第159話 渾身の一撃
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
第五章は第91話からです。
第六章は第113話からです。
最終章は第136話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
全力のマナインパクトで消滅したかに見えたウルベノムだったがダークマターが残っていたのか落下する俺の横に激怒しながら現れた。
「ハァ……ハァ…………今回ばかりは……この私が……大魔王であるこの私が死を感じた! たかが人間風情にだ!! 許せるものか!!」
(くそっ! 身体が動かねえ!!)
「だが残念だったな……最後の最後に勝利の女神は私に味方したのだ、このままでは私は消滅の時を待つしか無くなる訳だが…………。」
(な、何をする気だ!?)
「喜ぶが良い、その身体を私が頂き再び恐怖と絶望に満ちた世界を創り上げるのだ! あれ程のマナを構築出来る身体なぞ、そうは無い貴様の身体を頂くぞ!!」
徐々に近付いて来るウルベノムから逃れようとするが身体が一行に動けず諦めかけたその時、身体が何かに引っ張り上げられる感覚がした。
(な、何だ?)
「じ、邪魔をするな死に損ないの魔族風情が!!」
「バ……ゼ……ラード…………?」
「ふん、最後の最後でヘマすんな! 奴は風前の灯火だ、このままこの下らん世界から脱出するぞ!!」
「あ、ああ……そう……だな…………。」
「マァアァテエエェエ!!」
バゼラードは俺を片手で担ぎながら崩れる岩の上を飛び乗りながら自身の入って来た狭間の世界の入口へと向うが、ウルベノムが簡単に逃がしてくれる筈も無く少ない魔力で魔弾を放ち足場を破壊してくる。
「チッ、面倒な野郎だ!!」
(くっ、何か策はないのか! 今の俺じゃ何も出来ない……このままだと何時かは追い付かれる!! 考えろ、考えるんだ!!)
『アルベルト! 諦めるなよ、俺達がついてる!! お前にマナを送るから無理してでもその化け物を倒すんだ!!』
「師匠!?」
俺は突如として頭の中にナスタークの声が響くと世界中から声が聴こえて来た。
『アルベルトよ困難を乗り越え魔王すら倒したのだ! お主なら大魔王にも必ず勝てる!!』
「イシュタッド国王陛下!?」
『アンタ何諦めようとしてんのよ、そんなに強くなってんなら余裕でしょ? 私のマナを分けてあげるから負けんじゃないわよ!!』
「ケニー!?」
『我々妖精族と人間との関係を修復してくれた者よ、妖精族皆の魔力を使うが良い!!』
「妖精王!?」
『ワシらエルフの里を再び脅威に晒したジャミールから救った恩人を今度はワシらが助ける番じゃ! 皆、魔力を送るぞ!!』
『『『『おおおお!!』』』』
「エルフの里の皆!?」
『アルベルト! 少ないがオレの魔力も使ってくれ、そして勝つんだ!!』
「アスティオ!」
『そうじゃ、我ら竜人族も迷惑を被った分手伝うぞ王子!』
「だから王子じゃねえ!!」
『アルベルトさん、ワタクシにはマナが有りませんが応援だけでもさせて下さい! あの時の悪夢を繰り返させない為にも勝って!!』
「シェスカ姫!」
『ここでアルベルト様が負けてしまってはラクシー様の努力が無駄に終わってしまいます! アルエッタ様の幸せな未来の為にも勝利を掴んでください!!』
「メルダ!」
『お願い、アルベルト様! こんな時に私は祈る事しか出来ないけどアルベルト様なら絶対に勝てます!! だって救世主なんだから!!』
「エリーシャ!」
世界中から魔力が俺に注がれ満身創痍な状態だったが無理にでも右手で拳を握りウルベノムへと向ける。
「チッ、出口までもう少しだってのに!!」
「バゼラード! そのまま走れ!!」
「ふん、言われなくともそうする!!」
出口は遠くに見えてはいるがウルベノムに追い付かれ両手で俺を掴もうとする。
「逃げられんぞ!!」
「もう逃げる必要もねーよ、喰らえ! これが正真正銘最後の一撃だマナインパクトー!!」
「うおっ!?」
「グオアアアアアアアアアアアアアアアア!! バカな、消える!? 大魔王であるこの私がアアアアアアアア!!」
皆の魔力を一点に集中する事で放ったマナインパクトの威力は膨大でウルベノムの全身を光りで包み込み今度こそダークマターを全て消し去り、その反動を利用し閉じかけた狭間の世界への入口までバゼラードと共に物凄い速度で抜けるとギリギリで閉じてしまった。
「うわっ!」
「ぐはっ!!」
「はぁ……はぁ……はぁ……倒したのか…………?」
「ったく、無茶しやがる。」
「有難うなバゼラード助けてくれて。」
「ふん、勘違いするな別に貴様を助けた訳じゃあ無い! あの時、貴様は土壇場で力を解放し俺を吹き飛ばしただろう?」
「あ、ああ……。」
「あんな負け方を俺が認める訳無いだろ、万全の状態になったら武闘会に出場しろ。 次は俺が勝つ!」
「そうだな、また闘おうか。」
「ふん、じゃあな。」
バゼラードは踵を返すと俺を置いて、足早に何処かへと歩み俺は全身の力が抜けるのを感じ休息を摂る事にした。
「長い旅だったな、さてどうやって帰るかな。」
『アルベルトよ、よくぞ大魔王を倒し世界に安寧の時を与えてくれた事、感謝するぞ!』
「イシュタッド国王陛下?」
『ワシのとこでカノールの死の真相を追ってはみたのじゃが嵌めた者は現侯爵家と判明までは良かったのじゃがな……。』
「何ですか? 言葉に詰まっている様ですが。」
『その侯爵は先程の魔物の大群が現れた時に国外逃亡を図っておっての、捕らえる前に家族ごと亡くなってしもうた。』
「そうですか、国王陛下が気に病む事ではありません。 薄々ですがアクナヴィーテの会話でそんな気はしてましたので。」
『そうか、本当にすまぬ帰って来たら盛大にパーティを開こうと思うとる戻って来るのを楽しみにしておるぞ大英雄アルベルト・ブラウンよ!!』
「大げさですよ、大英雄なんて俺は自分が正しいと思った事をしただけですので。」
地面に大の字に寝転がる俺の上空には雨雲が有ったのが晴れ渡り、まるで俺の勝利を祝福してるかの様に太陽の陽射しが世界中を優しく照らす。
「暫くは、この余韻に浸ってるかな。」
何時も読んでくださり有難う御座います。
次回で最終話になります、本当にこの様な拙い文面に付き合ってくださり感謝してます。




