第130話 裏切りの竜人族
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
第五章は第91話からです。
第六章は第113話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
イザベラの発言に対して、俺も疑問に思っていた事を質問する。
「なあ、アクナヴィーテは本当に死んでたのか?」
「間違いないわい、ブラウンの作戦で魔晶石の坑道が大爆発を起こしてアクナヴィーテもろとも命を落としておったからの。」
「死体は有ったのか?」
「大爆発によって、原型の殆どが分からないくらい黒焦げになってはいたが二人分の遺体は発見されておる! 分からんのは何故アクナヴィーテが生きておるのかという事じゃ。」
ブラウンという人物はルーズベルトの記憶の中にあり、アクナヴィーテと一人で戦いへと赴いた事を知ってはいるが、その戦いでアクナヴィーテが生きているとなると犬死にした事になる。
「そういや竜人族の秘宝がどうとか言ってたが。」
「うむ、あれは万が一の事があった時の為に女王以外入れぬ場所に保管しておったはずなのじゃがな。」
「ねえ、その秘宝ってのそんなに危険なの?」
トレーシィがイザベラに訪ねると深刻な顔立ちで頷く。
「そうじゃな、秘宝には竜王様の力が宿っておる。 あの力は悪しき者が使うと世界そのものを破壊しかねん代物じゃ。」
「じゃあ、早く取り返しす必要あルナ。」
「そうね、私達は今までどんな困難だって乗り越えて来たもの! アルベルト様が居るから、今回だってきっと大丈夫よ! ねアルベルト様!!」
「ん、ああ……そうだな。」
「アルベルト様?」
「どうかされましたか? 気分でも悪いのですか?」
「いや、何でもない。」
「アルベルトさん、これローヤルゼリーです! 最近、頑張り過ぎてますし疲れ取れますよ。」
「ああ、有難うアネット。」
(何だろうな、考えて過ぎか……今何かを失う様な感覚があったが。)
俺はアネットから渡されたローヤルゼリーを一気に飲み干すと大広間の入口に気配を感じ、その方向を見るとアクナヴィーテの姿があった。
「アクナヴィーテ!?」
「おや、流石に気付くのが早いですねぇ。」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
「お主、どうやって入って来たのじゃ!?」
「そんな事はどうでも良いでしょう? これ、何でしょうねぇ?」
アクナヴィーテは不敵な笑みを浮かべ紅い宝玉をイザベラに見せ付ける。
「それは、竜王様の!? 返せ、それは主の様な輩が扱って良い物ではない!!」
「ボクもお前から返してもらわないといけない者がある! アルエッタを何処にやった!?」
「おやおや、私を泥棒扱いとはねぇ。 まあ良いでしょう、返して欲しくば“竜王山”まで来てください。 そこでなら、貴方も全力で戦えるでしょう? ルーズベルトさん?」
「俺はアルベルトだ、ルーズベルトの意思は受け継いだ。」
「これは失礼、では私はこれで。」
「待たぬか! ちっ、消えおったか。」
イザベラがアクナヴィーテを捕まえようと隙を伺い、飛びかかるも既の所で消えられ失敗してしまう。
「くそ、逃げられたか。」
「なぁイザベラ、アクナヴィーテが言ってた竜王山ってのは?」
「むっ、この国の北にある雪山の事じゃな……行くつもりか?」
「秘宝を取り返さないと被害が出るんだろ? なら、なおさら行くべきだ……罠だろうとな。」
「僕達だって確かに強くなってるんだ! だから、頼ってよ!」
「しかし奴は、……その眼は妾が何を言っても無駄な顔じゃな、分かったそこまで言うなら行こうではないか! 竜王山に!!」
俺達はイザベラの屋敷から出て、しばらくするとシェスカ姫達と合流する。
「アルベルトさん! 大変ですわ、今国中へ避難勧告が発令されてますわ!!」
「折角、パラディオーネ王国の民主運動を見学する機会だってのにとんだ災難だな!」
「はあ、全くお二人共立場があると言うのに現況を突き止め解決すると聞かないとは……。」
「あはは、ドメストさんは何だか大変そうですね。」
「全くだ。」
本来ドメストは王族を護る側の人間だがシェスカ姫とアスティオ王子の気迫に押されてしまったのか、渋々許可した様に見える。
「これから何方へ向かわれますの?」
「竜王山だな、アクナヴィーテがそこに居る。」
「アクナヴィーテ? この騒ぎの現況か?」
「おそらくな、時間も勿体無いし直ぐにでも出発するぞ!」
「分かりましたわ!」
俺達はパラディオーネ王国から竜王山に向けて雪道を通るが、不思議な事に魔物一匹見当たらない。
どうやら、嵐の前の静けさと関係しているのか魔物達も避難しているとでも言うのだろうか。
「ここが、竜王山の麓じゃ……この先に確かに感じるの奴のアクナヴィーテの気配を。」
「ああ、けどアクナヴィーテだけじゃないな。 この気配、イザベラと同じ竜人族か。」
「何体いるか分かルカ?」
「アクナヴィーテを除いて二体だな。」
「うむ、この龍気はボロンとギーンか……裏切り者共め。」
雪山の山頂まで登ると遠くに見える三人の人影が見え、近付くと左右にイザベラと同じ様に頭に角、腰から尻尾の生えた竜人族が居た。
「お久しぶりですね、元女王陛下。」
「ふん、貴様らが何を考えておるのかは知らぬが秘宝が世界を破滅させる程の力が有るのは知っておろう?」
「勿論ですとも、しかし我々は郷の掟に嫌気がさしましてね。」
「嫌気じゃと?」
「ええ、彼等は男性の竜人族が郷の外へ出てはいけないと言う掟が気に食わないそうでねぇ。 私は彼等の自由を約束し、欲しかった秘宝を手に入れてもらいましてねぇ。」
「秘宝! 返さぬか、盗っ人めが!!」
「言われなくとも、お返ししますよ。」
アクナヴィーテが秘宝をイザベラに向けて投げると、秘宝を手にしたイザベラがアクナヴィーテを睨み付ける。
「お主、使いおったな……。」
「くく、当然でしょう? 入れ物に要は有りませんからねぇ。」
「そうだ、貴方にもコレはお返ししましょう。」
次にラクシーに向かって紅い宝石を投げるが、ラクシーは受け取らず宝石は雪の上に落ちる。
「その中にはアルエッタの魂を感じない、今何処にある!!」
「それは、世界最大のエンターテイメントを私をが行う時に分かりますよ。」
アクナヴィーテがそう言い、指をパチンと鳴らすと竜人族の二人と俺達の方は俺とイザベラとラクシーを残し他の皆が消えていた。
何時も読んでくださり有難う御座います。
次回も不定期投稿になります。




