第96話 ヴァレンス王国へ
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
第五章は第91話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
翌朝、ようやくエリーシャから解放された俺は寝不足ながらも皆に朝食を作っていた。
「ふわあ〜……。」
「アルベルトさん、昨日あんな事があったのですから寝てて構いませんよ? 後は私がやっておきますから。」
「そうか? 悪いな、眠いのは確かだし後は任せるよ。」
アネットに後の事を任せて仮眠を取ることにした。
(こうやって、地べたで寝るのも何日ぶりだろうな……。)
物思いに耽りながら、ゆっくりと目を閉じると不思議と直ぐに眠りに着く事ができた。
しばらくして夢から覚めると俺はエリーシャの膝の上に頭が乗せられており、目の前には大きな胸が有り顔が見えない。
「アルベルトさんも起きたみたいだし、皆で食べましょうか。」
(そういや、朝食作ってたんだったな……起きるか。)
「アルベルト様には私が食べさせてあげるから、このままの体制で良いわよ。」
「え、いや自分で食べるから。」
「エリーシャ様、あまりアルベルト様を困らせるのは……。」
「む〜……。」
エリーシャはメルダに注意され、少し頬を膨らませて不機嫌になるが今のやりとりでレニーが割って入らない事に違和感を覚えていたら寝起きだからかボーッとしていた。
「あー、レニーは朝弱いんだっけ。」
俺はエリーシャの膝から起き上がり、皆で朝食を摂る事にした。
「アルベルトさん、これからどうされます? 村に居ても、また野宿になるでしょうし。」
「そうダナ、子供から逃げて来た大人達ってのも気になるシナ。」
「では、ワタクシ達でヴァレンス王国の問題を解決しては如何でしょう!」
「アネットの言う事は最もだけど、ヴァレンス王国については情報が少な過ぎるし……慎重に動いた方が良いだろうな。」
「それなら、あたしがヴァレンス王国に潜入しに行くってのは? 透明化出来る様になったし。」
トレーシィの発言に一瞬俺は驚くが、やはりトレーシィだけがヴァレンス王国へと侵入したところで正確な情報を得られないのではないかと不安に思っていたところにスラストも一緒に行き調査しに行く事を提案する。
「透明化か……、トレーシィだけだとなぁ。」
「なら、僕も行くよ。」
「スラストも透明化出来るのか?」
「いや、正確にはトレーシィに触れてる間だけなんだけど一人だけだと偏った情報になりそうだしね。」
「では、ヴァレンス王国の方はスラスト様とトレーシィ様にお任せしましょう。」
「そうだな、二人共あまり無茶はするなよ?」
「「分かってるよ!」」
そう言うと二人はヴァレンス王国へと向かって行き残された俺達は、もう一度村の人達から情報を集める事にした。
昨日宿泊を断られた宿屋が何やら騒がしく、俺は中に入り何があったのか話を聞く事にした。
「何だか騒がしいな、何があったんだ?」
「ん、おや昨日の。」
宿屋の女将に話を聞こうとした時、上の階から老人と青年の声で口論になっている会話が聞こえてくる。
「なりません! 貴方はヴァレンス王国の希望なのです! その様な身体で戦いを挑むなど死にに行く様なモノなのですぞ!!」
「こんな傷が何だ! オレは国を、皆を救わないといけないんだ!! 止めたって無駄だ、このまま崩壊していく国を安全な場所から眺めているだけなんてオレには出来ない!!」
「ま、待つのじゃ! アスティオ様!! アスティオ様ー!!」
ドタドタと階段を駆け下りる音が聞こえ、二階から水色の髪に黄色い目をした青年が足早に下りてくると女将さんに軽く会釈をし、ドアを開けると走り去って行ってしまった。
「何か、アスティオ様って聞こえたけど。」
「ああ、この国の王子様だよ……何でも正義感が強くて曲がった事が嫌いみたいでねぇ。」
「って事は、ヴァレンス王国に向かったのか?」
「そうかもしれないねぇ、昨日も言ったけど今のヴァレンス王国は子供達に支配されている様なもんだからねぇ。」
女将と話しをしていると二階から老人が、壁に手をつきながら下りて来て王子を止められなかった事を嘆き始める。
「くっ……、ワシが居ながらアスティオ様を止められんとは……。 アスティオ様はヴァレンス王国最後の希望じゃというのに……。」
「あの、俺が部外者なのは分かってはいますがヴァレンス王国が今どうなっているのか教えてはくれませんか?」
「お主は?」
「俺はアルベルト・ブラウン、無属性魔法使いです。」
「無属性魔法使いじゃと!? それにアルベルト・ブラウン、何年も前に行方知れずになったと聞いておったが生きておったのじゃな!」
老人は俺の名前を聞いた瞬間に目を丸くし驚くが、直ぐに落ち着き俺にアスティオ王子を連れ戻してくれと頼む。
「それより、さっき走って出ていったのがヴァレンス王国の王子なのか?」
「そうじゃ! この際、誰でも良いすまぬがアスティオ様を連れ戻してくれぬか?」
「構いませんよ、俺達も今のヴァレンス王国がどうなってるのか調査している最中ですし。」
「有り難い、アスティオ様は城へ向かわれたと思いますじゃ。 何卒、無事にアスティオ様を連れ帰ってくだされ。」
俺は老人からヴァレンス王国の王子を連れ帰る約束をした後、村で聞き込みをしているメンバーと合流し話しあう事にした。
「なるほどな、王子様を連れ帰るにしても村に誰か残る必要があルナ。」
「そうだな、ヴァレンス王国には俺とエリーシャとメルダで行こうと思ってる。」
「ちょっと! 何で私が含まれてないのよ!!」
「今回はヴァレンス王国の王子を連れ帰るのが目的だからな。 あまり、大所帯で行くのは得策じゃないと思ったからだ。」
「何か納得いかないわね……。」
「レニー、あまり時間がねえから困らせないでくれるか?」
「分かったわよ、私も村に残れば良いんでしょ! ふんだ!」
不機嫌なレニーと残りのメンバーを残し、俺とエリーシャとメルダでヴァレンス王国へと赴くと国の壁中に落書きの後が有ったり、道端にゴミが散乱していた。
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