第20話 無能な勇者と有能な護衛達
永らくお待たせしました。
中々、物語が進まず少しばかり休憩していましたが引き続きお楽しみください。
国王会議が始まり、世界各国の王達の国の現状を話している最中、偽物であるシェスカ姫はとある魔物へとテレパシーを送っていた。
(クハハ、良いぞ! マデルオーラよ、今こそ主の力を存分に発揮するが良い。)
しかしマデルオーラは応えない、それもそのはずアルベルト達を道連れにしようと最後の力を振り絞り自ら舘を崩壊させ命を絶ったのだから。
(チッ! 肝心な時に役に立たん奴め。)
偽物が内心そのような事を考える中、各国の8人の王…ロクサーヌ王を始めイシュタッド王、サーメイル王、バージリア王、ナルドレイク王、ヴァレンス王、パラディオーネ王、ジョルジーニ王、自身の国の問題を話し合っていた。
そして、ドメストはシェスカ姫の顔に少しの違和感を覚えていた。
(妙だな、一瞬シェスカ姫に苛立ちのようなモノを感じたが…もう少し様子をみるか。)
「……とまあ、我が国は財政難となっておっての…すまぬが力添えをして貰えぬか?」
「うーむ、難しい問題じゃのお…眠り続ける病と眠りにつけぬ呪いとは……」
そのような会話がされる中、ドメスト以外にも各国の護衛達はシェスカ姫の一瞬だが妙な面持ちをした所を見逃してはいなかった。
ただクレメンスだけは、その微妙な違和感すら感じとる事が出来なかったようで各国の護衛達は、それぞれ互いにアイコンタクトをとり段取りを組む。
(よし、そろそろか。)
「申し訳御座いません、国王陛下……大変無礼極まりない事を承知で発言をお許しいただきたい。」
ドメストは、自国のイシュタッド王へ発言の許可を国王陛下に訪ねると快く了承する。
「うむ、分かった…すまぬが一端会議を中断することを許してほしい。」
各国の王達もそれぞれの護衛の顔付きを見ると理解し、緊張しながら了承する。
「有難う御座います、無礼を承知で訪ねるが……貴様、シェスカ姫では無いな?」
ドメストはシェスカ姫に対して、偽物であると発言したのである。
「何を仰っているのでしょう? 私が偽物である証拠が何処に有ると言うのです?」
「フラッシュ!!」
「!?」
そうシェスカ姫が発言した瞬間、護衛の魔法使いの掌から会議室一面が眩い光に包まれ各国の王達を直ぐさま遠ざける。
「んあ? 何だ、一体!?」
その行動に理解出来ないクレメンスは、何が何だか分からずに立ち尽くしていた。
「一体何をなさるのですか!?」
「フン! 墓穴を掘ったな偽物め! シェスカ姫の一人称は、私だ!!」
「そうだ、俺も会った事があるからな間違えるはずねえ。」
他の護衛達もシェスカ姫の一人称を知る者は少なからずいるようだが未だにクレメンスだけは状況が理解できないでいる。
「いい加減、正体を現したらどうだ偽物め!!」
「くっ、くっ…クハハハハハハ! 良いだろう、最早隠す意味も無くなったのでな!!」
そう言うと偽物のシェスカ姫は正体を現した。
その姿はシェスカ姫が変えられていた魔王ダイアロスであり各国の王は驚愕する。
「な、何故…魔物が会議室におる! 説明願おうかロクサーヌ王!!」
「すまぬ、私は娘を人質に取られておるのだ…皆を危険に晒すのは本心ではないのだ。」
ロクサーヌ王の表情は苦痛に歪んでおり、それ以上は誰も責めようとはしなかった。
「国王陛下、こちらへ!」
護衛の一人が会議室から国王達を逃がそうとドアを開けようとするがビクともしない。
「なっ、そんな!!」
「クハハハハハハ! 無駄だ、ワシの力で貴様らは誰一人として逃げられんぞ?」
ダイアロスの力により、会議室に閉じ込められ戦う以外の選択しか出来なくなった護衛達は汗を滲ませながら戦う覚悟をした時。
イシュタッド王が喝を入れるべくして高らかに宣言する。
「皆の者、安心せい! こんな事も有ろうかと我が国では優秀な人材を王国指名勇者として、この場に呼んである!!」
この優秀な人材というのは間違いなくクレメンスの事であるが周囲の護衛達には不安要素しか無いようで眉を顰める者が多数いる中、国王達からは期待の眼差しを送られる。
「見よ! あの魔物の前に佇む勇姿を正に勇者そのものではないか。」
(お、もしかして俺様の強さを見せ付けるチャンスか?)
「国王陛下、お任せ下さい! こんな魔物、俺様一人で十分ですとも!!」
クレメンスは、そう言うとダイアロスへと近付き自信満々に宣言する。
「さーて、サクッと数秒で終わらせてやるよ! 」
「ほう、少し遊んでやるか。」
数秒後、円卓が粉々に破壊されクレメンスは頭部を鷲掴みにされ頭から血を流している。
(やはり、ただの馬鹿だったか…。)
「何という事だ、我が国の最高戦力がアッサリとやられてしまうなんて!」
「クハハ! これが最高戦力とはな、まるでイキリちらすだけしか脳の無いガキではないか!」
ダイアロスは、残念そうな顔をしながらクレメンスを会議室の窓から放り投げる。
「アイシクルバレット!」
魔法使いが魔法を使い無数の鋭利な氷がダイアロスへと連続して放たれ、その全てが命中するが全く効いていなかった。
「クハハ! まさか今のが魔法のつもりか? 魔法というのはこう使うのだ!!」
ダイアロスは魔法使いに対して掌を翳すと目に見えない速さで白い魔弾を飛ばすと魔法使いは一瞬にして全身が凍りづけになり、ダイアロスが手をグッと握ると粉々に砕け散ってしまった。
「クハハハ! 良い事を考えたぞ! この城全体を戦場としようではないか!!」
その瞬間にロクサーヌ城全体に邪気が溢れかえり、城内に魔物が出現し始める。
「何をした!?」
「なーに、簡単な事さ……城の兵士共は暇そうにしてたのでな…退屈凌ぎでもさせようと思ってね!」
会議室の外側からは兵士達の声が聞こえてくる。
「何だ、この魔物どっから現れた!?」
「それより、国王陛下達は無事なのか?」
「駄目だ! ドアが開かねえ!!」
兵士達は国王達の身の安全を最優先に考えるが現状どうする事も出来ないでいた。
「さて雑魚がいくら集まろうが、魔王ダイアロス様の敵ではないが死にたい奴からかかってくるが良い!!」
一応、次回から主人公視点に戻ります。
何時も読んでくださり有難う御座います。




