第34話 ことの顛末と妖精の王
第二章は第26話からです。
今回は、ちょっと胸クソ展開になります。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみください。
アルベルト達がサーメイル王国を取り囲む妖精達を目にする数十分前、王国では妖精が子供達を攫ったとして一人の妖精が魔法の使えなくなる首輪を嵌められロープで飛べないようしばられ民衆の前で尋問を受けていた。
「だから知らないって言ってるでしょ! あたし達が何したって言うのよ!」
「まだ、しらばっくれるか!」
「俺は見たんだ! お前ら妖精が子供達を攫って行くのをな!!」
「そうよ! 私達の子を何処へやったの! いい加減帰しなさいよ!!」
「いくらイタズラ好きでも、やって良い事と悪い事ぐらい分かるだろ!」
民衆は一人の妖精に対して集団で囲い、それぞれ不満を口にするが無論妖精には何の事かサッパリ分からず否定する事しか出来なかった。
「本当に知らないんだってば! 何で分かってくれないのよ馬鹿!!」
「何だと!? この期に及んで馬鹿だと!」
その一言で怒りが頂点に達した街の人が妖精に向かって小石を投げ始める。
「痛っ! 何するのよ!!」
「お前ら妖精なんか、魔物と同じだ!」
「これでも喰らいなさい、魔物め!」
「痛いっ! ヤメテお願い!」
「止めてほしいなら、子供達を返せ!」
「そうだ、返せ! 家の子を返せ!!」
民衆達は次々に小石を拾い妖精へと投げつける、それを水晶を通して見ていた妖精の国の王は我慢の限界に達し人間に対して失望しサーメイル王国から同胞を救出した後に王国を滅そうと行動を開始した。
(ダメ……、これじゃ本当に戦争になっちゃうよ……そんなの望んでないのに!)
周囲から小石を打つけられ続ける妖精は頭から血が流れても、躰のあちこちに痣が出来ても平和を願っていたが、叶わずサーメイル王国と妖精達による戦争が始まってしまう。
「ん、おいアレ……何だ? 凄い数の妖精が来てるぞ?」
「我は妖精の王なるぞ! 愚かな人間達よ、今すぐにでも我らが同胞を解放し自由にするのなら今回の事は大目に見てやろう!」
(え、王様? まずい、ここで王様を刺激したら戦争に……お願い、大人しく言う事を聞いて!)
ボロボロになりながらも妖精の気持ちは大好きな人間の事を傷つける事を嫌がり、平和的な交渉で解決する事を願ったが人間というのは愚かな生き物で一度思い込んだら、それが真実だと言っても聞かず妖精の王に対して敵対心むき出しで罵倒を浴びせる。
「何が妖精の王だ! この人攫いめ!」
「そうだそうだ! 王様だったら民の他国で犯した罪は無罪放免ってか? 笑わせんな羽根虫が!!」
「何処まで自分勝手なのかしら!」
一人の妖精の思いは届かず民衆達は、あろう事か妖精の王に向かって小石を投げ始めたのだ。
「王様! マナシールド!」
「そんなに、我らと争いたいと見える……お前達! 我らが同胞を救出するぞ!!」
「「「「「おー!!」」」」」
咄嗟に王を護るべく、魔法で盾を造り王への攻撃をふせぐと妖精の王は人間達との戦争の合図を連れて来た妖精達に送る。
「さっきは王に向かって、よくも小石を投げてくれたな! 痺れろライトニング!!」
「うわあっ、攻撃してきやがった!?」
「何が温厚な種族よ! 危険過ぎるわ、誰か兵士を呼んで!」
この様な事態に発展してしまった一方でアルベルト達は、サーメイル王国を取り囲む殺気立った妖精達を遠くで発見する。
「まずいな、あのままだと死人が出かねないぞ!」
「そうですね、一体何があったのですかね。」
「なあ、間に合うと思ウカ? まだ大分距離があルガ。」
「間に合わせないと、でも僕は妖精達となんて戦いたくないな。」
「皆妖精達となんて戦いたくないはずですわ!」
「まずは、あの状況をどうにかしないといけませんね。」
走りながら皆、妖精達を止める為に試行錯誤するが誰も方法が浮かばないままサーメイル王国への入り口まで辿り着くが妖精が通せんぼをしてくる。
「何だ、お前ら! これは、俺達妖精とこの国の問題だ! 部外者は去れ!!」
案の定、妖精達は通してくれそうにないので俺達は妖精達を説得する。
「あの、何があったのか話してくれませんか?」
「おい、どうする?」
「話すだけなら良いんじゃないか?」
「それもそうだな、実はな……。」
二人の妖精は、顔を見合わせて何があったか話すだけならとことの顛末を話してくれた。
「それは、酷いな……。」
「でしたら、ワタクシに任せてはくれませんか?」
「部外者に何が出来るって言うんだい?」
「ワタクシは、ロクサーヌ王国の姫です。 貴方達の誤解を解く為、協力しましょう。」
妖精達は少し悩んだが、俺達を信用したのかサーメイル王国へ入る許可を出した。
「よし、分かった! 必ず同胞を救ってくれ、俺達も一国を滅ぼすなんて本当はやりたくないんだ。」
「ああ、必ず妖精達を解放し真実を解き明かす! だから戦争なんて馬鹿げた事止めさせる!」
そう言って俺達は、サーメイル城下町を駆け抜ける道中あちこちで人々が倒れているのを目撃するが見た感じ気絶しているようで他には冒険者や兵士が妖精達と戦う姿勢を見せていた。
「貴方達、止めなさい! こんな事をして何になるのですか!」
「何だと! さては、お前ら妖精共の仲間だな!?」
冒険者は何とシェスカ姫に対して剣を振り下ろすが、シェスカ姫は左手で払い除けると剣は地面に向かい滑り落ちる。
その瞬間、シェスカ姫は兵士に対してビンタを喰らわすと我に返った兵士は自分がロクサーヌ王国の姫に対して剣で斬りかかった事への重責を犯した事に気付き大人しくなった。
「無礼者! ワタクシを誰だと思っいるのですか!!」
「はっ! えっ! まさか、シェスカ姫!?」
「なあ、あいつ……急にどうしたんだ? ビビって大人しくなったぞ?」
サーメイル城下町の中央ふきんで俺達は、他の妖精とは違い王冠を被った妖精が上空に飛んでいる事に気付く。
「貴方が妖精の王様か? 今すぐ、この争いを止めてください!」
「何、止めろだと? 先程は、我々の味方をするのかと思えば向こう側の援護をするか。」
「なあ、アルベルト……何だかイヤな予感がするのダガ。」
「そうですね、ここは一端……二手に分かれた方が良さそうです。」
どうやら気が立ってる妖精達は俺達を敵と認識したようだ。
「シェスカ姫は捕まっている妖精達の解放を頼む、俺達は出来るだけ街の被害を食い止める!」
「分かりましたわ! そっちはお願いしますわ!」
上空から睨みつけてくる妖精達を相手に被害を防ぐ係は俺とアネットとスラストとメルダの四人、残りのシェスカ姫とエリーシャとニアミスの三人は城へ向かい妖精達の解放を担当する事になった。
「さーて、コイツはちと骨が折れそうだな……。」
次回はサーメイル王国に捕まっている妖精達の解放と誤解を解く話しになりそうです。
今回の話しも楽しんでいただけたのなら幸いです。




