第37話 不死身のバクムーマ
第二章は第26話からです。
プロットを見直して先の話しを考えると第二章は短めの話になりそうです。
また、誤字報告も受け付けてますので気になった漢字など報告していただけましたら編集させてもらいます。
長々と申し訳ありません、では引き続き無属性魔法使いをお楽しみください。
俺達は影の妖精の大群と戦う事になるが、やはり数が多いうえに何処からともなく増え続け限界がきそうになる。
「そら! 一体何処から、こんなに現れるんだ?」
「せいっ! ワタクシにも分かりませんわ、ですがナヤルック村は近くに見えますわね。」
「なら、こいつらを倒しながらナヤルック村に行クカ?」
俺は魔弾で影妖精を撃ち落とし、シェスカ姫は斬激を飛ばし斬り裂き、ニアミスは衝撃波を放ち撃ち落としながら先へと進む。
「きりが無いね、でも一応数は減っているように見えるかな?」
「ごめんなさい皆さん、私だけ足手まといで……。」
「気にしないでアネット! トレーシィちゃんお願い!」
「分かってるって! グラビティダウン!」
スラストは後方の影妖精を矢で撃ち落とし、トレーシィは重力の魔法で地面へと落とす。
(やっぱり、この影妖精……体内にマナが存在していない?)
「皆、もうすぐナヤルック村だ! ある程度減らしたら村へ入るぞ!」
俺達は目と鼻の先にあるナヤルック村まで走ると何故か途中で影妖精の攻撃が止まり、追いかけてこなくなった。
「アル、あいつら追いかけてこなくなったんだけど……。」
「何なんだ?」
「どうやら、ナヤルック村までは攻撃してこないようですね。」
「アンタ達、無事かい? あの影妖精、結構しつこかっただろ?」
ナヤルック村に着くと民家からおばちゃんが出てきて俺達を心配してくれているようだった。
「何とか、大丈夫です。 あの影妖精は何なんですか?」
「ここ最近、現れては村を監視しているみたいでねぇ子供が攫われた人もいるのさ、アンタ達は見たところ巨人の調査でもにに来たってとこだろう?」
「そうですね、知っている事があれば……。」
「止めとけ止めとけ! そんなヘタレ、巨人退治の数に入れたって足手まといになるだけだ!」
「ん、何だ?」
何やら近くで冒険者達がもめているようで、巨人討伐に反対する冒険者が目に付いた。
「頼む、止めてくれ! あの巨人と……“バクムーマ”と戦わないでくれ! 奴と戦うと子供達が……!」
「うるせえ! 何がナヤルック村の強者だ! 奴に少しでもダメージを与えられたかと思えば、おめおめと帰って来やがって!」
「また、あの人かい……悪気が無いのは分かってはいるんだけどねぇ、村一番の猛者って事で一度は巨人バクムーマに挑んで戻って来た頃には、あんな風になっちまってねぇ……。」
一人の冒険者は巨人と戦いに向かおうとする冒険者達を止めようとするが、一向に話しを聞こうとせず突き飛ばして村の外へ出て行ってしまった。
「フンッ! 臆病者は大人しく、村に残ってろ!」
「そうよね、昔は凄かったかもしれないけど戦う意思の無い人の言葉を誰が信じるってのよ!」
「俺達だけでも行くぞ! バクムーマを倒しにな!」
「そんな………、バクムーマと戦うと子供達が……。」
一人の冒険者は悔しそうに涙を浮かべ、自身の無力さを嘆いているように見えた。
「大丈夫ですか? かなり疲労しているようですが。」
「君達もバクムーマと戦いに来たのか? 頼む、止めてくれ!」
俺は一人の冒険者に声をかけると凄い勢いで掴みかかりバクムーマと戦う事をしないよう必死に訴えかけてくる。
「お、落ち着いてください! 何があったんですか?」
その一言で冒険者は我に返り、事情を話し始める。
「実は私はバクムーマと戦ったのだが、あれは完全な化け物だった。」
「化け物?」
「そうだ、剣で斬ろうが、魔法を放とうが何一つ効いている様には全く見えなかった。 それどころか奴は影妖精に連れ去られた子供を人質にしてきやがったんだ!」
どうやら巨人の正体はバクムーマという不死身の魔物で子供達を連れ去った影妖精と繋がりが有り、失踪事件の犯人で間違いないようだ。
「貴重な情報ありがとうございます。 さて、これからどうするか……。」
「アルベルト様、スラストとトレーシィはマナが少ないので今は休息する方が良いわね。」
「私も、さっきから走り続けてて体力の限界ですし…その方が良いですね。」
「そうダナ、アタシやアルベルト…メルダは大して疲してはいないがアネットやエリーシャは特に息が乱れてルナ。」
「あたしも疲れちゃったし休息に賛成!」
俺達はナヤルック村にて休息する事を選び、子供達の失踪事件の犯人である巨人バクムーマとの戦いに備えて準備を万端にし始める。
一方その頃、バクムーマ討伐に向かった冒険者達は苦戦を強いられていた。
「くそったれ! 何なんだこいつは? 何処を斬っても直ぐに再生するぞ!!」
「それに、何だか前よりでかくなってねえか?」
「そうね、少し前まで三メートル程しか無かったのに!」
「キッヒヒヒヒ! また、お前達か勝てないと分かってて良くやるね……おれっちも最近、良い夢を見る奴を取り込んでさらにパワーアップしたんだ! 力試しの為にやって来てくれて嬉しいよ!」
「ほざけ! お前がどれだけパワーアップしたって俺達は諦めない! それが冒険者としての誇りだ!」
バクムーマと呼ばれる魔物は頭部が馬で躰は人の姿を模しているが足の方は蹄になっており、本来三メートル程の大きさだったらしいが最近になって五メートル程の巨人へとなって、斬激も打撃も魔法ですら効かず、その周囲には影妖精が飛び回っている。
「ボロボロになってまで、よくやるね……知ってるか? 馬鹿の一つ覚えって言うんだぞ、そう言うの。」
「ぬかせ! お前だって痩せ我慢をしているだけだ! 不死身の魔物なんていてたまるか!! いくぞ、お前ら!」
冒険者は後方の二人に号令をかけるが返事が無い。
「……お前ら?」
「あーあ、周りをよく観ないから……後ろの奴等には眠ってもらったよ。」
後方の冒険者の近くには影妖精がおり、鱗粉を振り撒いて眠らせていたようだ。
そして、バクムーマは二人の冒険者を鷲掴みにし持ち上げる。
「バクムーマ! 俺の仲間に何をする気だ!」
「こうするに決まってんだろ?」
バクムーマは口を大きく開け、二人の冒険者を丸呑みにしたのである。
「なっ……! あ………、返せよ…………。」
「あぁ? 聞こえないねぇ、今何か言ったかい?」
「俺の仲間を返せ、バクムーマああああ!!」
二人の仲間を食われた冒険者はバクムーマに怒りで剣で斬りつけるが、やはり効いてはおらず、あっさりとした最後をむかえる。
「いい加減、飽きてきたな………はいサヨナラ。」
「うわああああっ!!」
冒険者はバクムーマに踏み潰され呆気なく殺されるのであった。
ようやく、次回は追放側視点になります。
読んでくださりありがとうございます。
いつも、楽しんでいただけましたら幸いです。




