第156話 クレメンス遂に捕まる(追放側視点)
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
第五章は第91話からです。
第六章は第113話からです。
最終章は第136話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
アルベルトがウルベノムと死闘を繰り広げている中、クレメンスは完全に地べたで眠りこけていた。
「がーはっはっはっ! 俺様最強だぜ!!」
夢の中でクレメンスは左右に美女を侍らせ、片手にワイングラスを持ち葡萄ジュースを飲んでいた。
「ジュースだ、もっと甘くて美味しいジュースを持って来い! 大英雄クレメンス様を称えるが良いがーはっはっはっ!!」
「クレメンスよ、次はこのピーチジュースなんて如何でしょう?」
「おお、気が利くじゃないかイシュタッド元国王君? だが解ってないようだねえ、クレメンス様だろ? もう一度言ってみ? ん?」
「申し訳ありませんクレメンス王様、以後気を付けます。」
「がーはっはっはっ! 召使いのドメスト君も彼を見習いたまえ!」
クレメンスの寝言をワナワナと拳を震えさせながら見下ろす人物の姿が有った、そうドメストである。 竜神族の郷へと戻りアルベルト達の後を追った結果、寝ているクレメンスを発見し国王と自分を馬鹿にしている台詞を耳にし今に至る。
「やっと見つけたぞ、私だけでなく国王陛下すら侮辱する夢を見るとはな。」
そして、クレメンスは夢の中で良い気分になっているところを隣の笑顔の美女から脇腹を殴られキョトンとする。
「がーはっはっ……痛た…………?」
「どうされましたクレメンス王様?」
「な、何でも無い……きっと気の所為……あだっ!!」
(何だ、やけに痛いぞ?)
「とっとと起きたらどうだクズ野郎。」
「は?」
クレメンスは隣の美女が笑顔で連続して腹を殴りながら男の怒気混じりの声で語りかける事に恐怖を覚える。
「いい加減に起きろ! 良い夢は見飽きたろ、次は悪夢を見せてやるよ現実でなあ!!」
「い、痛い痛い痛い! オエッ、何度も腹殴るな吐く! 吐いちまう!!」
クレメンスの夢と連動するかの様にドメストが脇腹を蹴り続け中々起きない事に苛立ち鳩尾に踵を押し付けグリグリと左右に動かす。
「はっ!」
「よう、元気にしてたか犯罪者め!」
「げえっ! ドメストなんで此処に居んだ!?」
「私は召使いなんだろ? 良いたい事が有るなら聴くぞ、クレメンス王様?」
「ひいっ!!」
「逃がすか!」
クレメンスはドメストの脚を払い除け四つん這いで逃げようとするが簡単に捕まり引きづられていく。
「は、はは……俺様が犯罪者ってなんの話しだ? 身に覚えが全く無いなあ。」
「イシュタッド元国王だったかなクレメンス君? 空を見上げれば分かると思うが全部君の寝言は筒抜けだったぞ、これは国王陛下に対する侮辱罪にも当たるなあ? 罪過が増えるよ、やったねクレメンス君!」
「嫌だあああああ! 泥水と黴びたパンの生活だけは嫌だああああ!!」
「誰が出すかそんなもん! 何時の時代だよ!! 独房生活どころか貴様の犯した罪の数々、即座に首を刎ねられても可怪しくないのだぞ!!」
「うひいいいいいいいい!!」
暫くしてドメストは竜神族の郷へと辿り着くと転移カードを使いイシュタッド王国へとクレメンスを連れて帰還する。
「貴様も国王陛下の顔が恋しかったとこだろう? 遠慮は要らん、存分に話し合うと良い。」
ドメストは今まで誰にも見せた事の無い怒りに打ち震えた凶悪な笑顔をクレメンスに向けイシュタッド王の居る部屋へと連れて行く。
「久しいのう、クレメンス・バッカーニアと言ったかのう? 最近物忘れが酷くてのう?」
「はは、それはお気の毒に……。」
「いやあ、この国の王の名前は何と言ったかのう? 聴かせてもらえないかのう、ワシは元国王らしいからのう……そうじゃろク・レ・メ・ン・ス・王・様?」
「や、やだなあイシュタッド国王陛下以外に国を治められる方が居る訳ないじゃないですか。」
(な、何で国王陛下もドメストも満面の笑みを向けんだ? 怖すぎる!!)
「それは変じゃのう、彼の口から聴かせて欲しいよのう? 主もそう思うじゃろ、召使いのドメスト君?」
「ええ、是非とも私の怒りを限界まで超させた者の口からどう思われていたのか聴きたいですね。」
クレメンスは恐怖のあまり全身から大量の汗が吹き出し左右に目が泳ぎ、最終的に目眩がしたかと思えば泡を吹いて気絶した。
「む、気絶しおったか残念ながら本人の口から犯した罪を直接聴くのは無理そうじゃな。」
「ですね、独房にでも放り込んで置きましょう。」
気絶したクレメンスを担ぎドメストは独房まで運び入れると鍵を掛け、イシュタッド王の元へと戻る。
「国王陛下、クレメンスの収容に大変時間が掛かってしまい誠に申し訳ありません。 本来なら直ぐにでも任務を遂行するべきでしたが、このドメスト如何なる罰もお受け致しましょう。」
「よい、気にするでない。 今はカノール・ブラウンの子息、アルベルト・ブラウンの大魔王討伐を目に焼き付けようではないか。」
「はっ!」
イシュタッド王とドメストはアルベルトとウルベノムの戦いの行く末を空を見つめ勝利を願う。
数分くらいが経ち独房でクレメンスが目を覚ますと辺りを見廻し扉を押したり引いたりしても開かず閉じ込められ裁判を待たされている事に気付く。
「うおっ! 開かねえ、誰か助けてくれええええ!! 殺されるうううう!!」
「うっさいわね、大人しく出来ないの?」
「ケニー!? お前も捕まったのか!!」
「何言ってんのよ、確かに捕まったけど条件次第で釈放されてるわ。」
バンバンと扉を叩く音に反応したケニーがクレメンスの独房へと近付き話しをするが何を勘違いしたのかクレメンスはケニーも捕まったと思い込む。
「条件次第で釈放? そうか、ケニーお前水商売で釈放されたんだな! くそう、俺様も身体が女なら直ぐにでもシャバの空気が吸えるのに!!」
「はあ? 何馬鹿な事言ってんのよ、私はイシュタッド王国で傷付いた人達の怪我を治す条件で釈放されてるんだから変な勘違いしないでくれる?」
「そうなのか?」
「それにクレメンスの女姿なんて想像するだけで吐き気がするから止めて頂戴。 ま、さっき聴いた話しだと嘘付く可能性が有るから魔道具の嘘発見器使うみたいだから正直に応えなさいよね?」
そう言ってケニーは困った表情でクレメンスの居る独房から離れて行く。
「ま、待てよケニー! 俺様を助けに来てくれたんじゃないのか、ここから出してくれよおおおお!!」
(はあ、情けない……何で私あんなのと冒険者パーティー組んでたんだろ?)
泣き叫ぶクレメンスの声に飽きれながらもケニーは自分の仕事に戻って言った。
何時も読んでくださり有難う御座います。




