第2話 屋敷のメイド達のおもてなし
屋敷でのお話になります。
「では、まずは顔のお怪我を治しますね。」
フードを取った彼女は優しく俺の頬に両手を添えて回復魔法を唱える。
「ヒール。」
その顔は目をトロンとさせながら、徐々に近づいており気付いた時にはキスをしていた。
「!?」
突然の出来事に思わず離れてしまったが彼女は悲しそうな顔をしながら上目遣いで呟く。
「だめ…、ですか?」
そう聞かれると悪い気持ちになる、そうこれは彼女なりの回復魔法なのだと自分に言い聞かせ、再びキスをする。
キスをしている間に気付いたが顔の怪我の痛みが引いてきていた。
「ふぅ…、終わりましたよ。」
彼女はニコッと笑うと恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
「あれ、治ってる?」
腫れていたであろう頬を触ると痛みが完全に無くなっており、腫れも引いていた。
「あの、君は?」
「あっ! 申し遅れました! 私は、エリーシャ・スクラドルと申します。 よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしく! そう言えば何で俺の名前を知っていたの?」
疑問に思っていた事を聞いて見ると本を取り出し俺に見せるが、どのページにも文字の一つも書かれていなかった。
「白紙?」
「その、この本は私にしか見えない魔法がかかっています。
それに書庫に行けばアルベルト様の無属性魔法の事も書かれた本もきっと見つかりますよ。」
「無属性魔法の事が分かるの!!」
無属性魔法は資料が少なく、ただ単に魔力を丸く固めた魔弾しか放てなかった。
つまり、魔弾以外にも無属性魔法が覚えられるかもしれないと思うと喜びに満ちた顔になる。
その顔を見たエリーシャもまるで自分の事の様に眩しい笑顔をみせる。
「書庫に行く前に、お風呂に入って綺麗にしないと行けないわね。」
服が雨で濡れ汚れている事にエリーシャの言葉で思い出した。
「本当だ、汚れてる…。」
そう言った後にぐぅ~とお腹がなった。
「お風呂に入ったら、お食事にしましょうか。
メルダ、アルベルト様を浴室へ案内して。」
「はっ、かしこまりましたエリーシャ様。」
メイド長だろうか、黒髪のおかっぱ頭でつり目の他のメイドとは雰囲気の違うメルダと呼ばれた彼女は俺を浴室へと案内する。
「こちらに御座います、どうぞごゆっくり。」
広い湯船が中央に位置しており、その周りを囲む様にシャワーと鏡が設置されていたが、あることに気付きメルダに聞いてみる。
「あのメルダさん…俺、替えの服を持って無いのですが。」
「ご安心下さいアルベルト様、替えの服は、こちらでご用意させて頂きますので、それからワタクシの事は呼び捨てで構いません、メルダとお呼び下さいませ。」
そう言うとメルダは脱衣所から離れていった。
変えの服は彼女達で用意してくれるそうだ、安心して服を脱ぎ浴室へと足を踏み入れる。
「何だか、眠いな…、前に聞いた事があったな回復魔法は怪我は治せても疲労までは回復しないって。」
石鹸を泡立てながら睡魔と闘うが、どうやら少しの間眠っていたらしい。心配したのか目を覚ますと先程玄関で出迎えてくれたメイド達がバスタオルを着けて俺の躰を洗っていた。
「お目覚めになられましたか、アルベルト様?
中々出てこられなかったのでワタクシ達の不備ですね。
本当に申し訳ございません。」
メイド長は深々と頭を下げるが別に彼女が悪い訳ではない、そう眠気というのは生理現象だ、だから俺は彼女が悪いわけではないと伝える。
「別にメルダさんが悪いわけじゃないよ、浴室で眠ってた俺が悪い。」
「何てお優しい方なのでしょう! それとワタクシの事はメルダと…。」
「アルベルト様の優しさに感服いたしますわ。」
「私共一同、アルベルト様にお仕え出来る事、誇りに思います。」
メイド達は俺の躰を洗い終えると一緒に湯船に浸かる。
その間、両隣には二人のメイドが俺と腕を組み顔を赤くしている。
「いいなぁ、私もアルベルト様の隣が良い」
「仕方ないよ、アルベルト様も疲れているんだから今度にしましょ。」
「貴方達アルベルト様の前で失礼ですよ!?」
といった会話が続くが、そろそろ逆上せそうなので風呂から上がるとメイド達がバスタオルで躰に付いた水滴を丁寧に拭き取ると用意していた服を着させる。
「アルベルト様、広間へどうぞ食事の用意が出来てますので。」
広間へと案内されると長いテーブルにはクロスが敷かれ、その上には豪華な料理が並んでいる。
「え、いいの!? こんな高級そうな料理食べて!!」
目の前には牛肉のステーキや海鮮料理に暖かいスープが並んでいる。
「勿論です、アルベルト様のお口に合うか心配ですが。」
どうやら、エリーシャが料理を造ってくれていたようだ。
「それじゃ、いただきます。」
料理を口に運ぶと今まで食べた事が無いような味わいが口の中に広がった。
「こんなに美味しい料理、初めて食べたよ!」
あまりの美味しさに次々と料理を食べ進める。
食べながらエリーシャの方を見てみるとパァと満面の笑みを浮かべ、こちらを見ていた。
「よかった、アルベルト様のお口に合って。」
料理を食べ終えて、書庫の無属性魔法について訪ねようとしたが、また眠気が襲ってくる。
「アルベルト様、先程もお風呂場で寝てらっしゃったようですね夜も遅いですし、書庫は明日にして睡眠をとりましょうか。」
促されるまま、寝床へと案内されると大きなベッドが有り三人は寝られる広さがあった。
俺はベッドの中央に位置して眠ろうとするとエリーシャが左側にメルダが右側に隣り合い挟まれるような形になる。
「「お休みなさいませ、アルベルト様!」」
二人から、お休みの挨拶をされるが眠気が勝っていたため気にせずお休みを言い、深い眠りへと誘われる。
「お休みなさい……。」
見て下さり有り難う御座います。
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