第86話 それぞれの戦い(前編)
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
俺はエリーシャとレニーの二人とダブルデート?を終えようやく師匠の家に戻ると疲れ果てていた為、床に倒れ込み眠りについた。
「エリーシャ様、アルベルト様がお疲れの様ですが何か有ったのですか?」
「デートしてきたから疲れたのかもしれないわね。」
「そう、ですか。 ナスターク様達は今大事な話をなされているようですが後でアルベルト様にも知らせた方が良いかもしれませんね。」
ナスターク達は、ナゴット神父がナルドレイク王国で何をしようとしているのかをジーニーから聞いていた。
「何だって? ジーニー、それは本当なのか!?」
「うん、間違いないと思う自分がサハラの村から見た感じだけど、あの塔からは物凄い量のマナが集中しているね。」
「それでアイツらは何を企んでいるんだい?」
「解析が正しければ、ナゴット神父はナルドレイク王国の住民全てを使って魔族を産み出そうとしてるかもね。」
「魔族って古文書に書いてたやつか?」
「うん、おそらくは武闘大会のバルディッシュとバゼラードがその魔族だと思う。」
「それで、そのナルドレイク王国を使って大量の魔族を創り出すってのはいつやりそうなんだい?」
「塔に渦巻いているマナの量から察するに明日の昼頃だろうね。 それに人手が足りないからアルベルト達の協力が必要だ。」
そして翌日、俺達は師匠達からナルドレイク王国の危機を教えられ協力する事にした。
「……とまあ、ここまでは理解したか?」
「なんとかな、それで他にも問題が有るって言ってたけど何が問題なんだ?」
「実はね、このサハラの村の近くにある塔から離れた場所に5つの簡易魔法陣が設置されていてね……塔の中にある魔法陣の発動に失敗しても、その内のどれかが無事なら魔法が発動してしまう仕組みになっているんだ。」
「なるほど、だからアルベルト達の協力が必要って言ったのかい。 で、その場所は5つとも分かっているのかい?」
「勿論把握済みだよ、地図からすると塔から直線上にこれらの位置に有るよ。」
「うわっ! まじかよ、全部結構塔から離れてるじゃねーか!」
「それでジーニーさん、俺はナゴット神父を追って塔の中に入れば良いのか?」
俺はジーニーさんにナゴット神父の方を止めた方が良いのか聴いてみるが首を横に振られてしまう。
「いや、アルベルト君だと体内のマナを感じ取られて魔法陣の発動を速めてしまうからしれないから簡易魔法陣の除去を頼むよ。 これを持って行くと良い、その中の液体を簡易魔法陣にかけるだけで機能停止させる薬品だ。」
「なあ、ジーニーさん……かけるだけで良いなら何で場所が分かってるのに使わなかったんだ?」
「本当は自分もそうしたかったけど、明らかにマナの量がおかしい奴等が陣取って居たからね。 仲間でも呼ばれたら自分じゃ一溜りも無かったんだ。」
「そうか、それで簡易魔法陣には誰が行くんだ?」
「それでしたらワタクシが一つは行きますわ。」
「シェスカが?」
「そうだね、他の3箇所は僕達で何とかするよ。」
「そういや、ナゴット神父はエリーシャ達でどうにかなるのか? 何だか不安なんだが……。」
「それは大丈夫だと思う、ナゴット神父からはそんなに強い力を感じなかったから彼女達でも問題無いだろうね。 おそらく、ナゴット神父は信者を連れて足止めしてくるだろうから君達に塔の方はお願いするよ。」
こうして、俺とシェスカ姫と師匠達はそれぞれの簡易魔法陣の場所へと向かう事になった。
だが、そう簡単には簡単魔法陣の機能を止めさせられない様に俺が向かった場所には腕を組んで立ち尽くすバゼラードの姿が有った。
「おいおい、勘弁してくれよ……。」
「また貴様か、今回は武闘大会の時の様に優しくはないぞ?」
そしてシェスカ姫の向かった場所にはフラム・ベルジェが立ち尽くし、腰には細剣を携えている。
「フラム・ベルジェ!?」
「あら、どういう因果かしらね………でも丁度良いわ貴方に受けた屈辱、返してあげるわ!」
フラムは腰から細剣を抜きシェスカ姫に向け、シェスカも剣を抜き両手で構える。
「今度は簡単には負けません! 行きますわよ!!」
エミリーの向かった場所には眼鏡を掛けた細見で目が紅い青年が立ち尽くしていた。
「まあ、そりゃ来るよねー。 来てもらわないと詰まらないからねー。 始めましてかな? 僕の名前はミストルティン、冥土の土産に覚えといてよ。」
「悪いけど、アタシの趣味じゃあない……ねっ!」
相手を見下す様な表情を浮かべるミストルティンに対してエミリーは瞬時に距離を詰めストレートに攻撃を仕掛けるが、拳がすり抜けてしまう。
「悪いねー、君じゃ僕には触れられないし勝てないよ?」
「上等!」
ジーニーが向かった場所には、紅い目をした細見の男が立ち尽くし不気味な笑みを浮かべている。
「どうも、私の名前はトマホークと言います。 貴方の事はナゴット様から聴いてますよ? 賢者だとか、先に言っておきますが私に魔法は通用しませんよ?」
「へー、効かないんだ魔法……試して見ようかな。」
最後にナスタークの向かった場所には誰もおらず、只々砂漠という静かな空間が広がっている。
ナスタークは途中まで簡易魔法陣へと近付き、脚を止めるとゆっくりと息を吐き目を瞑る。
「…………。」
そして僅かに聞こえる砂の音の違和感を捉え、その場所へと肘鉄を食らわせると、さっきまで透明だった者が姿を現す。
「そこだあっ!!」
「ぐあっ!? くっ、な、何故分かった!!」
「テメェ見てえな姿くらます奴が、どう行動するかなんてお見通しなんだよ!」
「なるほどな、そいつは悪かったな。 俺様の名はグラディウスだ。」
ナスタークの攻撃を受け姿を現した男は筋肉質で紅い目をしていた。
「名前なんて聞いてねーよ、覚える気も無いしな。」
時は流れナゴット神父が教会から信者を連れて塔に向かう所をエリーシャ達が隠れながら尾行し始める。
何時も読んでくださり有難う御座います。
今回は前後編になります。




