第52話 解かれた封印(追放側視点)
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
また、誤字がありました報告有難う御座います。
前回から休止する予定でしたが、とりあえず物語が纏まっている今回まで投稿して休止します。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみください。
クレメンスはアクナヴィーテの屋敷にて話し合いをしていた。
「エルフの里ねえ……、その宝ってのは何なんだ?」
「噂では魔法の鏡と呼ばれている代物だとか、何人か貴方と同じ様に頼んで取りに行ってもらいましたが皆ボロボロになってことごとく失敗してましたからねぇ。 そこで貴方の身体能力の高さを鑑みて契約したのです。」
「なるほど、つまり俺様が船から脱出するとこを見てたって事か……安心しなよエルフの里に行く手段なら見つけてるぜ?」
「ほう、それは頼もしい。」
クレメンスが考えたエルフの里へ行く方法とは、アルベルト達が海で遊んでいる時に見かけた耳が長い人物、スラストが森に行くのを後ろからつけるというものだった。
そして、その作戦は成功しアルベルトとスラストが森へと入って行くところをアクナヴィーテと共に隠れながらつけていた。
「はっ! 馬鹿な奴らだ……俺様につけられてるとも知らずになあアクナヴィーテ! ……アクナヴィーテ?」
「これは、結界の類ですねぇ申し訳ないが私は先へ進めそうにありませんねぇ……後は頼みましたよ?」
「おいおい、マジかよ……必ず取って来てやるから報酬忘れんなよ?」
「ええ、楽しみにしてます。」
しばらく進んだところ、アルベルトとスラストは何かを話し始める。
(あいつら何を話してんだ? まだ俺様には気付いてはいない様だが。)
話し終えた後、アルベルトが何かを感じた様に後ろを振り向く動作をした為クレメンスは咄嗟に近くの木に隠れる。
「ん、何だ?」
「アルベルト、どうかしたのか急に後ろを向いて。」
「あー、いや何でもない気のせいだ。」
(あっぶねー、いきなり後ろ振り向くんじゃねえよ! 無能野郎!!)
何とか見つからず、アルベルト達がエルフの里に着くとクレメンスは早速宝がありそうな場所を探す。
(あの大きい建物には長老でもいそうだな、来てみたはいいものの宝の情報収集が出来ないのはキツイな。)
クレメンスが森の木陰に隠れながら、移動していると興味深い話が聞こえてきた。
「ねえ、今日の当番ルルックじゃ無かった? あの鏡が有るか確認するの。」
「うわっ! そうだ忘れてた、今からでも見に行ってくるよ!」
「もう、アレは絶対に無くさない様に厳重に保管してるの
分かってる?」
「わ、分かってるよ……まあ無事だとは思うけどね。」
(鏡か、そういやアクナヴィーテも鏡が欲しいと言っていたな間違いなくエルフの宝だな。)
クレメンスはルルックと呼ばれた子供のエルフの後ろをつける事にした。
しばらく後をつけていると社の様な建物が見えてきて、ルルックは扉の鍵を開け中に入って行く。
「うん、鏡は無事だね確認終了!」
(何だ、やけに出て来るのが早いな……まあいい鍵がかかっているようだが俺様にかかれば鍵なんて大した事じゃねえしな。)
鍵を施錠し里へと少年が帰って行くのを見送ったクレメンスは木陰から出て来て早速、宝を盗る為社に向かうが罠が仕掛けられておりそれに引っかかる。
「どうわっ! 痛ってーな、何で落とし穴があんだよ!!」
落とし穴から這い上がり、社を目指すが今度は何処からか丸太が飛んできて直撃する。
「ぐおああああ! 今度は丸太かよ!? 完全に殺しにかかって来てるだろコレ!!」
クレメンスは根性で罠を掻い潜り、社へと到達するが鍵がかかっており無理矢理に外そうとすると電流が流れ始める。
「あ? 何だよ鍵かかってんじゃねえか……邪魔だな、フンッ! あぎゃああああ!!」
「なんのこれしき! うぉらあっ!!」
力任せにロックを外し中に侵入すると奥には鏡が固定されており、大切に保管されているように見えた。
「こいつがアクナヴィーテの言ってたエルフの宝か……思ってたより普通だな。」
日が暮れて暗くなっている森を進み、入手した鏡をクレメンスはアクナヴィーテの待っているところまでエルフに見つからずに戻り鏡を渡す。
「おい、取って来てやったぜ? これで良いんだろ?」
「おー、正しくエルフの宝に相応しい……おや?」
「何だ、どうした?」
「どうやら、異物が混入しているようですねぇ取り除きますかねぇ。」
アクナヴィーテが鏡に手を翳すと中から水色の肌に白い髪で目が黄色のエルフの様な耳をした人型の魔物が飛び出してきた。
「や、やっと出られた……あんの無属性魔法使いめ! よくも私と美貌をこんな狭苦しい場所へ閉じ込めてくれたな……お陰でお肌がカサカサだ……。」
「おや、誰かと思えばその声はジャミールさんではありませんか。」
「んあ? そういうアンタはアクナヴィーテじゃないか。」
「見ない間、随分と姿が変わりましたねぇ可哀想にこんなに痩せ細って。」
「何を勘違いしている、美しいだろう? 私が力と引き換えに手に入れた美貌は!」
クレメンスは、そんなやりとりに飽きたのかジャミールに話しかける。
「お前、さっきから美貌が何だ言ってっけどよ………それならこの俺様は世界一格好いい男クレメンス・バッカーニア様だぜ?」
「何だ、この頭のイカれたゴリラは? 君のペットか何か?」
「実は困っていたみたいでねぇ、ワタシの手伝いをしてもらっているのだよ。」
「へー、そうかい私は潤いを取り戻すべくエルフちゃん達に挨拶しに行ってくるわねん♡」
ジャミールはそういうと森の中へと消えて行った。
「500年程前から姿を見ないと思ってましたが封印されていた様ですねぇ。」
「封印ねぇ、あいつ頭でも打つけた事でもあるのか? 言動が常軌を逸してるように思えたが……。」
「それは貴方も大概ですが、彼は元からあんなですよ?」
「マジかよ、よく恥ずかしげも無く美貌どうこう言えるな気色悪い!」
「さて、欲しい物も手に入りましたし次のお宝を探しますか。」
「おい待て、まだ俺様の指名手配を取り消す約束が済んでないぞ!」
「そうですねぇ、貴方の指名手配を取り消すのはだいぶ時間がかかりそうですし、今はこの透明マントを差し上げましょう。」
クレメンスはアクナヴィーテから羽織れば透明になれるマントを手渡される。
「それさえあれば、しばらくは見つからないでしょう。 私は他にもする事があるのでこれで。」
アクナヴィーテは何処かへと一瞬にして消え、クレメンスは一人森に残されるのだった。
次回からはジャミール戦になり、戦闘描写を書かないといけないんですよね。
毎度、読んでくださり有難う御座います。
楽しんでいただけたのなら幸いです。




