第66話 ナルドレイク王国
大変長らくお待たせしました。
第四章の開幕です。
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみください。
翌日、俺達は死んだはずのニアミスの両親が本物かどうかを確かめるべく朝早くニアミスに連れられ墓場へと来ていた。
「どうだ、両親の名前はあったか?」
「いや、全くもって無いどころか子供の時の記憶と照らし合わせても墓標の数が全然変わってなイナ。」
「僕も疑問に思ってたんだけどさ、この村の人達……大半の人が魔力を纏ってるよ?」
「うん、あたしにも分かるから間違いないよ!」
「あの、その魔力というのは何が問題なのですか?」
「普通の魔力なら何も問題無いけど、この村の人達が纏ってるのは……。」
スラストは最後まで語る前に俯きながら言い淀んだ。
「構わない、スラストの答えはアタシにとって都合の悪い事実なのだろう? ハッキリ言ってくれた方が楽だから遠慮なく言ってクレ……。」
「どうやったかは分からないけど、魔力を纏ってる人は……アンデッド化してるかもしれないんだ……。」
「…………、もし……あの時の記憶があるなら……聞いておきたい事があるんダガ。」
ニアミスは何かを覚悟をしたような表情になり、過去の自分にケジメをつけんと死んだはずの両親へと会いに行く事にした。
「ニアミス……。」
「覚悟は出来てる、生きていたとしてもアンデッド化してたとしても聞いておかなければアタシの気が済まないカラ。」
「分かった、行こうか。」
俺達はニアミスと両親らしき人物のところへと足を進め先日、ニアミスが見かけた場所で再度見かけ話しかけに行く。
「あの、すみません。」
「はい、何でしょうか?」
話しかけた人物はニアミスと同じように褐色肌で白髪の女性で明らかにニアミスの母親と分かる容姿をしていた。
(ぱっと見、全くアンデッドには見えないな……それに普通に会話出来そうだ。)
「ちょっと連れの人が貴方に聞きたい事があるそうで。」
「あら、何でしょう。」
「アタシに見覚えはなイカ?」
「見覚えですか、ごめんなさいね……貴方と会うのは初めてですよ?」
「すぅ……はぁ……、質問を変えマス……昔貴方は…………。」
ニアミスは、まだ心の準備が出来ていなかったのか途中で言い淀み顔が歪んでいるように見えた。
「どうされました? 顔色が優れないようですぎ?」
「ニアミス……。」
「アルベルト……、そうダナ……有難ウ。」
俺はニアミスの震える手を握り勇気づける、ニアミスにとって少しでも楽になるならと思ってすると手の震えは次第に収まっていった。
「貴方は昔、自分を刺した子供を怨んでまスカ?」
「!?」
「いえ、変な事を聞いてすみません今のは忘れてくだサイ。」
ニアミスの母親らしき人物は、自分を刺した子供という言葉に驚愕していた。
直ぐさま我に返りニアミスの肩に両手を起き、自分の子供が生きているのか揺さぶる。
「あの子が、あの子が生きているのですか! 教えてください、もし死んでいたとしてもナゴット様なら生き返らせてくれるはずです!」
その母親の反応は、まるでニアミスが子供の頃との時間が平行しているような、そんな感情を表していた。
「お、落ち着いてくだサイ!」
「はっ! ご、ごめんなさい私とした事が……さっきの質問だけど私は怨んでなんかいませんよ……当然じゃないですか、今だってあの子……ニアミスを探しているのですから!!」
「…………。」
(ああ、そうか……この人にとってのニアミスは子供の頃のアタシで今のアタシじゃないんだ。)
「もし、あの子を見つけたら教えてください貴方と同じ褐色肌で白髪の女の子です。」
「分かりました、見つけた時は必ず連れてきます!」
俺達はニアミスの用事が終わるとラクダ車へと向かうが、その道中ニアミスの後ろ姿は明らかに泣いていた。
「おんや、そっちのお連れさんは大丈夫かえ? 目が赤いっぺが。」
「大丈夫だ、出発してクレ。」
ラクダ車に乗り、ナルドレイク王国を目指してる間メルダは何か考え事をしていた。
「メルダ、何か気になる事でもあるのか?」
「ええ、スラスト様の仰っていた事を考えてみましたが……やはりおかしな点ばかり目立っていまして……。」
「おかしな点って?」
「申し訳ありません、今ここで言うのは……。」
「分かった、後で聞かせてくれ。」
「だが、アタシはアレが偽物でも嘘の言葉でも怨んでないって聞けて良かっタ!」
そうこうしてるうちにラクダ車はナルドレイク王国へと到着する。
「何か、たくさん人がいますわね。」
「なんでだろ?」
「ほら、アレじゃないかな? 武闘大会っていうイベンさト!」
「アタシは、もっと強くなる為に参加スル! 皆はどうスル?」
「俺は師匠がいないか街中を探すよ。」
「では、ワタクシもニアミスさんと同じく大会に参加致しますわ!」
そう言ってニアミスとシェスカ姫は武闘大会の会場へと参加する為に名前を記入しに向かって行った。
「おっ! アルベルトじゃねえか、どうした? 寂しくなって俺に会いに来たのか?」
ニアミスとシェスカ姫を見送った後、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
振り返ると垂れ目で服からはシャツが出ておりだらしない格好の男性がポケットに手を入れ立っていた。
「師匠! 丁度会いに行こうかと思ってたんだ! 俺にもう一度稽古つけ……。」
「チョアップ! 落ち着け。」
「あたっ!」
俺が言い終える前に師匠は俺の頭に軽くチョップを喰らわす。
「ちったあ落ち着け、で? 俺に稽古つけてほしいと。」
「ああ、そうなんだけど……ダメか?」
「その前に話がある。」
そう言うと師匠は俺の肩に腕を回し、小声で話しかけてくる。
(で、アルベルト……どの娘と付き合ってんだ?)
「はあっ!? 師匠何言って!」
(いいから教えなよ! 人生の先輩としてアドバイスしてやるからさぁ。)
「えぇ……。」
(青い髪の巨乳ちゃんか? 双子のメイドさん? それとも地味であまり目立たない眼鏡っ娘か? まさか、お前ロリコ……なわけないか……はっ!)
師匠はチラッとスラストを見て、俺から距離をとる。
「いや何……人の趣味をどうこう言うつもりは無いが、言っておくが俺にそっちの趣味は無いからな。」
「師匠……、こっちのエルフの人は女の子だぞ?」
「え、そうなの? ごめん、何か男っぽく見えたから。」
「ううん、良いんだ男の子っぽく見られる事には馴れてるから……はは……。」
「いやー、本当に悪かったよ! 女の子なら有るはずの胸が無いからさ! あっはっはっ!!」
「ちょっ!? 師匠なんて事を!!」
その瞬間、スラストの顔は暗く沈み何も言わなくなる。
「…………。」
((((この人がアルベルトの師匠? なんてデリカシーの無い!))))
「まあ、そのなんだ……こんな所で立ち話もなんだし俺の家にでも来なよ! 汚いとこだけどな!」
色々とやる事があるので何時も以上に投稿頻度は落ちますが、それでも良いという方は楽しんで頂けたのなら幸いです。
何時も読んでくださり有難う御座います。




