第93話 遊園地(追放側視点)
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
第五章は第91話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
何日か前、クレメンスはエセナゴッドに身体を乗っ取られていたナゴット神父に施錠された部屋で寝ており中々呼びに来ない神父を不審に思いドアノブを回すとガチャガチャと明らかに鍵が掛かっている事に驚いていた。
「妙だな、あの神父あれから全然呼びに来ねーぞ? 仕方ねえ、俺様自ら赴いてやるか……あ?」
鍵が掛かっている事にしばらく思考が止まるが、クレメンスは落ち着いて部屋の中の内鍵で開こうとするが、回す部分が無く明らかに部屋の外からじゃないと開けられない仕組みになっている。
「あ、あんのクソジジイ! 神に仕える癖に俺様のような聖人を閉じ込めてくれたな!! まるで反省部屋じゃねーか!!」
クレメンスは額に青筋をたてながらガチャガチャとドアノブを乱暴に扱うとバキッと壊れ施錠されていたドアが開く。
「……ったく、罰当たりなジジイだ。 ん、何だあれは!?」
ようやく、部屋から脱出したクレメンスは教会の外にでるとギラギラした巨大な太陽の様な物が遠くに見え段々と地面に近付いている事に気付く。
「はっ! あの神父め、俺様を閉じ込めるなんて悪行を働いたから神様とかいう奴が罰を与えようとしてるんだな? ざまあみやがれ、自業自得だ! さて俺様にはコイツがあるからな、こんなやべぇ国とはおさらばするか。 ヴァレンス王国へ!!」
クレメンスはナゴット神父への悪態をつき、自身は安全なヴァレンス王国へと転移カードを使い巻き込まれない様に遠くの国へと逃げるのであった。
「おわああああ! 忘れてたああああ!!」
だが、クレメンスは転移カードで転移する際に着地する為のバランスが取れない事を忘れておりナルドレイク王国に転移した時と同様に地面に激突する形で無事に転移に成功する。
「痛ってー、そうだった……このカード不良品なんだったぜ。 だが、まあいい……これであのサディストから解放されるぜ!」
早速クレメンスはヴァレンス王国に足を踏み入れ、自身の指名手配された貼り紙が無いか、記事に載っていないかを確認するが随分と昔の日付の記事しかない事でヴァレンス王国は自分にとって安全だと解釈する。
「うっし! 良いぞ、俺様の指名手配された記事が何処にも無いなラッキーだぜ!」
「おい、オッサン! 退けよ、店に入れないだろ?」
「そうだよ、大人の癖に邪魔になる事も分からないのかよ?」
店の入口に立って記事を見ていたクレメンスの後方から子供の声が聞こえ、退けよと強い口調で命令してきた。
「チッ、生意気なガキ共だ! 一つだけ教えとくが俺様はな、ガキと自己中心的な奴が大嫌いなんだ! 分かったなら、俺様に関わるんじゃねーぞ! シッ…シッ…。」
「さては、オッサンこの国のルール知らないな?」
「あっ? 何だよルールって?」
クレメンスは子供達からヴァレンス王国の普通ならありえない様なルールを聞く事になるが馬鹿なのか何故かそのルールを自分にとっても最高の環境だと考えてしまう。
「この国じゃ、大人より子供の方が優れてるんだ! あんまり調子に乗るなよ?」
「へー、そいつは凄えな……ん?」
「今度は何だよオッサン、何か見つけたのか?」
子供達にヴァレンス王国のルールを聞かされている最中、クレメンスは遠くに有る巨大な建造物に興味を惹かれる。
「あ、あれは……ま、まさか噂の遊園地とかいうヤツか!!」
「おい、このオッサン遊園地初めてみたいだぜ?」
「そりゃそうだろ、だって遊園地はヴァレンス王国以外には存在しないからな!」
「おいガキ共、あの面白そうな場所に俺様を案内しろ!」
「あ? さっき関わるなって言わなかったか? けど、どうしてもってんなら家来になるんだな!」
「家来か、良いぜ? その代わりリーダーは俺様だからな!」
「それだと家来の意味無いだろ!!」
「子供みたいな思考のオッサンだな……。」
こうしてクレメンスは子供達の案内で遊園地へと赴くのだが、道中至る場所に不自然なまでに兎の人形が置かれており、道行く大人達も何故か子供達に対してヘコヘコしていた。
(何だ、コイツら? 妙にこのガキ共に頭下げてんな? どう見ても貴族のお偉いさんの息子には見えんぞ?)
「着いたぞオッサン、ここが遊園地だ!」
「うおおおお! 何だ、この圧倒されそうな雰囲気は! この俺様が圧倒されてるぞ!!」
遊園地に着くとクレメンスは急激に子供の様な好奇心を剥き出しにし、直ぐにでも遊びたいのか嫌っているはずの子供達に遊び方を教えてもらう事になる。
「何だ、このオッサン……。」
「おいガキ共、早速遊ばれてやろう! 遊園地ていうからには遊べる場所が存在するはずだ! 何をグズグズしている、早く教えろ! 夜になっても知らんぞ!!」
「まあ、そんなに慌てんなよオッサン。 俺達、さっきは店に昼飯買いに行ってたんだけどな。」
「こっちの方で食べる方が断然、上手いからな! 先ずはバイキングに行こうぜ!」
クレメンスは遊びたい心を必死に抑え、子供達の言うバイキングコーナーへとやって来るとカラフルなお菓子が大量に用意されていた。
「こ、これは!!」
「驚いてる、驚いてる! そうさ、ここは誰にも邪魔されずにお菓子が食べ放題の天国なのさ!」
「ここに有る物全て、俺様が子供の頃に何一つ食べさせてもらえなかった菓子が並んでるぞ!」
「うへー、マジかよオッサン。 思ってたより酷い両親が居るのかよ、さっきは他の悪い大人みたいに扱ってゴメンな……。」
「良いって事よ、俺様の方こそ悪かったな。 そんな事より、昼飯食おうぜ。」
悪い大人というワードに違和感を感じなかったのか、クレメンスはバイキングで用意されているドーナツやゼリービーンズ、マカロンなどありったけトレイに乗せ、席に着くと子供達と食べ始める。
「さて、食うか……。」
クレメンスはお菓子を頬張ると目から涙を流し恍惚な表情をし、子供達からドン引きされる。
「これは、正しく本物の味だ。 くそっ、あのババアよくも俺様にあんなパサパサした物を食わせてくれたもんだ。 ……ぐす。」
(おい、何かコイツ気持ち悪くないか?)
(そうだな、関わらない方が良かったかも……。)
何時も読んでくださり有難う御座います。
今回は三話連続投稿してみました。




