


 ソアラに導かれるように、その言葉が自然に口から溢れ出る。

 何度も思い描いていた言葉。言うと決めたら、すっと出てきた。


「ありがとうございます、ライナー様。とても嬉しいです。私もライナー様と結婚したいです」

「!」


 彼女の言葉に、胸が熱くなる。ソアラの目がまっすぐに俺を見つめ、その瞳に愛情が溢れているのがわかる。


「だから、結婚を前提にお付き合いしましょう? もちろん、きちんと婚約も」

「ソアラ……!」


 結局、俺が言いたかったことはソアラがまとめてくれた。やはり俺にはまだまだ(恋愛の)勉強が必要のようだ。


 だが、とても幸せだ。


「よろしくお願いします!!」


 だから可愛いソアラを見つめ返してそう答えたら、ソアラはまた可愛く笑ってくれた。

 その笑顔が、まるで花が咲くように俺の心に刻まれる。



 これからは、今まで我慢してきた分も思う存分この気持ちをソアラに伝えよう。

 大丈夫。ソアラはきっと、人より(・・・)少し(・・)重い(・・)俺の気持ちを受け止めてくれるだろう。


 彼女の優しさと愛情が、俺をそう信じさせてくれる。


 これからの俺たちの未来が、幸せで満たされたものになるように、俺は全力で彼女を愛し続けると心に誓った。



お読みくださいましてありがとうございます!

これにて本編完結です!

おめでとー!面白かったよ!などと思っていただけましたら、ぜひぜひ評価☆☆☆☆☆を塗りつぶしてくださると嬉しいです!( ;ᵕ;)

今後、その後の話か番外編も載せる予定ですので、よろしければブックマークはそのままにしていてくださいませ!m(*_ _)m


★また、この物語の世界とリンクしている短編もあります。

『森の塔に幽閉された魔女は昔義妹に婚約者を奪われて孤独になった聖女でした』

https://ncode.syosetu.com/n6666hx/

ずーっと昔のお話です。よろしければこちらもどうぞm(*_ _)m


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