第133話 覚醒
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
第五章は第91話からです。
第六章は第113話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
全力の一撃を与えたにも関わらずアクナヴィーテは涼しい表情をしており、少しばかり放心状態になっていると腹部に激痛が走ったかと思えば俺の身体は宙を舞っていた。
「ぐぅっ……!?」
(何だ、攻撃されたのか!?)
「差が開き過ぎてしまいましたねぇ、これ以上は手加減出来ないのですが。」
「うぉあっ!!」
宙を舞う俺にアクナヴィーテから軽く蹴られ、岩肌へとぶつけられる。
「ぐっ……、くっ……。」
(なんて力だよ……、勝ち目なんて有るのか……?)
「そうですねぇ、良い事を考えました。」
「良い……事……?」
「ええ、貴方がやる気になれる素晴らしいアイデアですよ。」
「!?」
そう言うとアクナヴィーテはエリーシャ達の気配のする方へと掌を翳し、赤黒い魔弾を出現させ力を増大させる。
「ま、まさか………!」
「ええ、そのまさかですよ!」
「仲間もろとも葬るつもりか!?」
「仲間? まさか私に仲間なんていませんよ、あの方達は単に私の口車に乗せられただけの愚か者にすぎませんしねぇ。 それより、良いのですか? 早く私を殺さないと貴方の仲間が死ぬ事になりますよ?」
「やめろ、アクナヴィーテ! お前の相手は俺だろ!! やめろおおおお!!」
「時間切れですねぇ。」
俺を見下ろしながらアクナヴィーテは邪悪に嗤うと赤黒い魔弾をエリーシャ達の方へと放つ。
「なっ……、あ……あぁ…………。」
放たれた魔弾は真っ直ぐエリーシャ達の気配を飲み込み、遠くの方で爆発する。
「く、くく、あーはっはっはっはっ!! 貴方が悪いのですよ、早く私を殺さないから仲間が死んだのです!!」
「死ん……だ…………?」
「実感がわきませんか? それもそうでしょうねぇ、人間というのは実に脆い生き物ですし……貴方は最悪な気分かも知れませんが、私は絶望しきった貴方の顔が見れて最高の気分ですよ!!」
「嘘だ……、エリーシャ……返事しろ……。 エリーシャ? メルダは? アネット? ニアミス? レニー? おい、……誰か返事しろよ……イザベラ……?」
俺は必死にテレパシーでエリーシャ達の無事を確認しようと呼びかけるが返事は無く、気配すら無くなっている事を受け入れられなかった。
「無駄ですよ、気配すら無いのですから受け入れたらどうです?」
「くぅぅっ……………お前……だけは! ………お前だけは…………絶対に………許さねーぞアクナヴィーテ!! うああああああああっ!!」
アクナヴィーテに仲間を殺された怒りが俺の中で沸き上がり、その叫び声はいつしか竜の咆哮の様なものへと変わっていく。
「グオオオォォォ………ォォォオオ!!」
「変わった……?」
アルベルトは限界を超えた怒りの力により大地を震わせ、全身には雷を身に纏いながら黒髪から白髪へと変わり後頭部には竜人族の様な蒼い角が生え、その瞳も黄色から蒼色へと変わる。
「覚悟しろよ、この野郎!!」
「!?」
俺は力任せにアクナヴィーテの頬を殴ると今までとは違い、首の骨が折れる様な鈍い音が鳴るのを感じた。
その音が鳴った瞬間アクナヴィーテが落ちた雪は間欠泉の様に舞い上がり、その中から明らかに首の骨が折れているアクナヴィーテが浮かび上がる。
「く、くく……素晴らしい! そうこなくては、前座としての役割が全うできませんからねぇ!!」
「前座、何の話だ?」
「こちらの話ですよ、どうでも良いでしょうそんな事は?」
「ああ、お前の息の根を止めねーと俺の気が済まねえ!」
一方でシェスカ姫達の方では、戦闘が中断されており皆アルベルトとアクナヴィーテの居る方へと向いていた。
「ば、ばかな!? 何故、竜王様の力が二つも感じるのだ!?」
「ねぇ、さっきの魔弾ってさ。」
「うん、嫌な予感しかしないね……トレーシィと同じで僕もエリーシャ達の方へ飛んで行った様に思う。」
「何ですって!? では、エリーシャさん達は。」
「いや、生きてる!」
「アスティオ王子、気持ちは分かりますが……。」
「オレには、あの一瞬だけ赤黒い魔弾の軌道が逸れた様に見えた!」
(アルベルト負けるなよ、エリーシャ達は絶対に死んでなんかいない!!)
その頃、無理矢理に両手で首を戻したアクナヴィーテとアルベルトは激しく交戦していた。
「だりゃあっ!!」
「ぐはっ!?」
俺はアクナヴィーテの拳を振り払い、隙が出来たところへ蹴りを入れようとするも転移魔法により躱されるが後ろへ出てくる予感がし、そこへ拳を突き出すとアクナヴィーテの腹部へと深く入り込む。
「くくくく……、はぁ……まさか…………竜王の血筋が……これほどまでとは……良いでしょう、私も全力を出すとしましょう………はああああっ!!」
腹部を押さえながらアクナヴィーテは真の力を解放すると胴の長い赤黒い邪竜の姿へと変貌していく。
「くく、先程までとは比べ物にならない力ですねぇ! 今の貴方で勝てますかねぇ?」
「それがどうした、どれだけ強くなろうが俺はお前を倒す!! だありゃあっ!!」
「効きませんねぇ!」
俺は邪竜の姿になったアクナヴィーテの顔面を蹴るがダメージが与えられておらず、次にアクナヴィーテが身体を撚ると長い尻尾の先が俺に向かって来るが、その先っぽを掴み空中で振り回し雪山へと叩き付ける。
「でりゃああああ! これでも喰らいやがれ!!」
「ぬぅっ!?」
雪山に叩き付けたアクナヴィーテに両手を向け俺は無数の魔弾を雨の様に打ち続ける内に少しづつだが、自身の力がまるで無限に沸き上がる様な感覚に陥る。
「はああああっ!!」
(何だ、この感覚……これならどんな奴にも負ける気がしない!)
「ぐぅ……あまり調子に……乗らないで……くれますかねえ!!」
「消えた! うあっ!!」
無数の魔弾を受け続けたアクナヴィーテは転移魔法で俺の後ろへ出現すると尻尾で俺は弾き飛ばされる。
「ぷっ……、さっさと終わらせるか……はああああっ!!」
俺はアクナヴィーテにトドメをさすべく勇気を最大限身に纏う。
何時も読んでくださり有難う御座います。
次回も不定期投稿になります。




