第60話 ジャミールの最後
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
引き続き、無属性魔法使いをお楽しみください。
ジャミールの動きはエルフの里で戦った時より劣っていた。
中々攻撃が俺に当たらず苛立ちを見せ始める。
「さっきから逃げてんじゃないわよ!」
「やっぱそうだ、お前弱体化してるだろ?」
「なら、かかってきたら?」
「言われなくても、やってやるさ!」
俺は次にジャミールの拳を左腕で払い除け、右手で胸部を思いきり殴るが思ってた以上に硬く拳が赤くなってしまった。
「痛ってえ! 硬くなりすぎだろ、お前!?」
「それより、貴方……何故魔法を使わないのかしらね? それとも……使えないのかしら?」
「さあ、どうだろうな?」
(まずいな、コイツを倒す決定打が見つからねえ。 魔法が使えないのもそのうちバレるだろうな。)
アルベルトとジャミールの戦いを見ながら、エリーシャはメルダの傷を回復させていた。
「よかった、このくらいの傷なら完全回復できそう。」
(前にアルベルト様がメルダとキスした時に体内に入ってたマナが残っててよかった。)
「エリーシャ様、何故アルベルト様を連れて来たのですか! 怪我を治して頂いた事には感謝しますが、アルベルト様は魔法が使えない状態なのですよ?」
「大丈夫、アルベルト様なら勝てるわ。」
「理解に苦しみます。」
メルダはエリーシャの考えが分からず困惑していた。
「アルベルト、さっきから躱してばかりダナ。」
「あの魔物、ワタクシの剣も通らずニアミスさんの拳も通りませんでしたわ。」
「あたしの魔法なんて吸収されちゃったし、どうすれば良いんだろ?」
俺はジャミールの攻撃を躱しながら、ある事を思い出していた。
(そういや、前にメルダが魔身人形は魔力で動かしてるって言ってたような……試してみるか。)
「ええい、ちょこまかと逃げ回りやがって!」
ジャミールは逃げ回る俺に攻撃が当たらず、苛立ちが募っていってるようだ。
俺は隙を見てジャミールに触れ、マナドレインを唱える。
「そこだ! マナドレイン!!」
「ホワアアアア!?」
するとジャミールから大量の魔力をマナに変換し吸収する事ができた。
ジャミールは慌てて俺から離れ体制を立て直す。
「何しやがんだテメエ!」
「よっしゃ! 思った通りだ、これでお前を倒せる! マジックアーマー!!」
「おい、よせ止めろ! 何をする気だ貴様ー!!」
俺はジャミールから吸収したマナを使いマジックアーマーを発動する。
「今度こそ終わりだジャミール!!」
「ウゴアアアアッ!!」
後退るジャミールの顎を思いきり蹴り上げ上空に飛ばし人差し指を上空のジャミールに狙いを定めて凝縮した魔弾を放つ。
放たれた魔弾はジャミールの本体とも言える宝石を貫くと外殻は機能しなくなった。
「一度ならず……、二度までも………。」
「しつこい野郎だったな……、皆無事か?」
(ま、あれくらいの高さで仕留めたしスラストにも見えてたろ?)
「ええ、メルダも回復したから大丈夫よ!」
「ワタクシは、剣が駄目になってしまいましたわ。」
「アタシは、後でポーションでも使って怪我を治スサ。」
「はあ、あたしだけ役立たずで終わっちゃった……。」
皆ジャミールとの戦いで自分の弱さを実感しているようだ。
「仕方ないさ、ジャミールは俺が全力を出してやっとまともに戦える魔物だったしな。」
「「「…………。」」」
「それに今回勝てたのはメルダのお陰だしな。」
「私の……ですか?」
「ああ、メルダの魔身人形の知識が無かったらじり貧で負けてたかもしれなかった。 有難うな!」
「いえ、私は………。」
「まあ、良いじゃないアルベルト様がメルダのお陰で勝てたって言ってるんだし!」
「…………。」
メルダは何か罪を犯したような顔付きで俺から目をそらし、俯いてしまった。
すると後からバージリア王国の兵士が辿り着き、壊れた街並みを見て事情を聞いてきた。
「この近くで暴れ回っていた魔物はどうした?」
「それなら、そちらの青年が倒したぞ?」
「うおわっ、隊長!? 今日は休みでは?」
「とんだ休日だよ! ったく!」
後から来た兵士は俺に近づいてきて頭を下げる。
「見ず知らずの方に魔物退治をさせてしまい申し訳なく思う! 本来で有れば我々の職務なのだが街を救って頂き感謝いたす!」
「君達の事は、国王陛下へ話しておこう。」
そう言ってバージリア王国の兵士達は国王へと状況説明をする為、城へと戻って行くのを俺達は見送った。
「そういや、人魚はどうなった? 薬は効いたのか?」
「薬なら、ちゃんと効いたわよアルベルト様。」
「そっか、ところで海に行けば良いのか? 俺、助けもらったお礼が言いたいんだが。」
「それなら私が案内するわ! 皆は疲労が溜まってるでしょうし、アネットの宿屋で休んでて!」
「そうですわね、ワタクシ達は宿屋で休んでますね。」
「アルベルト様、スラストは海で目立ちにくい岩肌で人魚の娘と足を使う練習をしてるわ。」
「分かった、ジャミールを倒した事も一応伝えないとな。」
俺はエリーシャの後を着いていく事にしたが、後方で仲間が自分の弱さを気にしている雰囲気があったが俺からは何を言って良いのか分からず、その場を後にした。
そして、しばらくすると岩肌の方でスラストが誰かの手を取り歩く練習をさせているのが分かった。
「スラスト、その娘が……あの人魚か?」
「あ、アルベルト……そうだね。 それと……ここからでもジャミールが上空で消えていくところが見えたけど、やっぱりアルベルトが倒したんだよね! 君は凄いよ、僕なんて手も足も出なかったのに……。」
スラストはエルフの里でジャミールに最大の攻撃が全く通用しなかった事を嘆いているように見えた。
「あっ、思い出した! この前、溺れてた人だ!」
「ああ、この前は有難うな!」
「はーい!」
「あはは、アルベルト様……思ったんだけど、この娘どこに預けるの?」
「えっ?」
「そう言われると、そうだね……どうしようこの娘。」
何時も読んでくださり有難う御座います。




