第79話 不戦勝
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
翌日、俺達とニアミスは本戦へと出場する為控室にて試合が始まるのを待っていた。
「なあ、ニアミスの言ってた俺を睨み付けてたのってあの娘か?」
「ん、ああそうダナ…未だに睨み付けてるようダガ本当に何もやってないノカ?」
「うーん、昔見覚えが有るような気はするんだけど何かした覚えは無いんだよなぁ。」
対戦表に目を通していると睨み付けながら、俺の初戦の相手である女性が近づいてきた。
「久しぶりね、アルベルト? 随分楽しそうにしてたわね。」
「えっと、なあ俺何かしたか? さっきから怒ってるみたいだけど。」
「何よ! あたしとの約束も忘れて、たっくさん女の子連れて遊んでんじゃないわよ! この浮気者!! その腐った性根叩き直してやるんだから覚悟しなさいよね!!」
そう言うと対戦相手のレニーは、その場から苛立ちながら離れて行った。
「浮気者? ますます訳分かんねえな……。」
一方、観客席ではエリーシャ達が席に座り舞台の上で主催者の挨拶を聴いていた。
「長らくお待たせしました! 今年の武闘大会は、以外な面々が揃いなんと出場者の殆どが初出場と驚きの事態が起こっております! 彼等はどんな闘いを見せてくれるのか今から私もワクワクしております!!」
主催者が舞台挨拶をしている間にナスタークはエミリーとジーニーに指示を出す。
「エミリーは、観客席の西側に待機しててくれ……分かっているとは思うがマナを纏うのは緊急時だけにしてくれ。」
「あいよ、西側だね? それにマナを無闇に纏う気はないから安心しなよ。」
「ジーニーは東側を頼む。」
「分かった、自分も直ぐに反応できる様に集中しておくよ。」
エミリーとジーニーはナスタークに言われた通りにそれぞれの配置に付きに行く。
「では、これより第一試合を開始致したく思います!」
主催者は手に持ったマイクを審判へと手渡すと舞台から降りていき、次に審判は第一試合の選手の名を呼ぶ。
「それでは、第一試合の選手は舞台へとお上がり下さい! 予選Aブロック勝者クレ・グレゴリオ選手対Bブロック勝者バルディッシュ選手!!」
「「「「「ワアアアアーーーー!!」」」」」
観客席からは歓声が上がり、両選手が出てくるのを楽しみにしているかの様だった。
「あれ、両選手は舞台へお上がり下さい!」
審判が、そう声を発した瞬間観客席の一人が上空を指差す。
「なあ、あの上の何だ?」
「何か回りながら舞台へ向かってない?」
上空から回転しながら舞台へと着地し、両腕を高らかに挙げたのはバルディッシュ選手だった。
「ウオオオオッ!」
(ハッハー! 早速、殺さない程度に痛めつけて楽しんでやるぜ!!)
「なんと! バルディッシュ選手、上空からの派手な登場だああああ!! 対するグレゴリオ選手はどの様な演出で登場するのかああああ!!」
しかし、グレゴリオは中々舞台へと出てきてはくれず審判は困惑する。
「ん? どうしたんだ、対戦相手が出てこねえぞ?」
「きっと、演出の準備してるのよ! そうに違いないわ!」
「お、オホン! グレゴリオ選手舞台へお上がり下さい!!」
審判が再びグレゴリオ選手を呼ぶが一向に出てくる気配はなく主催者が審判に耳打ちをしに行く。
「ええ!? いない? どこにも?」
「はい、私もあちこち捜したのですが最初から居なかったようで誰も姿を見てないと。」
「ああ!? 何だと、この俺に試合をさせねえってのか!!」
バルディッシュは試合相手が居ない事に腹を立て、審判の胸ぐらを掴み怒鳴り散らす。
「いいから連れて来い! それとも貴様が代わりに俺の相手するかぁ?」
「む、無茶言わないでください! さ、捜しますから!! ですが10分過ぎたらバルディッシュ選手の不戦勝となります、いいですね?」
「この俺が不戦勝で満足できると……!」
バルディッシュは怒りに任せて審判を殴ろうとするが、バゼラードが片手で止める。
「その辺にしておけ、情けない。」
「きゃー! バゼラード様よー!!」
「やっぱりバゼラードさんはカッコイイんだな!」
その光景を見た俺はニアミスに訪ねる。
「バゼラードが止めてなきゃ、あの審判完全に頭部が無くなっていたな。」
「ああ、アタシにもバルディッシュが審判を殺そうとしている様に見えタナ。」
10分経ってもグレゴリオは現れずバルディッシュは不戦勝となるが、不満なのかその目には怒りの感情が表れていた。
「だ、第一試合はクレ・グレゴリオ選手が現れなかった為バルディッシュ選手の不戦勝となります!!」
「クソが!!」
バルディッシュは控室へと苛立ちながら戻って行く最中に俺とレニーの方を一瞬見て、凶悪な笑みを浮かべ遠くへ移動する。
(何だ今の、気味の悪い奴だな……。)
「アイツ、次はアルベルトの試合ダナ。」
「ああ、そうだな。」
舞台の上では審判がバゼラードに頭を下げ、感謝しているのが見える。
「バゼラードさん、さっきは有難う御座いました!」
「フンッ、勘違いするな俺は楽しみを台無しにされたくなかっただけだ!」
そう言いバゼラードは控室へと戻って行く途中で俺の方を見るがバルディッシュとは違い表情は変わらず、そのまま遠くへと移動して行った。
「えー、いきなりハプニングが起こってしまいましたが気を取り直して第二試合を開始したいと思います。 第二試合Cブロック勝者アルベルト・ブラウン対Dブロック勝者レニー・マークフィンガー! 両選手舞台へお上がり下さい!!」
「よっし、俺の番だな! よろしくな!」
俺はレニーに握手を求めるがバシッと手を払われてしまい、機嫌をさらに機嫌を損ねてしまったのか罵声を浴びせられる。
「気安く話しかけないでくれる? 女遊びしてる浮気者のゴミクズなんかが馴れ馴れしくしないで!!」
(酷え言われようだな、俺本当に何したんだろ?)
俺とレニーは舞台へと上がり、互いに向き合うと審判が試合開始の宣言をしる。
「両選手、準備はよろしいですね? では試合開始!!」
何時も読んでくださり有難う御座います。
次回は追放側視点にします。




