第5話 ナルデナ洞窟
今回は、ある意味主人公が救世主になります。
龍の顎がナルデナ洞窟へと向かう数十分前、冒険者ギルドにて、アルベルトは龍の顎からの離脱させられているかの確認に来ていた。
「はい、確かに昨日でアルベルト様は龍の顎から離脱されていますね。」
「リーダーの権限で、辞めさせられたみたいだな。
まあ、良いけど…。」
自ら龍の顎を辞める手間が省け、内心ほっとしている自分がいる、それもそうだ龍の顎は理不尽な理由で追放しただけでなく持っていた数少ないお金を気絶している間に奪っていったのだから。
「今日は、ナルデナ洞窟へ行くのでしたねアルベルト様。 どのような場所なのでしょう?」
エリーシャが質問したタイミングでボロボロになった若い男の冒険者がギルドに入ってきた。
「痛ってぇ…、酷い目に遭った。」
「うわっ、酷い怪我! 大丈夫ですか?」
俺は怪我をしている冒険者を心配し話しかける。
「ああ、生きてる分、大分ましさ…ところで先程ナルデナ洞窟へ行くような話をしてなかったか?」
「ええ、してましたけど何か?」
冒険者は神妙な面持ちで話し始める。
「今はナルデナ洞窟に行かない方が良い…、昨日までは大した事のなかった魔物が異様に強くなってる。」
それを聞いた俺は、むしろマジックアーマーの練習台として好都合だと考えた。
「お気遣いありがとうございます! でも俺、かなり強くなりましたから心配要りませんよ!!」
「そうか…気をつけてな。」
冒険者に見送られて、ナルデナ洞窟へと俺達は向かった。
「そういえば、エリーシャはどんな戦い方が出来るんだ?」
「ふふっ、それは見てからのお楽しみ。」
何気な会話をしながら、ナルデナ洞窟を目指す。
左程、時間は経っていないがナルデナ洞窟へと辿り着いた。
「うわあ、綺麗な場所だね。」
「あんまり、はしゃがないでね一応ここ魔物の巣窟だから。」
洞窟の奥へと進むと目つきの鋭いゴブリンが現れる。
数は、5、6体程視認できる。
「さて、どれくらい手加減すれば違和感無く倒せるか試してみるか。」
軽く、ゴブリンの顔を小突くて頭が一瞬にして破裂する。
「う~ん、まだ力を緩める必要がありそうだな。」
そう考えていると、近くでバリバリて電撃が鳴り響く音がしてきた。
その方向へと視線を向けてみるとエリーシャがゴブリンの頭を鷲掴みにし、電撃を与えて黒焦げにしている姿があった。
「本当に強いんだな、エリーシャって……。」
しばらくして、次から次へとゴブリンが湧いて出てくることに違和感を感じた俺は、エリーシャに原因を探すことを提案する。
「なあ、エリーシャ思ったんだがヤケにゴブリンの数が多いから原因を調べないか?」
「それもそうね、アルベルト様の言う通りにしますね。」
俺達は、ゴブリンを倒しながら魔物の湧く道を真っ直ぐに進んで行くとゴブリンを産み出している箱のような物が見つかった。
「これは、モンスターボックス!!」
「モンスターボックス?」
モンスターボックスとは、魔物を一定数産み出す箱のような物で上限はあるが魔物が減ると再び、産み出し続ける厄介なトラップである。
「今は、上限いっぱいになってるみたいだから早く壊すか。」
魔弾をモンスターボックスに打つけると粉々になり見る影もなくなった。
「これで、ゴブリンの無限湧きを押さえられましたの?
アルベルト様?」
「そうだな、少なからずこれでマシにはなったと思う。」
道中、俺はエリーシャの戦い方を見てきたが、どうにも魔物に毎回触れて電撃を浴びせているのが気になり、聞いてみることにした。
「そういや、エリーシャは毎回魔物に触れて魔法を使っているようだけど何でだ?」
「その事ね、私ね…、体内のマナを使うことでしか魔法が使えないの。 ちなみに魔物全般、体内にマナがあるから利用して倒してたってだけよ。」
(何気に俺の弱点を突いてるような体質だな……。)
「あ、でもアルベルト様には、魔物達のようなことはしないから安心してね。」
そう、言い終えると遠くから女性の悲鳴が洞窟内に響き渡る。
「キャーッ!!」
「アルベルト様! 今の声って!!」
「ああ、あの冒険者の人みたいに強い魔物に誰かが襲われてるのかも!!」
声のした方向へ、俺達は走って行く。
その間に聞き覚えのある声が聞こえたが、気のせいということにした。
「……じゃねえ!!」
「今の声………、まさかな……。」
「アルベルト様、どうかされましたか?」
「いや、何でも無い…気のせいだ。」
走り続けていると何やら巨大な影が見えてきた。
そうキマイラである、よく見ると近くには誰かが動けないのか諦めた様に目を閉じて最後の時を迎えようてしていた。
「いけない! あの人、諦めてる! 一か八か、マジックアーマー、間に合えーーー!!!」
俺は、目の前の人を助けるべく馴れないマジックアーマーを使いキマイラに跳びかかった。
キマイラは、今にも目の前の獲物にトドメをさそうと右前脚を振りかぶっていた。
「当たれー!」
あまりの速さに反応しきれなかったのか、キマイラは俺が衝突すると首から骨がゴキっと砕ける鈍い音が鳴り響き体勢を崩して壁に激突する。
「何とか間に合ったか。」
キマイラのヤギの顔は陥没し、ライオンの部分は歯が砕け、体はあらぬ方向へと曲がっていた。
しかし、蛇の部分はダメージが軽傷だったようで地面に着地した俺に咬み付こうとしてきた。
「悪いけど、相手をしてる暇は無いんでね!!」
蛇に魔弾を打ち込むとパアンと頭が弾け飛んだ。
「アルベルト様! 大丈夫ですか!?」
エリーシャが追い付き、俺を心配するが直ぐにキマイラに襲われていた人に視線を映す。
「この人、足に怪我してる! それも重傷よ!!」
「確か、ポーションを持っているからこれで!」
しかし、エリーシャは間に合わないと告げる。
「駄目、傷が酷いうえに死にかけてる! ポーションじゃ間に合わないわ!」
折角、キマイラを倒したというのに目の前の人を助けられないのかと考えているとエリーシャが、とんでもない提案をする。
「仕方ないわね、これしかないわ…。」
「エリーシャ? 何か解決策があるのか?」
「ええ、アルベルト様、この娘にキスして!!」
正直、俺はエリーシャが何を言っているのか理解出来なかった。
「何してるの! 早くキスして!! 手遅れになるわよ!!」
「わ、分かったよ。」
(ゴメン! 見知らぬ人!!)
俺は罪悪感に苛まれながらも、死にかけの娘にキスをする。
その間、エリーシャは、その娘の体に触れヒールを唱える。
「アルベルト様、マナをもっとこの娘に送って! 今朝私としたように!!」
「!!?」
ますます、意味が分からなかった知らない娘の唇を奪うだけでなく濃厚なキスをするように指示されたが救う為なら、仕方ないと自分に言い聞かせ言われた通りにする。
「いいわ、その調子よ! 思った通り、怪我の回復が早くなったわ。」
「ん、ん~ん……。」
そろそろ、怪我が完全回復するというタイミングで死にかけだった人が目を覚まし自身が知らない男とキスしている状況に対して驚きを隠せずアルベルトを突き飛ばした。
「うわっ!」
「ぷはっ! な、なな、何なんですか貴方!? 女の子の唇を奪うなんて最低ですよ!!」
とりあえず、誤解を解かなければならないが、この状況だし難しそうだ。
次回は、どうやって誤解を解かせますかね。