第18話 悪夢の三ヶ月
今回予定していた追放側視点ですが、どうにも気に入らなかったのでボツになりました。
三ヶ月前、シェスカ・ロクサーヌは馬車に揺られロクサーヌ王国へと帰還する道中、何者かによる妨害を受けた。
馬車の外からは、兵士達と謎の声が聞こえてくる。
「何だ貴様は! 魔物風情に負けはせんぞ!!」
「ホーッホッホッホッ! 人と話す時は、目を見てもらわないとね~。」
「うっ!」
「何だ、おい! どうした!?」
「ほ~ら、あなたも。」
「うぁっ!」
「…………」
馬車は止まり沈黙が続き不穏な空気が馬車内に広がる。
「一体、何が起こったのでしょう?」
シェスカは馬車から降り、状況を把握するのに少しばかり時間がかかった。
「これはこれはシェスカ姫だったか? お初にお目にかかる…ワシの名はダイアロス! しがない魔王さ。」
(魔物? それに魔王!?)
「貴方達、何をしているの? 何で戦わないの!?」
兵士達の顔をよく見ると目は虚ろで口が半開きになっていた。
「兵士の方々に何をしたのです!!」
「ホーッホッホッホッ! 簡単な事ですよ~、わたくしのコマになってもらいま~した。」
「長話も、これぐらいにしてシェスカ姫にはワシの身代わりになってもらおうか! クハハハハッ!!」
そう言うとダイアロスの指先から眩い光がシェスカ姫に放たれる。
しばらくして、シェスカ姫は気がつくと目の前には三人の冒険者らしき人物達が自身へ武器を向けダイアロスと呼び襲いかかってきた。
「魔王ダイアロス! お前を倒せば俺達は国の英雄になれる! 悪いが死んでもらうぜ?」
「ウオォォォン!?」
(え、ダイアロス? 何を言っているの!?)
冒険者は連携をとり、四方八方から攻撃を浴びせてくるがシェスカ姫は自分の意思で動けず体が勝手に動き冒険者の一人である魔法使いを鋭い爪で切り裂く。
「セリーヌ! ダイアロス、よくもセリーヌを!!」
「ウオォォォン!」
(違う! 体が勝手に、殺したくなんか…!)
「ランド! 落ち着け!!」
シェスカ姫は自分の意思とは関係なくランドと呼ばれた青年を叩きつけ、頭を踏み潰した。
「うっ…、ぐうぁぁ……。」
骨の軋む音や、その感覚はあるものの自分の意思では止める事が出来ず目からは大量の涙が溢れだす。
「ウオォォォン!!」
(イヤあぁぁぁーーー!!)
「う、うわああああーーー!!」
残った一人の冒険者は、その場から逃げ出そうとするが逃がさまいと手を翳し、魔法陣が展開され真っ直ぐに残りの冒険者へと火球が直撃し燃えカスへと変わった。
「ウオォォォン」
(ワタクシが何をしたっていうの……)
シェスカ姫が魔王ダイアロスの姿に変えられた、その日ロクサーヌ王国では偽物のシェスカ姫が帰還していた。
「おお、長旅ご苦労であったな我が娘よ。」
「はい、父上…隣国のイシュタッド王国への手紙は渡してきましたわ。」
「お前達は下がって良いぞ! 疲れたであろう?」
「はっ!」
ロクサーヌ王に促されるまま、兵士達は謁見の間から出て行った。
「さて……、貴様何者じゃ?」
「父上、一体何をおっしゃって……。」
ロクサーヌ王は娘に対して不信感を抱き問い詰める。
「親が実の娘が分からん訳あるまい!! 娘を何処へやった?」
「クハハハハッ! なるほど、それが人間の言う親子愛か?」
シェスカ姫となった偽物は、あっさりと正体をばらした。
「まあいい…ワシの目的はただ一つ、国王会議への参加だ。」
「何?」
偽物は国王会議への参加を申し出たが無論、魔物など参加させられるわけがない。
「全国の国王達を危険にさらせるはずなかろう!」
「良いのか、娘の命がどうなっても?」
「娘に何をする気じゃ!」
ロクサーヌ王の額から汗が滲み出る。
「まだ、何も……貴様はワシの言う事だけを聞いていれば良いのだ!」
「ぐぅ、致し方ないか…。」
(国王達よ、娘の為だ私を許してくれ。)
そして月日が流れ、何人もの冒険者をシェスカ姫は葬る事となり元に戻る事を諦めかけた時アルベルト達が現れる。
また、人を殺してしまうと心の中で思っていたが今回の冒険者は何時もと何かが違っていた。
名誉の為でも金の為でも無い、一人は復讐心にかられ我を見失っていたが他の者達は仲間を想いながら戦っているのが見て取れた。
しばらくして、アルベルトが胸に手を当てると今まで重苦しく感じていた外殻のような物が無くなっていき、晴れやかな気分になった。
現在ダイアロスへと姿を変えられ冒険者を葬る日々から解放され、勝手な事とは理解していたがシェスカ姫はアルベルト達に魔王ダイアロスの討伐を願い出た。
「魔王討伐を受けていただき感謝いたしますわ。」
俺達はシェスカ姫を仲間に加えて廃城を出るとワニ頭の魔物が起きていたが寝ぼけながら話しかけてきた。
「んあ? 魔王様、その姿気に入ったのですかー。」
「ワタクシは魔王なんかではありませんわ!!」
ワニ頭の魔物がシェスカ姫が元の姿に戻っていることに目を見開いてる最中、ニアミスが鳩尾を殴り気絶させる。
「うごっ!!」
「悪いケド、まだ寝テナ!」
ドサッと魔物は白目を剥き気絶した。
「あら、この魔物…丁度良さそうな剣を背負ってますわね。」
そう言うとシェスカ姫は、魔物から剣を取り上げ背に携える。
「えーと、シェスカ姫? まさか、戦うおつもりですか?」
俺達はシェスカ姫の行動に理解が追い付かず訪ねてみたが、どうやら本気のようだ。
「勿論ですわ、ワタクシにこの様な仕打ちを働いてただでは済ませまん!」
「では、アタシ達はシェスカ姫を御守りしながら戦いまショウ。」
「ニアミスさん、本気で言ってるのですか? 一国の姫様ですよ!?」
アネットの言うことも一理あるがシェスカ姫は、やる気満々で下手に何も言えない雰囲気を醸し出している。
しばらくして来た道を戻り魔法陣へと乗り祠へと転移するとエリーシャが、あることに気付く。
「そう言えば、ロクサーヌ城のシェスカ姫は一体誰なのかしら?」
「それは、おそらくワタクシに化けた偽物でしょう。」
「だとしたら、今のまま姫様をロクサーヌ王国にお送りするのは危険だね。 国民を混乱させかねない。」
そうなのだ、ロクサーヌ王国にはシェスカ姫の偽物がおり国民は本物と思っている。
下手をすれば、偽物にシェスカ姫の存在が知られ国王陛下達の身に危険が及び人質に取られかねないのだ。
「そういや、エリーシャ…俺と初めて会った日にフード被ってたよな? あれ、持ってきてないか?」
「勿論有るわよ! だって思い出の品ですもの!!」
「これですね、私は要らないと思っていたのですがエリーシャさんが無理矢理バッグに入れてきましてね。」
アネットは、しぶしぶバッグからフードを取り出しシェスカ姫に渡す。
「有難う御座います、これで街の混乱はひとまず防げるはずですわ。」
シェスカ姫はフードを被るとロクサーヌ王国へと向けて俺達と共に歩き出す。
「皆様、行きましょう! ロクサーヌ王国へ!!」
一日遅れで投稿して申し訳ありません。
もうすぐ、魔王との最終決戦も近いですが楽しんでいただけたら幸いです。




