第135話 不穏な勝利
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
第五章は第91話からです。
第六章は第113話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
俺は全身全霊の力で邪竜アクナヴィーテを殴り飛ばすと雪山へとぶつかり瞬時に後方へと気配を感じ魔弾を放つと、その方向にアクナヴィーテが現れ被弾させる。
「ぐぅっ! 思っていたよりも、やりますねぇ。」
「うるせえよ、お前だけは絶対に許さねー!!」
「これならどうです!!」
「…………。」
アクナヴィーテは俺に向かい大きく口を開け、その喉から赤黒い魔弾を形成させながら、四方八方から出たり消えたりを繰り返し眼の前に出た瞬間に高エネルギーの魔弾を放つ。
「ふん! こんなもんで、俺が殺られるか!!」
「まだまだいきますよ!!」
「くっ……。」
(連続して魔弾放ってるな。)
俺はアクナヴィーテの放った魔弾を両手で止めるが、更に追撃で魔弾が徐々に大きくなっていき威力が跳ね上がる。
「はああああっ! 何っ!?」
「そこです!!」
「うおあっ、くっ……。」
強化された魔弾を俺は両手で無理矢理掻き消すと眼の前でアクナヴィーテが大口を開き突っ込んでくるが、俺は上顎の牙を両手で押し上げる様にし、下顎は両脚を使い噛まれない様にするが、アクナヴィーテはこの状態のまま岩肌へと突進し山を砕いて行く。
(何だ? さっきからこいつ力が弱まってきている様な? ……!?)
アクナヴィーテの力が弱まってきている事に疑問を抱いていると、またもや喉に魔弾が形成されていき今にも放つタイミングを見計らい、俺は上顎を蹴り上げると魔弾はアクナヴィーテの口をから上空へと放たれ消えていく。
(ぐぬぅ……、どうやら時間切れの様ですねぇ……。)
「だありゃあ! だりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!」
俺はアクナヴィーテに大きな隙が出来た事で長い胴体の鱗に覆われていない部分を連続して殴り続ける。
「うぐっ、ぐが……。」
「お前の顔は二度と見たくねえ! マナ・インパクト!!」
「グオオオオオオオオ!?」
「はあっ!!」
白目を剥き口から血を吐くアクナヴィーテに俺は右手の拳に全ての力を込め、アクナヴィーテの心臓部へと目掛けて突き出し、魔力と勇気が最大限合わさった青白い極太レーザーを放つ、しばらく耐えていたものの限界が来たのかアクナヴィーテの胴体を貫き遥か上空へと消えていく。
「かはっ…………。」
(これで……。)
「ん…………?」
アクナヴィーテの身体はドロドロに溶ける直前、その表情は何故かニヤついている事に俺は不信感を得るが骨の状態になったアクナヴィーテの身体は雪の上に落ちていった。
「エリーシャ…………、皆…………。 俺が弱いばかりに……。」
(アルベルト!)
「ラクシーか……どうした……?」
(アルベルト聴いて! イザベラさん達は生きてるよ!!)
「ほ、本当か!? けど気配が無いぞ!」
(大丈夫、皆気絶してるだけだから! 今はボクがテントになって身体を冷やさない様にしてるから安心して!)
「そうか、分かった!」
ラクシーからのテレパシーにより俺は皆が生きている事が嬉しくなり涙が自然と流れていた。
(ところでアルベルト、アルエッタは?)
「悪い、アクナヴィーテを倒す事ばかり考えてた。 けど見たところ、この前持っていた宝石は落ちてないな。」
(そう、アルベルトは気にしないで後はボク自身で探し出してみせるから。)
「分かった、俺も直ぐそっちに向かう!」
俺はラクシーからの情報でエリーシャ達の気絶している方向へと飛んで向う。
一方アスティオ達の方ではボロンは元の人形へと戻っており、戦意喪失していた。
「これ以上、戦う意味は無いな……好きにしろ。」
「ふむ、ではそうさせてもらおうか。」
ドメストは持っていた縄で縛るとボロンは観念した表情を浮かべていた。
「なあ、一つ効いても良いか?」
「何だ?」
「何故、竜人族を裏切る様な行為をしたんだ?」
「そんな事か、昔は良かったさ自由で何者にも支配されず勝手気ままに生きる事が出来た。 今じゃ、俺達竜人族は一部の者だけしか郷を出る事を許されてないからな。」
「掟かな? 僕もエルフの里でも昔は厳しい掟が合ったし。」
「まあ、そんなところさ……知ってるとは思うが今の時代は人間と竜人族のハーフが竜気、いや……人間の間では勇気と呼ばれていたな。 ある一部の子孫達がこの力で好き放題したのがキッカケで竜人族は自由に外へ出られないのさ。 話は終わりだ、連れて行け。」
「では、申し訳ないがアスティオ様、シェスカ姫、私はこの者を竜人族の郷へと連行しますので御守り出来ない事をお許しください。」
そう言うとドメストはボロンを連れて竜人族の郷へと向かい、それを見送ったアスティオ達はエリーシャ達の気配の消えた方向へと脚を運ぶ。
その一方で避難勧告が出た時カジノで遊んでいたクレメンスはカジノの地下へと誘導され、退屈そうに胡座をかき天井を見つめていた。
(はぁ〜、つまんねーな……もう少しでスリーセブンが揃ったってのにタイミング悪すぎやしねーか? トイレにでも行くか。)
クレメンスは悪態をつきながら立ち上がると地下にあるトイレに入り用を足した後に鏡を見つめる。
「はっ! 相変わらずの男前が映ってやがるぜ! んあ?」
鏡に映る自分を見てナルシスト発言をした直後、鏡に一瞬アクナヴィーテが映り勾玉が光出しクレメンスは猛烈な目眩に襲われる。
「な、何だ!? この感覚は……、意識……が…………ふぅ、ここはどうやら私が経営しているカジノの地下の様ですねぇ。」
なんとアクナヴィーテは生きており、勾玉に自分の魂の一部を入れる事で本体が消えた事でクレメンスの身体を乗っ取る。
「さぁて、始めるとしますか……世界最大の“大魔王復活”を。」
アクナヴィーテは顔に手で掴むとベリッと認識疎外マスクを引き剥がす。
第六章はここまでです、次回は最終章となります。
一旦完結させておきます。




