第25話 明かされる過去 後編
随分とボツになりまくりましたが楽しんでいただけると幸いです。
ロクサーヌ王から過去にあった出来事を語る一方スクラドル家の屋敷ではメルダがアルベルトと出会った時の事を思い返していた。
「雨……ですか、あの日も丁度こんな雨が降ってましたね。」
「もう、7年も前になるとは時が経つのは早いですね。」
7年前、みすぼらしい服装の少女がパンを盗みバシャバシャと水溜まりを駆けパン屋の店員から逃げていた。
「待て! このガキ!!」
「ハァハァ、捕まるかっての!」
少女は路地へと入り駆け抜けて行くが店員は先回りをし反対側で待ち伏せをする。
「そら、捕まえたぞクソガキ! 憲兵に突き出してやる! なっ!?」
店員は待ち伏せしていた所に出てきた少女を捕まえたと思ったがよく見るとボロボロの人形だった。
「クソ! やられた!!」
人形を捕まされ、怒りに震える店員は人形を地面に投げ付け何度か踏みつける。
「クソ! 今度見かけたら、ただじゃ済ませねえぞ!!」
店員が人形を踏みつけている時と同時に少女は人形を通して半減はされているモノの共通感覚による痛みを受けてしまう。
「うっ…、くっ……。」
(我慢しなきゃ……苦しいのは人形も同じなんだから。)
少女は、うずくまり人形の受けている痛みを共にする。
「ったく! こんな汚ねえ人形どこから出しやがったんだ!」
悪態をつきながら店員は店へと帰って行ったのを見計らい、少女は人形に自分の所へ戻って来るよう命令した。
「ありがとう……助かった……。」
少女は人形を大事そうに片手に抱き、泥だらけのパンの泥を払いかぶりつく。
「はぐっ…あぐっ……ん、く………やっぱり………足りないなぁ………。」
そう言いながら少女は空を見上げていると横からパンを差し出す少年がいた。
「うわあ! 何だお前!?」
「俺か? 俺はアルベルト・ブラウンだ、それに美味いもんは美味い状態で食ったほうが良いぞ!」
少女は腹の虫がグゥ~と鳴ると少年から警戒しながらパンを奪い取る。
「ふ、フン! 貰える物なら遠慮なんてしないわ!」
奪い取ったパンを頬張りながら少年に訪ねる。
「あんたさ、食べ物を盗む事は悪い事だと思う?」
「そうだな、他人から物を盗むのは悪い事だな。」
「…………。」
少女は少し考え少年に対して提案する。
「じゃあさ、あたしをあんたの所で雇ってみない? 無理なら別にいいんだけど………。」
「雇えば盗みをやめるのか?」
「そうね、お金を稼ぐにも働ける場所なんて無いもの……で、どうなの?」
「分かった、俺はアルベルトだ! 君は?」
「メルダよ。」
こうしてメルダはアルベルトと出会いホームレス生活から抜け出しブラウン侯爵家で見習いメイドとして働く事になる。
「アルベルト様、一体何処へ行かれていたのですか? また勝手に屋敷を抜け出して!」
「ちょっとな、パンが美味いって評判の店に……それより、この子にメイドとしての仕事を教えてくれないか?」
アルベルトはメルダを連れ屋敷に帰るとメイドに心配されていたが、お構いなしに自分の意見を述べる。
「はぁ…仕方ありませんね、ダメと言っても聞かないのでしょう? こちらへどうぞ、お嬢さん。」
「じゃ、この人に色々教えてもらってな!」
「うん、分かった……。」
メルダはメイドに連れて行かれた場所は風呂場だった。
何故なら、今のメルダは髪はボサボサで躰は汚れ体臭が酷かったのだ。
「えっと、あの……。」
「まずは、躰を綺麗にしないとね。」
人形は別のメイドが預かり、メルダは風呂に入れられる。
「!?」
「何? どうかした?」
メイドはメルダの体中に痣があることに驚くが痛くないように優しく躰を洗う。
「痛くないかしら?」
「ん、大丈夫……。」
しばらくして風呂から出てきたメルダは男の子用の服を着せられ、一緒に持ってきていた人形を探すが見当たらない。
「あれ、あたしの人形は?」
「人形、あのボロボロの?」
「そうよ! どこにやったの!!」
メルダは大切にしていた人形が見当たらなくなり涙目になりながら必死に訴える。
「あの人形でしたら、汚かったので焼却炉に入れてきましたよ?」
「なんてことするのよ! あの人形はあたしの大切な……。」
「人形って、これのことだよな?」
そこに煤で体中が汚れたアルベルトが人形を持って来ていた。
「そ、それよ! でも何で?」
「何か大事そうにしてたし、それに家のメイドの失態は俺の責任でもあるからな……許してやってくれ、申し訳なかった。」
「アルベルト様!? そんな、私が悪いのです! 何もアルベルト様が頭を下げなくても!!」
「何言ってんだ、これは俺の責任でもあるんだ! 罰として人形の修復作業を命ずる、良いな!!」
(何だろう? 今胸がドキドキしてる。)
「家のメイドが迷惑をかけたな?」
「うん……、ありがと………。」
それから数ヶ月後メルダはメイドとしての知識を教えられ、アルベルト専属のメイドにまでなっていた。
「アルベルト様、お出かけですか?」
「ああ、何でも俺の無属性魔法が必要なんだってさ! だから長い間、留守になるかな?」
「そう……ですか……。」
「そんな悲しそうな顔すんなって、役目を終えたら帰って来るんだからさ!」
「じゃあ、約束して必ず帰って来るって。」
「分かった、約束の指切りだ!」
アルベルトはメルダにそう言い残し約束をしたが、三日後に行方不明となる。
「嘘つき…………。」
それから、現在アルベルトはロクサーヌ王からイシュタッド王暗殺未遂事件を語られていた。
「イシュタッド王、……暗殺未遂事件?」
「そうじゃ、その事件には不可解な事が多くてな。」
「不可解な事?」
「うむ、その事件の犯人はブラウン家当主カノール・ブラウン……彼はイシュタッド王を寝室にてロープで首を絞め殺害しようとしたものじゃ。」
「アルベルト様、私の……お父様はカノール様が王の命を狙うなどあり得ないと無実を証明する為に動いていたのですが……。」
エリーシャは暗い顔をしながら、自分の父親が何をしていたのか語ろうとするが息が詰まってしまう。
「無理をしなくとも良い彼女の父は、おそらく真実を知ったが為に口封じとして何者かに殺されてしまったのだろう。」
「…………。」
「そして、奇妙な事にカノールには王の首を絞めた記憶があると証言しておったが当時の王の首にはロープで絞められた跡など無かったと兵士が主張しておる。」
「何だよそれ、……訳が分からない!」
「それにの、他にもブラウン家の小さなメイドが証言台に立ち必死にお主の兄が仕組み目論んだ事と言っておったそうじゃが誰も子供の言うことなど信じなかったのだ。」
「これは私の考察なのだが、お主が行方知れずとなった日と重ね事件の起こった日は偶然とは思えんのだ。」
「と、言いますと?」
「おそらくは、大魔王を封印している結界をお主の無属性魔法で強化する事が可能だったが、その旅の途中の場所が破壊され私が護衛につけた兵士も亡くなっておった。」
ロクサーヌ王は深く考え、そして俺に今までにあった違和感を訪ねてくる。
「秘密裏に行動していたにも関わらず、何故ばれたか今なら分かる……お主に兄などおらぬ! 何故ならカノール家の一人息子なのだからな!」
何回もボツり遅くなってしまいました。
申し訳ありません。
また、遅くなるかもしれませんが楽しんでもらえているなら幸いです。
とりあえず区切りが良いので第一章は、このくらいにしておきます。
次回からは第二章に入ります、因みにクレメンスはシブトク生きてますので彼の活躍もお楽しみに!
では、しばらくの間書き溜めますので次の話は出せません
また会う日まで。




