番外編エピソード︰スラスト① 豊乳温泉の謎
最終話の後日譚となります。
きままに更新する程度ですので、たまに覗くくらいが丁度良いくらいかと思います。
とある冒険者ギルドにて、スラストは【帰らずの里】の噂を二人の女冒険者から耳にする。
「ねえ聴いた?」
「また、帰らずの里に行ったっきり帰って来ない人が出たわよね。」
「そうそう、私達には関係無いけど里には【豊乳温泉】て言う豊乳効果のある源泉が湧いてるみたいね。」
(豊乳効果!?)
スラストは席から立ち上がり二人の女冒険者へと声をかける。
「その話し詳しく教えてくれないかな?」
「え、あ、はい良いわよ♪」
「ねえ良いの?」
「良いんじゃない、帰って来ない人は女性ばかりだし調べて来てもらっても。」
「それもそうね。」
「この村から北へ行ったとこにある山を登って橋があるところを渡った先にあるっ話しよ。」
「馬車も出てるし途中まで乗って行ったら良いんじゃない? 竜人族の人が女性には無料で馬車出して、あ! ごめんなさい、エルフの方って女性みたいな見た目してる人多いから無料じゃ無理よね、でも料金もそんな高くないはずよ。」
「…………教えてくれてありがとう。」
(僕は女の子なんだけどな。)
「え、何で微妙な表情してるの!?」
スラストは情報の通り竜人族の待つ馬車へと移動すると行き先を告げる。
「ええと、豊乳……じゃなかった! 温泉の里に行きたい。」
「よいぜ! あんた見た目の成りは男っぽいが女だろ? 無論無料で乗せて行ってやるぜ!!」
「ほんと!!」
(分かる人には分かるんだ! 僕が女の子だってこと!!)
「因みに竜人族は鼻が良いからな、匂いでバッチリだぜ! 冒険者特有の土臭い香りや、豊乳目的で訪れる客の匂いもな!!」
「ち、違っ! 僕は豊乳しに来た訳じゃ!!」
「ははは、そういう事にしといてやろう! じゃ飛ばすぜ!!」
竜人族は馬車を走らせ暫くすると山道へと入り中腹にあたる場所で馬を止める。
「よっと、目的の場所は橋の先にあるぜ。 馬車じゃ通れないから案内はここまでだ、じゃあな!」
「十分だ、ありがとう。」
竜人族の馬車はスラストを降ろすと来た道を引き返して行く。
「よし、豊乳……じゃなくて行方不明の人達を探そう。」
(決して僕は豊乳しに来た訳じゃないし。)
橋を渡り暫く進むと小さな村があり、道行く人達は殆どが女性か竜人族で更に巨乳や爆乳で溢れていた。
(なっ、なに!? 胸でっか!! まさか噂は本当に!? 豊乳に興味は無いけど調査しないと!!)
「あら、そこのエルフのお兄さん。」
「え、僕?」
(お兄さん……まあいいか。)
「貴方も温泉目的かしら?」
「そんなとこですが、何か?」
「ふふ♪ いやね、まさかエルフの殿方も混浴の温泉に興味があるとは思わなかったわ♪ もし、よろしければお背中流しましょうか?」
「いえ、大丈夫です。」
(混浴なんだ……にしても竜人族以外の男の人見ないけど何かありそう?)
「そう? 残念、温泉なら向こうの宿屋に宿泊すると入れるわ。」
「ご丁寧にどうも。」
(はぁ、僕って女の子に見えないのかな……でも今日でこの貧乳ともバイバイだ。 温泉に浸かるだけで夢が叶うなんて、早速宿泊しないと♪)
スラストは期待を胸に温泉宿へと宿泊する為にカウンターの竜人族へとニヤついた表情で名前を記入する。
「ふんふふーん♪」
(うげっ! 良く見たらこの人エルフじゃねえか!!)
「ん? どうかしましたか?」
竜人族の受付はスラストがエルフの女性である事に気付くとみるみると血相を変えていく。
「あーいえ、何でもありません。」
「そうですか。」
(今あきらかに不自然だったな、僕の顔? いや、耳を見て何かに気付いた様な感じか。)
竜人族を不審に思いながらもスラストは周囲を見渡し、村や宿屋内に一人もエルフ族を見ていないことが頭によぎる。
(そういや、僕以外にエルフ族を見ていないけど何か関係してるのか? まさか裏でエルフ族に酷い仕打ちをして豊乳効果があるとか、……無いな。 幾らエルフ族の女性の99%は巨乳が多くても関係があるとは思えない。)
「あのー、お客様? そんなに睨まないでくれます? やましい事なんて何もありませんよ?」
スラストは目を細め竜人族をジトーと見つめていたのを咎められるが、温泉を調べる為に早速脱衣所へと案内してもらう。
「で、ではごゆっくり。」
「ここ、女性用の脱衣所!?」
「と、当然でしょう!? 脱衣所まで男女共有なんてしてませんよ!!」
「それはそうだよね。」
(この人、良い人だな。 ちゃんと僕を女の子としてみてくれたし、だからと言って悪事を働いてたら許せるものじゃない。 早速、温泉に入って行方不明者の捜索をしないと♪)
かけ湯をし温泉へと入り暫くすると隣でグビグビと鳴る音が気になり振り向くとそこには温泉を飲むイザベラの姿があった。
「グビグビグビ。」
「うわあ!? ビックリした!! イザベラ!?」
「んお、誰かと思えばいつぞやのエルフではないか。 確かスラストと言ったかの?」
「そうですけど、何やってるんです?」
「見れば分かるじゃろ。」
「温泉飲んでることしか分からないです。」
「惜しいのう、ただ温泉を飲んでおる訳ではないぞ。」
「そうか! イザベラの胸はこの温泉を飲む事で大きくなって」
「いや、妾はおなごの入った出汁の効いた湯を飲んでおるだけじゃぞ? 胸の大きさは元からじゃ。」
「気持ち悪うっ!! あの止めてくださいよ!! ホント気持ち悪いんで!!」
「そんな引かなくても良いではないか、害がある訳でもあるまい。」
「そういう問題じゃ無いんだけど。」
「しかし、お主ももの好きじゃな。 勘違いで来ておるのなら話しておくかの。」
「勘違い?」
イザベラはスラストが何故温泉地に赴いたのかを理解しているかの様に語る。
「まずは前者として来たのなら、エルフのお主の願いは叶わぞい。」
「叶わないと言うのは?」
「エルフ族の特徴と言うか体質と言うか、残念ながら豊乳は諦めた方がええよ。」
(イザベラは前にアルベルトに意地悪してたし、にわかには信じられないな。)
「それはいいから後者の方は?」
「後者は行方不明者の捜索じゃろ?」
「まあ、合ってる。」
「別に行方不明者なぞ居らんし、ほれ向こうの肥満体型のおなごと一週間くらい温泉宿で仲良くすれば行方不明者の謎も解けるじゃろ。」
「はあ……。」
「さて妾は十分温泉を堪能したし上がるとするかの。」
ぱぁんとバスタオルを自身の股に強く叩きつけた後に肩へとかけ脱衣所へとイザベラは去って行った。
(おっさんかな……?)




