第9話 タントルク村のエルフ
今回は村人が困っているので助けになる話です。
イシュタッド王国から出発して馬車に揺られる事二時間、タントルク村に到着する。
「お客さん、着きましたよ。」
「ありがとうございます、また機会があればお願いします。」
「あいよ、またよろしく。」
金銭を渡すと馬車は、イシュタッド王国へと帰っていった。
「だから、知らないって言ってるだろう!?」
馬車を見送った後、タントルク村の方から大声が響いてきた。
「アルベルト様、何かあったのかしら?」
「そうね、なんだか人集りができてますね。」
「何があったんだろ?」
俺達は人集りができてる方へと近付いていき何があったのか中年の男性に訪ねる。
「何があったんですか?」
「ん?ああ、実はな…」
中年の男性が何かを言おうとした時、人集りの中央で怒声が響く。
「俺はな、昨日あんたが村の結界の役割を果たしている水晶を台座から持って行ったのを見てんだよ!!」
「身に覚えが無いんだって!」
エルフだろうか、耳が長く尖っている。
若く見え長寿な種族として有名で、見た目は金髪で緑色の目をし弓を携えている。
「あの人が、何かしたのか?」
再び中年の男性に訪ねる。
「ほら、村の中央に台座があるだろ? 今は無くなってるが本来なら水晶を置く事で魔物除けの結界が村全体に張られていたんだ。」
「つまり、その水晶をあの人が持って行ったと?」
「そのせいで、ほれ見てみ農作物が魔物に荒らされて台無しだ!」
男性の指差す方には、見るも無惨に荒らされた畑があり、それが事実なら怒るのも頷ける…だが、本人は知らないと言っている。
先程からエルフに対して怒声をあげてる人に訪ねてみる。
「あの、本当にこの人が犯人なんですか?」
「ん、間違いねぇよ! よりによって、あの舘に持って行きやがったからな!!」
怒声をあげてた人は親指で後方の崖にある舘を指差す。
「あの舘に住んでる魔物が厄介でな、今まで何人もの冒険者が魔物退治に行っては誰一人として帰って来ねぇんだ!」
つまり、村の人達が言うにはエルフが舘の魔物と結託して水晶を盗んだと言う事らしい。
「それじゃあ俺が取り返してきたら、その人を許してくれるか?」
その台詞を聞いた村人達は、訝しむが結界が無い状態の村では農作物を育てるのが厳しいと判断し少しの希望でもと俺に魔物退治をお願いする。
「そうだねぇ、本当は見ず知らずの方に頼める事じゃないが頼めるかい?」
農家のおばさんや周囲の人達が頭をさげ、エルフを残し家へと帰って行く。
「すまない、僕も君達と共に魔物退治に参加させてくれないか?」
残ったエルフが、魔物退治に参加したいと言うが完全に信用できるわけじゃない。
俺は正直エルフを信用して良いのか悩んでいた。
「先程の話を聞いて信用できないのは分かってる。
けど、僕は疑いを晴らしたいんだ!」
「まあ、良いんじゃないアルベルト様?」
「私も反対しませんよ? 困っているみたいですし。」
エリーシャとアネットの言葉に覚悟を決め、共に舘へと向かう事を了承する。
「分かった、一緒に行こう。」
「ありがとう、僕の名はスラストだ。」
「俺はアルベルト、こっちがエリーシャで眼鏡の娘がアネットだ。」
「ああ、よろしく頼む。」
こうしてエルフのスラストと握手を交わし、共に水晶を取り戻すべくして舘へと足を進めることになった。
その道中、蝙蝠の魔物に俺は魔弾を放ち倒していく。
「そこだ!」
スラストの方を見てみると魔力で矢を形作り弓で魔物へと放つ。
エリーシャはというと、戦闘に参加できないアネットに近付く魔物に触れながら電撃で倒して行っている。
しばらくすると舘の前までやって来る事ができた。
「さて、問題は住んでる魔物だな……。」
「アルベルト様、アネットの事は私にお任せ下さい。」
「ごめんなさい、私…足手まといですよね?」
「そんな事は無いさ、着いて来てくれてありがとな。」
そんな会話をしているとスラストは、舘の扉に手を延ばす。
「この先に答えがあるのか……確かめないと。」
スラストが扉を開くと俺達も舘の中に足を踏み入れる。
舘の中は、薄暗く不気味な雰囲気が漂っている。
「ホーホッホッホッ、よくぞいらっしゃいました。」
どこからともなく、何者かの声が舘全体から聞こえてきた。
「誰だ!?」
「誰だとは、ご挨拶ですね~侵入者さ~ん?」
部屋の中央をみると、何やら不気味なオーラを纏った人影がある。
「はじめまして、わたくし……舘の主、マデルオーラと申します!」
そう言うと、その影は顔を上げると同時にスラストが何かに気付いたのか咄嗟に叫ぶ。
「奴の目を見ては駄目だ!!」
俺は、その声に反応しスラストをみる。
しかし、エリーシャとアネットは目を直視してしまい虚ろな目になり口が半開きの状態になる。
(何だ? エリーシャとアネットの様子が変だ。)
「おやおや、よく見るとアナタ……あの時の間抜けなエルフではありませんか?」
「間抜けだと! 何の話だ!?」
俺とスラストは、マデルオーラの目を直視しないよう注意しながら戦闘態勢を整える。
その時、マデルオーラは指をパチンと鳴らすとエリーシャとアネットはマデルオーラに近付いて行く。
「!?」
「ホーホッホッホッ相当、驚かれたようで~すねぇ? 無理もありません。 そちらのエルフは、もう察しがついてるのでは~?」
(まさか、コイツ……目を直視した奴を操れるのか!?)
そう考えているとマデルオーラは不気味な笑みを浮かべ、掌を俺とスラストの足下が開き落とし穴に落とされてしまう。
「うわっ!」
「な、何!?」
落下していくアルベルト達を見ながらマデルオーラは邪悪な笑うと落とし穴を元に戻しエリーシャとアネットを連れて二階へと消えて行った。
「ホーホッホッホッ! 久々の客人には、た~ぷりと絶望してもらわな~いとね~。」
一方、落とし穴の底では
(んっ! 息が苦しい!? 何かが俺の顔を塞いでる?)
「うっ……、痛ったた……。」
近くからスラストの声が聞こえてきた、スラストに俺の顔を塞いでる何かを退かしてもらう為に、その何かから顔を出そうとして動くとどこからともなく可愛らしい声が聞こえてきた。
「ひゃん!!」
(ひゃん!? ここには俺とスラスト以外にも誰かいるのか?)
そう考えて左右を見てみると明らかに人の太股であり、その何かが人の躰だということが分かってきた。
(え? まさか上に乗ってるのってスラストか?)
つまり俺はスラストの太股に挟まれ股間を押しつけられた状態になってるようだ。
「ひゃうん!!」
俺は我慢の限界とばかりにスラストを無理矢理にでも顔を上げて退かす。
スラストを見ると耳が下がり、真っ赤な顔をしていた。
「ぷはーっ! はぁ…はぁ…、し…死ぬかと思った!!」
「本当にすまない! つい気持ち良くてな…。」
今まで俺はスラストの事を男だと思っていたが、どうやら女の子だったようだ。
(さっきのは聞かなかった事にしよう…。)
「さて、これからどうするかだな。」
何度か読み返して、気に入らない文章だったので今回は、大幅に修正してました。
遅くなり申し訳ない。