第14話 ロクサーヌ王国
いつも読んで下さり有難う御座います。
今回から魔王討伐編になります。
タントルク村にて、マデルオーラの舘から水晶を奪還し再び村に結界が張られた日に俺達は感謝され、一日だけ村に泊めさせてもらった翌日。
「もう、行かれるのですか? 旅のお方。」
「まあ、気楽な旅だし次はロクサーヌ王国に立ち寄ろうと思ってます。」
「ロクサーヌ王国ですか、確か今は魔王討伐の参加者を募集していたと思いますが、参加されるので?」
村の村長から、ロクサーヌ王国の現状を説明される。
「アルベルト様、どうなさいます?」
「何か、大変な事になってそうですね。」
「僕は、アルベルトの思う様にすれば良いと思うな。」
マデルオーラの一件で、少しばかり疲れてはいるが気が向いたら俺は参加するかどうかを決めようと思った。
「まあ、それはロクサーヌ王国に着いてから考えよう。」
そう言って、俺達はタントルク村の人達に見送られながらロクサーヌ王国へと足を運ぶ。
道中、兎の頭に角が生えた魔物の横を通り過ぎるが襲いかかる様子はない。
「やっぱ、魔物も下手に刺激しなきゃ襲って来ないんだな。」
「それは、そうだろうね僕は狩をしてたから分かるな。」
何気ない会話をしているとエリーシャが横槍を入れてきた。
「それはそうと何でスラストくんはアルベルト様にキスなんてしたのかしら?」
「私も気になりました、スラストくんはソッチの気があるという事でしょうか?」
「え、何を言ってる? 僕は、どこから見ても女の子だろう?」
「「え? ええ!?」」
どうやら、二人してスラストを男だと思っていたようだ。
ややあって、俺達はロクサーヌ王国へと着いた。
外から魔物が入ってこないよう見張りをしている兵士に話しかけられる。
「やあ、君たちも魔王討伐に参加しにきたのかい? もし、そうなら城に向かうと良いよ。」
「皆は、どうする?」
「私はアルベルト様のしたいようにすれば良いと思うわ。」
「私は守られてばかりですが、迷惑でなければ着いて行きます。」
「参加するなら、僕の力も頼ってな。」
俺達は、きさくに話しかけてきた兵士の横を通りロクサーヌ王国の城下町へと足を踏み入れる。
「さてと、着いてばかりで悪いけど早速ロクサーヌ城に向かうかな。」
ロクサーヌ城には何人か魔王討伐の参加者が、ちらほらと見えていた。
(あれ? 何か見覚えのある人がいるな。)
「アルベルト様? どうかなさいましたか?」
「いや、何でも無い……。」
(どう見てもニアミスだよな、あそこにいるの。)
そう、俺の記憶が正しければ褐色肌で白髪をポニーテールにしている人物はニアミスしか知らない。
「あ!」
ニアミスらしき人物と目が合い、お互いに視線を逸らす。
そして俺達同様、城の中庭に集められた魔王討伐に名乗りを上げた者達は一斉に城の二階のベランダへと視線を集中させる。
「皆様、魔王討伐に御参加下さり誠に感謝します。」
ベランダには金髪で澄んだ青い目をし、水色のドレス姿の女性が立ち演説を開始する。
「この度は、身の危険を省みず魔王討伐の任へとついてくれた事を心より深く……。」
(やっぱ、俺は堅苦しい演説とかは昔から苦手なんだよなぁ……失礼なのは分かってるけど眠たくなってきた。)
段々と瞼が重くなってきて、目の前が暗くなったかと思うと俺はエリーシャに揺さぶられていた。
「アルベルト様! 大丈夫!?」
「んあ!? 何だ、もう朝か!!」
「何言ってるんですか、演説は終わりましたよ!」
「眠たくなるのは分かるが、まさか王族の前で立ったまま寝るか?」
不本意だが寝てしまい、周りには魔王討伐の参加者は既に討伐へと向かったらしい。
「そういや、魔王って何処にいるんだ?」
「はあ…、案の定聞いてなかったみたいですね。」
「悪い……。」
アネットは、俺が演説で聞きそびれた魔王の場所や行き方を淡々と語る。
「良いですか、ここから西にある祠に転移魔法陣が有ります。 その魔法陣で魔王城の近くまで出ますが、割と距離があるため付近の魔物を倒しながら進まなければなりません。」
「要は、襲いかかる魔物と魔王を倒せば良いんだな?」
「そうですが、前に戦ったマデルオーラの時のように一筋縄ではいかない気もしますが……。」
何故かアネットからは、不安になっているようだ。
「まあ、大丈夫じゃないかな! 僕も後方を確認しながらアネットを魔物から守るし。」
「私もアネットに近寄る魔物をショックボルトで倒してあげるわ!」
(あの魔法、ショックボルトっていうのか。)
「あんまり無理をするなよ、アネット? 君にも俺は助けてもらっているんだからな!」
その言葉を聞いたアネットは、少しばかり笑顔になった気がした。
「さぁ、行こうか! 西の祠へ!!」
「「「おー!!」」」
俺達はロクサーヌ王国から、西へ進むと石造りの祠が見えてきた。
祠に入ると中央には、魔法陣が描かれている。
「この上に乗れば良いのかな?」
上に乗ると魔法陣が光り出し、気付いた時には先程の祠と別の薄暗い祠へと移動していた。
「へぇ、これが転移魔法か……。」
俺は呑気に魔法陣から歩みでながら、魔法陣へと振り向くと次々と仲間達が転移してくる。
「皆揃ったな、じゃあ出発しようか!」
「あ! ちょっと良いですか?」
突然アネットが、話しかけてきた。
「ん、どうした?」
「実は、この魔王討伐に龍の顎にいた人を見たのですが……。」
「何でアネットが龍の顎の事を知って……まさか、あの時アネットをキマイラから逃げる為に犠牲にしたのって!!」
そう、ナルデナ洞窟の時の事だ。
俺は、あの時聞き覚えのある声をハッキリと聞いていた。
「アルベルト様? 顔色が悪いようですが…。」
「大丈夫だ、それよりも城で見たニアミスに注意した方が良いかもな。」
こうして俺達は、龍の顎を警戒しながら魔王討伐へと向かうのだった。
私も学生時代に校長先生の長い話が苦手で何度も睡魔に襲われました。
今となっては良い思い出です。




