第46話 船酔いと飲み比べ
第二章は第26話からです。
今回から第三章の始まりです。
また、誤字がありました報告してくださり有難う御座います。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみください。
俺達はサーメイル王の提案で客船に乗りバージリア王国を目指していた。
「うぷっ……、気分が悪い……吐きそう……助けてアルベルト様。」
「エリーシャ様、その様な事でアルベルト様を困らせないでください。 私が看病しますので。」
船に乗って数分後、エリーシャは船酔いで寝転んでメルダに看病されていた。
「俺には、どうすることも出来ないからメルダはエリーシャを頼む。」
「やだぁ……、アルベルト様が……良い……。」
「仕方ありませんね……。」
メルダはエリーシャに耳元で何か喋ると諦めたのか納得していた。
「じゃあ、メルダで……良い……。」
「そうか、あんまり無理するなよ?」
「うん……。」
(メルダの言う様にアルベルト様の前で吐くなんてしたくないわね。)
俺は船酔いで倒れているエリーシャをメルダに任せて甲板へと移動する。
「アルベルト、エリーシャは大丈夫なのか? 顔色が悪いみたいだけど。」
「ああ、メルダに任せたから大丈夫だと思う。」
甲板にはスラストがおり遠くを見つめていた、その目は何か悲しい事が有ったかのように弱々しく感じたが直ぐに何時もの顔に戻りエリーシャの心配をしていた。
「そうか、僕はしばらく風にあたってるよ。」
「そういや、トレーシィは何処だ? 見当たらないが。」
「うーん、食堂じゃないかな? お菓子売り場があったし。」
「迷惑かけてなきゃ良いけど……、嫌な予感がするし確認してくる。」
スラストと会話した後、トレーシィが迷惑行為を他の人にしていないか確認する為お菓子売り場へと向かった。
「はあ、やっと落ち着きました。」
「あ、アル! この蜷局巻いてるお菓子冷たくて美味しいよ! アルもどう?」
何やらアネットが疲労しており、トレーシィはソフトクリームを食べていた。
「いや、遠慮しておく……アネットは大丈夫なのか? 疲れてる様に見えるが……。」
「実はですね、トレーシィさんがそのお菓子を食べたいと駄々をこねてしまいまして。」
「あー、何か想像できるな……お疲れ。」
「ねえ、アネちゃん! 今度はこれ食べたい!」
「トレーシィ、あんまりアネットを困らせるなよ?」
「はーい。」
俺はアネットとトレーシィを残し食堂へと向かった。
「そろそろ何か食うか、腹減ってきたし。 ん?」
食堂にはシェスカ姫とニアミスがおり、何やらがたいのいい男性とニアミスが飲み比べをしていた。
「何やってんだ?」
「アルベルトさん、ニアミスさんが飲み比べをしているのです。」
「そりゃ、見れば分かるが……。」
(そういや、龍の顎で冒険者活動してた時も息抜きでやってたっけ。)
「うぷっ! 嬢ちゃん、あんた強いな……もう飲めねえ……。」
「はっハー! アタシに勝ちたきゃ酒樽一つ吞みきる躰を作ってキナ!」
何時もの事だったが、当然の様にニアミスは酒に強く飲み比べで負けた事は無いがシェスカ姫に余計な知識を与えていないか心配である。
「ところで、アルベルトさんはお食事に?」
「まあ、そうだな……それとエリーシャが食べられそうな物を探しにな。」
「ふふ、優しいのですわね! ワタクシもお手伝いしますわ!」
俺達は食事を済ませるとエリーシャでも食べられそうな物を探すが、いまいち喉を通りそうな物が見つからない。
「困りましたわね、船酔いでも食べられそうな物が見当たりませんわ。」
「仕方ないか、お菓子売り場でゼリーでも買って行くか。」
「にしても、アルベルトさんワタクシに畏まらなくなって嬉しいですわ。」
「あ、流石に失礼でしたね……今からでも喋り方を。」
「素のままで構いませんよ、共に旅をする仲間ではないですか。」
「そう言ってくれると有り難い……です。」
「もう、また! 早くエリーシャさんの元へお菓子を買って行っては?」
「それも、そうだな……シェスカ姫も探してくれて有難う。」
ゼリーを買い、エリーシャの元へ戻ると正しくエチケット袋に嘔吐している最中だった。
「オロロロロロロ!!」
「…………。」
「…………。」
メルダは無言のまま、エリーシャの背中を擦っており俺はそっとドアを閉める。
「大丈夫ですか? エリーシャ様。」
「ハアハア……、おえっぷ…、だ………大分……楽になったわ。 こんなとこ……アルベルト様に……見られなくて……本当に良かった。」
(見ちまったんだけど……エリーシャの為だ、知らないフリでもするか。)
俺は今度はドアをノックし入っても良いか訪ねる。
「入っても良いか?」
「アルベルト様!? ちょっと待って!」
エリーシャは慌てて口元を濯ぎ、エチケット袋に吐くとメルダに直ぐ袋を棄てるように命じる。
「メルダ、今すぐ棄ててきて! アルベルト様に嗅がれたくない!」
「分かりました、ですがまた吐きそうならこちらに。」
メルダは予備のエチケット袋をエリーシャに渡すと吐瀉物の入った袋の口を閉じドアを開け廃棄しに行った。
「アルベルト様、ではごゆっくり。」
「?」
俺はメルダを見送ると部屋に入り、エリーシャの隣に座る。
「大丈夫か、少しは顔色が良くはなってるが。」
「うん、大丈夫……心配かけてごめんなさい。」
「謝る事はないさ、そうだゼリー買ってきたんだ! これなら食えそうか?」
「え、良いの? 有難うアルベルト様。」
「どういたしまして。」
エリーシャに渡したゼリーは袋の先端を切って吸うタイプのお菓子なのだが、それなりに栄養も豊富で様々な果物の味が楽しめる物だ。
早速エリーシャは、先端を切り口をつけ吸って食べる。
「美味しい。」
「それなら良かった、他にも種類買ってきたから無理するなよ?」
「うん、もう少し……このままアルベルト様の隣にいたいな。」
エリーシャは先程まで苦しかったのか涙目になっており、俺に躰を傾けてきた。
「その姿勢が楽なのか?」
「うん、ずっとこのままアルベルト様と一緒に……。」
かなり疲れていたのかエリーシャは俺に躰を傾けたまま眠ってしまった。
「気分悪そうだったし、後で楽な姿勢にしてやるか。」
まだ、中途半端ですが何とか話が纏まってきました。
何時も読んでくださり有難う御座います。
楽しんでいただけたのなら幸いです。




