第90話 決着
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
何者かに体を乗っ取られたエリーシャは中央にある魔法陣へと語りながら移動する。
「ふむ、まだ息はあるか。 まあ良い、遊びはこれくらいにして吾輩の大魔法を発動させるか。」
「お待ちなさい! エリーシャ様の体を返しなさい!!」
「ん、お断りだ……ようやくジジイから若い女の体を手に入れたのだ。 それに、この魔法陣を使う事で老若男女問わずナルドレイク王国全ての人間に魔物の子を孕ませる事が出来るのだからな。」
「何だって!? ちょっと何言ってるか分かんない。」
「分からないのも無理はない、吾輩の目的は魔族の軍勢を造る事なのだからな。」
「まずいですよ! エリーシャさん?が魔法陣の中央に立ってしまいましたよ!」
「落ち着いてください、アネット様……魔法陣は発動されません。」
「?」
魔法陣の中央で両腕を広げ、エリーシャは魔法陣を発動させようとするが何故か何も起こらず地団駄を踏む。
「さあ、始めよう……喜ぶが良いそなたらは吾輩の奇跡を垣間見る事が出来るのだ! ゲヒヒヒヒ……あれ? おかしいな、何処か間違えたか? いや、そんなはずは!」
「残念でしたわね、エリーシャ様は生物の中に有るマナでしか魔法を使えない体質なのです!」
「何だと!? こんの使えないデカパイ女め!! あっ!」
「油断しタナ、これで元に戻ルカ?」
エリーシャの体質のおかげで魔法陣は不発に終わりニアミスは隙を見て手に持った杖を衝撃波を飛ばし手放させるとエリーシャは気絶する。
そして、何と杖が独りでに立ち上がり姿を変えていく。
「こうなっては仕方あるまい、見るが良い吾輩の真の姿を!」
杖から蜥蜴の様な手足が生え髑髏の様な頭部になり、杖の先端は尻尾へと変わっていき人型となり金色の体をしていた。
「何コイツ! 杖が変身したよ!?」
「吾輩の名はエセナゴッドである! 後からでも魔法陣は発動出来るが、主らも魔族を孕むが良い!」
そう言うとエセナゴッドは大量のモンスターボックスを出現させると中からイヤらしい目をしたゴブリンが現れる。
「コイツは、あの時のゴブリン!」
「行け、吾輩も後で愉しむとするか……ゲヒヒ。」
ゴブリン達は、ニアミス達に襲いかかり三匹のゴブリンはスラストを無視し真っ直ぐエリーシャへと向かうと仰向けにし服をビリビリと破き始める。
「エリーシャ様から離れろー! 誰かエリーシャ様を!!」
「無理だ、数が多すギル!」
「アイスバレット! ダメ、コイツら魔法が効かないよ!!」
「そんな!」
二匹のゴブリン達はエリーシャの両腕を押さえ、一匹は股を大きく広げさせると涎を垂らしながら笑い始める。
「グヘへ……。」
一方アルベルトは、自身に勇気が発動した時何を思っていたか思考していた。
「じゃあな、フィアフルフレア!」
(考えるんだ、ジャミールの時とバルディッシュの時のに怒り以外に何を感じた!)
迫りくる魔力の塊を前に俺は、もう一つの共通点に辿り着く。
「そうだ、皆を守りたいって気持ちが有ったはず! 試してみるか。」
俺は怒りに加え誰かを守りたいとお気持ちを一つにし、力を入れると今まで以上の勇気が溢れ出てきた。
「うりゃああああーーーー!!」
「何だ! この凄まじい力は!? これが奴の勇気なのか!!」
「出来た……、けど喜んでる暇は無いな。 マジックアーマー!」
勇気を纏った俺は魔法で身体能力を向上させ、全ての力を右手の拳に集中させるとバゼラードの魔法目掛けて思いきり拳を突き出すと一気に青白い光が直線を描きぶつかる。
「くっ、何だこの力は!? 俺の想定していた以上の力だと!!」
「ぐっ、くっ……悪いが、何時までも相手してる暇は無いんだ! はああああ!!」
「ば、ばかな! こんな事が!? ぐああああーーー!!」
さらに力を込めるとバゼラードの魔力は俺の放った勇気砲に押し負け、バゼラードは何処か遠くまで飛ばされていった。
「はぁ…はぁ…、何とか勝ったな。 皆が心配だな、この岩を足場にして塔に入り込むか。」
バゼラードを倒した俺は近くの岩を利用し、足腰に力を入れ塔目掛けて思いきり跳ぶと猛スピードで砂漠を移動する。
その頃、メルダ達は大量のゴブリンと対峙しておりエリーシャの危機に誰も助けを入れられない状況と化していた。
「ふむ、この女はさぞ元気な魔族を産んでくれそうだな。 ゲヒヒ。」
「あら、面白そうな事してるわね。 私も混ぜてくれない?」
「ギッ!?」
エリーシャの処女がゴブリンに奪われかけた時、股を開かせているゴブリンを後ろから蹴り飛ばす者がいた。
「ふむ……まだ、仲間が居たのか。」
「貴方は?」
「レニーよ、そんな事より今はこのキショイ魔物を全滅させましょ。」
「そうですね、エリーシャ様をお願いします。」
レニーが現れた事で形勢が逆転し次々とゴブリン達を蹴散らしていき、しばらくすると魔物はエセナゴッドだけとなる。
「ふむ、中々やるではないか。 だが随分と体力を失っている様だな。 直ぐに終わってしまうのは目に見えてはいるが吾輩自ら……ぶげええええっ!?」
疲労困憊になっているニアミス達に余裕の表情を浮かべてながら自身の強さを見せつけようと構えるエセナゴッドの頬に青白い光を纏った者が高速で蹴り飛ばす。
「「「「「アルベルト!!」」」」」
「待たせたな、皆無事か? エリーシャ!」
「アルベルト様。」
俺は周囲を見渡し何があったのかを悟ると上着を脱ぎメルダに渡す。
「それをエリーシャにかけてやってくれ。 俺は奴を倒す!」
「大丈夫なの! アルベルトもボロボロじゃない!!」
「いきなり攻撃してきおって、だが今の不意打ちで吾輩を倒せなかったのは大きいぞ?」
「どういう意味だ?」
「今に分かるさ。」
俺は勇気を纏ったまま、魔物の脇腹に蹴りを入れると自身の脇腹にも痛みが走る。
「でりゃ!」
「ぐあっ!」
「痛っ!? 何だ、この痛み?」
「ゲヒヒ、言ったであろう? 吾輩は攻撃してきた相手を直視する事で痛み分けを生じせる能力を持つのだ!」
(痛み分け? 直視する必要があるなら、この魔法だな。)
俺は魔物からの情報で痛み分けを封じる手段として右手にマナを集中させ相手の目の前で掌を開きフラッシュを唱えた。
「何をしようと無駄だ、吾輩を攻撃した時点でそなたにもダメージが……。」
「フラッシュ!」
「目がああああっ! 吾輩のお目々がああああ!!」
眩い光が辺りを包み魔物は目眩ましをまともにくらい、俺はその隙を付いて蹴り飛ばす。
「せいっ!」
「ごはぁっ!」
「本当だ、痛みを感じなくなった! これでトドメだ!!」
「させぬ!!」
俺は目の見えない状態の魔物に勇気を右手の拳に集中させ攻撃を仕掛けに行くが突如魔物の尻尾が急速に伸び俺の左脇腹を貫通する。
「ぐあっ……ぐっ! なんのこれしき! でりゃああああ!!」
痛みを堪え、俺は魔物の胸部に拳を突き出し貫通させると魔物は何故か不気味に嗤う。
咄嗟にテレパシーで魔物の思考を読み取ると自爆する事を考えており、直ぐに尻尾を引き抜こうとするが何か引っかかりを感じ抜けない。
「ゲヒヒヒヒ、無駄だ……! 吾輩の尻尾には返しが付いておる。 外れるわけなかろう……。」
その言葉を聴いた俺は仲間を巻き添えにしない為、必死に叫んだ。
「皆俺から離れろおおおお! なるべく遠くへ離れるんだああああ!!」
「共に逝こうや……。」
エセナゴッドの体にヒビが入り中から光が漏れ出し爆発する。
「アルベルトさああああん!!」
その光景を見たアネットの叫び声が塔中に響き渡る。
何時も読んでくださり有難う御座います。
第四章、完!
次回から第五章が始まりますが物語がまだ出来てないので、しばらくお待ち下さい!
第五章ではアルベルトが記憶を取り戻し自身の目的が大魔王の封印を強める為に“封印の秘術”の石版を探さないといけない事を思い出します。
物語を練る必要が有るので、出来上がるまでお待ち下さい。




