第55話 激闘を越えて
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
何時も読んでくださり有難う御座います。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみください。
巨大な魔弾がぶつかる時、俺は力を振り絞り両手を前に出し受け止める。
「ぐっ……、くっ………。」
「無駄な足掻きを………。」
「お前なんに…………負けてたまるかああああ!!」
その瞬間、俺の躰が青白く輝き始め力が湧いてきて魔弾をジャミールへと押し飛ばすが、それを躱される。
「な、何だ! 何が起こった!?」
「アルベルトが、光ってる?」
「ジャミール……、俺はお前を許さない……! 今度こそ終わりだ。」
「終わりだと、調子に乗るなよ死に損ないがああああ!!」
ジャミールは連続して魔弾を放ち続けるが、俺は片手を前に出し全ての魔弾をマナドレインで吸収する。
「マナドレイン。」
「なっ、これだけの魔弾を吸収しただとお!?」
(それに何だ? コイツに集中している光は!?)
「そうか、さっきアルベルトがジャミールから解放した魂が力を貸しているんだ!」
俺は力を振り絞りマジックアーマーを最大にして使い、ジャミールに一瞬にして近付き互いに連続して殴り合う。
「うおらああああっ!!」
「くそっ、くそがあっ!!」
(一体何処にそんな力が有ると言うのだ!?)
ジャミールはラッシュの間に俺の隙を見つけたのか瞬時に巨大な魔弾を放ち、それを俺は受け止めるが遠くへ飛ばされながらも脚を地面に付け踏ん張る。
「この、くたばり損ないがああああ!!」
「うあっ、………くっ!?」
そこへジャミールは魔法陣を展開させ追撃で両手を前に出し魔法を使ってくる。
「いい加減、諦めちまいな! ヘルズバスター!!」
極太のレーザーが巨大な魔弾にぶつかり、俺を押しつぶそうとする。
「うわっ……、くっ!」
「フハハハハ! 吸収したければするがいい、その時が貴様の最後だ無属性魔法使い!!」
俺は力任せにレーザーごと魔弾を押し、ジャミールの元へ走り魔力を暴走させる。
「うおおおおああああ!!」
「おいバカ、よせっ止めろ!? ぐわああああ!!」
互いに暴走した魔力は大爆発を起こし、周囲には土煙が立ち上りジャミールはモロにくらい躰中からプスプスと煙が出ていた。
「こっ、コイツ頭おかしいんじゃねえか? だが、先程の爆発を受けて生きてるはずが……なっ!?」
ジャミールは驚愕していた、何故なら土煙が晴れてくると右手に力を込めて最後の一撃を繰り出そうとしている俺の姿をハッキリと目視しているのだから。
(そうかコイツ、私から解放した魂を取り込んでパワーアップしているのか!)
「卑怯だぞ貴様ー!!」
「これが、お前が自由を奪って来た者達の魂の叫びだああああ!!」
拳に全ての力を込めて振り抜いた一撃はジャミールの土手っ腹に大穴を開け、周囲に爆風が吹き荒れる。
「そんな……バカな……、この私が……私の………美貌…………が…………。」
そういうとジャミールは煙と共に消滅していった。
「ははっ……、何とか…………勝ったぞ!」
ジャミールを倒した事で空は晴れ渡り、木々も元に戻っていき俺は全ての力を出し尽くし地面にドサッと大の字になる。
「はあ…………はあ…………、もう一歩も動けねえや…………。」
「アルベルト! やった、やったんだな! 有難う、あの化け物を倒してくれて……君は僕達エルフの英雄だ!!」
「俺は…………英雄なんて、柄じゃねえよ………。」
そう言って俺の意識は安心したかの様に落ちていった。
「アルベルト!? そんな!」
「安心せい、寝てるだけじゃ。」
「里長!?」
「ふむ、ジャミールのせいで里は滅茶苦茶じゃが彼を休ませてやろう。」
スラストは里長と共にアルベルトを損傷の少ない民家へと移動させ回復を待つ。
「スーラよ、これを渡しておこう。彼が欲しがっていた人間になれる薬じゃ。」
「はい、有難う御座います。」
「彼は本当に頑張った、ジャミールは奇跡でも起きん限り倒せる様な魔物では無かったしの。」
「ええ、アルベルトは奇跡を起こしてジャミールを倒した……まるで500年程前に大魔王を封印した勇者と無属性魔法使いみたいにね。」
スラストはアルベルトに膝枕をしながら、里長と共に外を見ると解放された魂なのか青白い球体が飛び回り、まるでアルベルトに礼を言いに来たかの様に消えていった。
しばらくすると里から逃げ出していたエルフ達が戻ってきてスラストと里長に何があったのか訪ね、ジャミールが倒された事に大喜びしていた。
「彼には感謝してもしきれんの。」
「そうですね、僕もいつかアルベルトみたいに強くなれたらな。」
俺の意識が戻ったのはジャミールを倒して3日も経っていた様で、まだ疲労の取れない躰を無理に起こしスラストと共にバージリア王国の宿屋ハンネスまで肩を借りて戻っていった。
「きゃああああ! アルベルト様、一体何があったの!? 服も躰もボロボロじゃない!!」
「あはは、ちょっとな。」
「アルベルト様、また無茶しましたね……マナが作られなくなっているではありませんか。」
「だ、大丈夫だって……これくらい平気だ!」
「魔法が使えなくなっても知りませんよ?」
その後、メルダから厳しく説教されエリーシャや他の仲間達からも心配させるなと色々言われ、俺は宿屋ハンネスにてしばらく宿泊し躰を休めるように言われてしまった。
「僕達は、この薬を人魚に渡してくるからアルベルトは安静にしててね。」
「ええ……、俺は?」
「傷だらけなんだカラ、大人しく寝テロ。」
「そうそう、あたし達で事情説明しておくから!」
「ワタクシも、アルベルト様は安静にしていた方が良いかと……だって止めても無茶しそうですもの。」
そう言って、皆で俺を置いて海へと出かけて行った。
「はぁ……、よし……こっそり着いてくか。」
「そうはさせませんよ?」
「えっ!?」
俺が寝かされてる部屋にアネットが入って来て、こっそり着いてくのを阻止される。
「……ったく、何で私が……。」
(何よ、やり遂げた様な顔しちゃって。)
「アネット、何で?」
「何でって、看病に決まってるでしょ!」
アネットは頬を膨らませながら、ほんのり赤い顔をしながら俺の看病をしにきた様だ。
何時も読んでくださり有難う御座います。
楽しんでいただけたのなら幸いです。




