第137話 ダークマターとラクシーの覚悟
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
第五章は第91話からです。
第六章は第113話からです。
最終章は136話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
エリーシャを部屋で寝かせた俺達は竜人族の男性へ連れられ、王女ウルディの元へと案内される。
「ウルディ様、王子をお連れしました。」
ウルディと呼ばれた竜人族の女性は蒼い髪に碧色の眼をしており、服装は東国で言う“着物”と呼ばれる物を着ている。
「御苦労、もう下がって良いぞエボニー。」
「エボニー?」
「何じゃ、お主また名乗り忘れたのか?」
「申し訳ございません、すっかり名乗り忘れておりました。 私はエボニーと申します。 御無礼をお許しください。」
「まあ、良いけど……その王子っての止めてくれないか?」
「では、何と呼べと?」
「俺はアルベルト・ブラウン、アルベルトって呼んでくれ。」
「了解しましたアルベルト王子。」
「まあ良いか、それで俺を呼んだのは竜人族の正統な王としてなら悪いけど断らせてもらうぞ?」
そう言うとエボニーの顔は絶望的になり横目で俺の顔をジロジロ見てくる。
「ふむ、それはそうだろうな。 いきなり自分が竜人族の王子だと言われて納得出来る訳ないからな。 では、もう一つ呼んだ理由を話すとするか。」
「もう一つの理由?」
「そうじゃ、単刀直入に言うぞ……アクナヴィーテは生きておる。」
「え、アクナヴィーテって俺がさっき倒した筈だぞ!?」
ウルディから告げられたのはアクナヴィーテが生きていると言う衝撃の事実だった。
「そんな事があり得るのか?」
「世界中の気配を探ってみれば分かる。」
「世界中の……!? なんだよ、これ……!」
「どうしましたアルベルトさん?」
「何かおかしいノカ?」
「アンタがそんな顔するなんて珍しいわね。」
俺はウルディに言われた通り世界中の気配を探るとアクナヴィーテの気配が数カ所にも渡り点在している事に驚く。
「まさか、これ全てアクナヴィーテの予備の入れ物が存在してるって事か!?」
「待って! それが本当ならアイツ倒すの不可能なんじゃない!?」
「レニーさん、落ち着いてください! その予備が有るって事は全て破壊すれば復活出来なくする事は可能なはずです!」
「けどさ、世界中に点在してんダロ? どう足掻いてもアクナヴィーテの目的が大魔王復活だったら、破壊しに行ってる間に封印解かれてんじゃなイカ!?」
不可能、そんな言葉が脳裏を過ぎった瞬間に俺はテレパシーで世界中の今迄出会ってきた人達へと頼る事を思い付く。
「いや、有る……何も俺達だけで解決出来る問題じゃない! なら、俺がテレパシーで世界中に今の内容を伝達してみる。」
俺は最初にイシュタッド王へとテレパシーを送り、周辺で怪しい物が無いかを訪ねる。
ーイシュタッド王国ー
「む、その声はアルベルトかの?」
(はい、国王陛下お久しぶりです。 突然すみません。)
「構わぬよ、それで何用かの?」
(実は……。)
俺はイシュタッド王へと状況を説明するとイシュタッド王からも俺に何か伝える事があると言う。
「分かった、その件は任せよ! それとワシはお主に謝らなければならぬ事がある。」
(謝らなければならい事ですか?)
「お主の父カノールについてじゃ。」
(父について?)
「そうじゃ、ワシの方で色々調べたのじゃがどうも不自然な事が分かっての、あの時カノールは“ダークマター”の浄化をしに行っておった筈なのだ。」
(国王陛下! 待ってください、何ですかダークマターって!?)
イシュタッド王から聞き慣れない言葉“ダークマター”と言う単語が出てきて俺は何がなんだか解らなくなる。
「カノールから聴いておらぬのか? ダークマターと言うのはマナが穢れ黒く変色した物の事じゃ。」
(まさか、父は誰かに嵌められて殺されたって事になるのですか!?)
「おそらくな、ワシは現在侯爵の爵位を継承しているヴィセット侯爵によるものと考えておる。 奴はカノールとは仲が悪かったからの。」
(分かりました、そちらの件も国王陛下にお任せします。)
「うむ、じゃがあまり無理をするでないぞ? カノールににて、無茶をしそうじゃしな。」
(はい、気を付けます。)
俺はイシュタッド王との会話を終え、ロクサーヌ王、妖精の王、エルフの長、師匠へとテレパシーで近くに怪しげな物が無いか捜査をしてもらえないか伝達すると皆快く引き受けた。
(有難う御座います!)
「これで、跡はヴァレンス王国とパラディオーネ王国の周辺を探すくらいか。」
「ヴァレンス王国なら私が行こうか?」
後方からドメストの声が聴こえ振り向くとメルダがアスティオ達を城内へと案内していた。
「本来ならオレの国の兵士が調査に向かうとこだが現状不可能だしな、ドメストに頼む他ないか。」
「さっき話は聴かせてもらったのでな、早速向かうとしよう。」
そう言うとドメストは踵を返し、捕縛していた竜人族を城内の竜人族へと引き渡すと真っ直ぐヴァレンス王国へと向かって行った。
「それで、アル何かあったの?」
「そう言えば、エリーシャは? 見当たらないけど……。」
トレーシィとスラストは一人足りない事に気付きキョロキョロと辺りを見渡す。
「エリーシャ様は現在部屋で休まれています。」
「そうなのですか!? 大事にはなられていなければ宜しいのですが。」
皆エリーシャの事を心配している様だ、ただ今の所一切声を出さないラクシーに対して俺は話しかけてみた。
「ラクシー? 大丈夫か、さっきから何か考え事してるみたいだけど?」
「えっ? あ、大丈夫だよ……なんでも何でもないから、ははは……。」
「そうか、なら良いんだけど。」
ラクシーは再び考え込み、何を考えているのか気になり俺はテレパシーで探ってみた。
(もし、条件さえ揃えばアルエッタを救えるかも知れない。 でもその時ボクは……!!)
「アルベルト、悪いけどこの事は二人だけの秘密にしてくれるかな?」
どうやらテレパシーを使っていた事を気付かれていた様で、他の人には聴かれたくない内容らしい。
「悪い、悪気は無かったんだ。 それにそれで目的が果たせると良いな。」
「うん、この命に変えても……ね。」
何時も読んでくださり有難う御座います。




