第140話 大魔王ウルベノム
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
第五章は第91話からです。
第六章は第113話からです。
最終章は第136話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
翌日、俺達はウルディの元へと呼ばれ全員でチョコレートを食べていた。
「うむ、集まってもらったのは他でもない。 アクナヴィーテによる大魔王復活は今や誰にも止められん! 従って、王子に流れるマガルギ族の血により再び封ずる事を提案する!」
「封印か? 倒せるなら倒しても良いんじゃないのか?」
「寧ろ倒す事が目的だが、封印は最後の手段として用いてほしい。」
「それは良いのですが、その大魔王の封印されている場所はどちらの方へあるのでしょうか?」
メルダは大魔王が封印されている場所がどこなのか素朴な疑問を問いかける。
「うむ、何かの拍子に誰かが封印を解きかねないのでな。 次元の狭間と呼ばれる空間に現在は存在している。 だが、どういう訳かアクナヴィーテは頻繁に次元の狭間へと訪れておるがな。」
「その次元の狭間って、俺の父カノールも訪れていたのか?」
「カノールか、無論穢れたマナを浄化する為に訪れておった。 それがどうかしたのかアルベルト王子。」
「王子じゃないって、今の話を聴いて納得がいっただけさ。」
(アクナヴィーテは俺の兄弟のフリをして、更に父に無実の罪を擦り付けた理由も何かしらのメリットが有るからだろうな。)
「アルベルト様?」
「ん、大丈夫だ今迄だって何とかなったんだ今度も絶対勝ってみせるさ。」
「うん、そうだよね。」
(きっと今度も大丈夫よね?)
俺達はエボニーの案内で竜人族の郷に有る祠へと辿り着くとエボニーから一度入るとしばらくは出られない魔法陣の仕様を聞かされる。
「よいですかな? この魔法陣は悪用されぬ様に頻繁に使う事が出来ぬ様になっております。 つまり一度入ると再利用するのに時間がかかりますが宜しいかな?」
「分かった、一度入るとしばらくは戻って来れないんだな。 皆はどうする? 俺は一人でも行くつもりだけど。」
「馬鹿言ってんじゃないわよ、ここまで来て引き返すわけないでしょ?」
「そうだな、オレも国の復興の前に大魔王ってのに再び壊されかねんからな協力は惜しまねえよ。」
「ボクだってアクナヴィーテの奴がアルエッタの魂を持って行ってるんだ! 絶対に取り返さないと!!」
「皆さんもこう言ってますし、ワタクシも最後まで付き合いますわ!」
「そうですよ、私も道具係として恥じない様に全力を尽くします!」
「妾も着いて行くぞい、そなたの最後を見届けなければならぬからの。」
「イザベラ様、冗談でもそのような事は言うべきではありませんよ?」
「分かった、分かったからこの首筋の魔糸を解いてくれぬか?」
メルダは冷たい眼差しでいつの間にかイザベラの首に魔糸を括り付けていた。
「メルダ、そんな奴でも一応力を貸してくれてるんだ。 許してやれ。」
「アルベルト様が言うなら仕方ありませんね。」
「ふう、生きた心地がせんわい。」
俺がメルダにイザベラを許す様に言うと首の魔糸を解除し、いつもの表情に戻る。
「さ、皆行くぞ! これが最後の冒険だ!!」
アルベルト達が次元の狭間へと入る頃、アクナヴィーテは既に大魔王の封印されている場所にある巨大なクリスタルの前に立っていた。
「フフフ、やっと来ましたか。 こんな素晴らしいショーは当事者だけで行うのは気が引けますねぇ。 ん、どうやら私がラクシドールさんに命令して置いて来てもらった人形に群がってる人達が居るようですねぇ。」
(仕方ありませんねぇ、全て壊されでもしたら復活出来なくなりますし全て起動させますか。)
アクナヴィーテは右手を天高く掲げると魔力が放出され、それぞれの人形の元へと散らばり落ちて行く。
その一つである人形の元にはドメストが到着しており、妙な力を感じていたのか剣を振り上げ降ろし破壊する直前にアクナヴィーテの魔力が宿り人形が動き出す。
「何っ! いや、まだ間に合うはずだ!! ふんっ!!」
ドメストは力いっぱい人形の核となるてわあろう菱形の宝石の埋まっている箇所を剣で叩くが弾かれてしまう。
「くそっ、硬いな。」
人形が宙に浮くとその全貌が明らかになり、見た目は土偶の様な姿をしており半開きな目からは紅い光が漏れ、心臓の辺りには先程の菱形の宝石が埋め込まれている。
「はは、何て事はねえ勝てば良いんだ勝てば!!」
その頃、アルベルトがテレパシーにて声をかけた国々の者達も同様にそれぞれの場所で同じ人形と対峙していた。
そして、その中でもロクサーヌ王国から離れた場所にある草原にてアッサリと人形の核を破壊していた者が居た。
「妙な魔力を感じたから来てみれば、大した事無かったわね。 確かこの辺にアナタの国があるはずよね? シェリー……いえ、ロクサーヌ王国の姫シェスカ。」
人形を倒したシルエットは地図を取り出し、剣をしまうとロクサーヌ王国へと歩を進める。
ー次元の狭間ー
そこは仄暗く空は一面紅い、生暖かい風が吹き異様な空間だった。
「ここが次元の狭間か。」
(父はここでダークマターの浄化をしてたんだな。)
「アルベルト様、行きましょう。」
「ああ、皆何があるか分からないから気を付けろよ?」
皆が軽く頷くと俺達は周囲を警戒しながら、岩肌の間を真っ直ぐに進んで行くと橙色の巨大なクリスタルが見えて来た。
更にクリスタルの近くに誰かが立っているのを発見すると、その姿をよく見るとクレメンスだった。
「クレメンス!?」
「何だ、知り合いか?」
「何で此処にクレメンスが居るンダ?」
俺とニアミスは驚きを隠せず狼狽えているとクレメンスからはまるで別人の様な声を発する。
「フフフ、やっとここまで来ましたか。 待ちくたびれましたよ?」
「いや違う! アクナヴィーテか!!」
「御名答、こんな素晴らしい日には世界中でウルベノム様の復活をその目で拝見してもらわないといけませんからねぇ。」
クレメンスの身体を乗っ取ったアクナヴィーテは空に手を翳すと世界中の空にアルベルト達が巨大なクリスタルの前に居る光景が映し出される。
「さあ、始めましょうか!!」
アクナヴィーテの上空に浮いた六つの宝石が巨大なクリスタルに吸い込まれるとクレメンスの身体が倒れ込むと後方のクリスタルに亀裂が入り地鳴りが起ると大量の黒い煙と共に砕け散った。
「何だ、この感じ……。」
俺は嫌な予感がし、咄嗟に前に出ると煙の中から黒い魔弾が放たれ俺に直撃するが痛みは無く徐々に身体が石化し始めていた。
「アルベルト様!? 身体が!!」
「分かってる!」
確かに俺は魔弾が放たれる時、その姿を見た。
橙色の身体で子供くらいの背丈の紅い眼をした頭に角が有る怪物を。
何時も読んでくださり有難う御座います。




