第127話 温泉
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
第五章は第91話からです。
第六章は第113話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
ルーズベルトの魂の一部と戦い、やっとの想いで一撃を当てた事により認めてもらい今までのルーズベルトの人生を記憶に刻み込まれていく。
その中には子供の頃に亡くなったアスティオに似た男の子ロディとエリーシャに似た女の子フィオが無惨に何者かに殺された光景が広がる。
「無力……だったんだ、俺は英雄だから最初から強いものだと思ってた。 ルーズベルトの復讐に手を貸す訳じゃないけど、大魔王ウルベノムは必ず倒さないと封印した所で“暗黒の時代”が繰り返されるだけだ。」
しばらくして意識が自分の身体に戻りゆっくりと目を開けると心配そうにエリーシャが俺の顔を覗き込んでいた。
「アルベルト……様……よね……?」
エリーシャの顔を見ると何故か安心するが近くにある水晶玉に映る自分の顔を見ると落書きされている事に気付き、自然と左手がイザベラの顔面を殴っていた。
「オォン!?」
「アルベルト様!?」
その勢いのままイザベラを床に叩き付けると顔面を押さえながらゴロゴロと転がり回る。
「アォン! イタスギィ!! 逝く逝く逝く……ンァーッ!!」
「本当にアルベルト様なの!?」
「あ、違う! 身体が勝手に!!」
「お主ルーズベルトじゃろおおおお!!」
その瞬間ルーズベルトの記憶からイザベラのウザったい行動が記憶に流れ込み脳がオーバーフローを起こし大声で叫んでしまう。
「ああああああああああああああああ!!」
「どうしたンダ!?」
「アルベルト様! 急にどうされたのですか!?」
「と、兎に角落ち着きなさいよ! 貴方らしくない!!」
「…………。」
「今度は急に落ち着いたけど大丈夫?」
「アル?」
皆が心配する中ルーズベルトの記憶が全て俺の中に入り終えたのか、疲労感が一気に押し寄せて来たがしばらくすると落ち着く事ができた。
「だ、大丈夫だ……少し休めば良くなる。」
「そう?」
「ふぅ……、スッとしたぜぇ。」
そこへ洗濯されていたラクシーが綺麗になって戻って来る。
「アンタさっきまで嫌がって叫んでなかったかしら?」
「ボクはエンターティナーだからね!」
「意味がうつらないわ、こっちも用件は済んだし宿屋にでも泊まりに行きましょうか。」
「ま、待て待て……もう暗いし宿屋へ行っても先客がおるじゃろうし全員泊まれるとは思えんぞい?」
レニーの提案で宿屋へ泊まろうとするとイザベラが暗くなっている事を理由に止める。
「イザベラ様の仰っしゃられる通り、この大所帯では部屋数が限られますね。」
「じゃから妾の屋敷に泊まるが良いぞ! 若造もついでにの。」
「俺はついでなのかよ……。」
「それに長旅で疲れたじゃろう? 家には温泉が有るんじゃ、身体を温めると良いぞ!」
「「「「温泉!!」」」」
「アル、温泉ってなーに?」
「地面から湧き上がる熱い水溜りの事だな。」
「その言い方じゃと語弊があるが……まあそんなもんじゃな。 では着替えは、コチラで用意するぞい!」
俺達はメイドに連れられ男湯と女湯に別れて温泉に入る事になった。
「と、ところでイザベラさん混浴ってのは?」
「あ、ある訳無いじゃろ!」
(男と混浴なぞ考えるだけでも悍ましい!)
「何だ残念、アルベルト様と一緒に入りたかったな。」
「アンタねぇ……。」
(私はアルベルト様と一度だけ一緒に入りましたが、あの時の事は覚えてないでしょうね……。)
エリーシャは俺の方をチラチラと見ながらイザベラに混浴できる場所があるのか訪ねると青褪めた表情をしたイザベラは無い事を即答する。
(何だ? メルダの顔、少し赤くなってるが風邪でもひいたのか?)
「早う入るぞい、若造分かっておるとは思うが覗いたら命は無い物と思え!」
「言われなくても覗かねーよ、寧ろアンタの方がムグッ!」
「そ、それ以上喋るでない! さっさと入りに行かんかい青二才が!!」
「わ、分かったよ。」
慌てて俺の口を塞ぐイザベラは、自分の過去を語られたくないのか俺に対して早く温泉へ行く様に指示する。
脱衣所に入った俺は、ひと一人分しか通れない道を眼の前にし唖然とする。 服を入れる籠だけがポツンと置いてあり他にはタオルが一枚有るだけだった。
「狭っま! これ絶対態とだろ!!」
仕方なく俺は服を脱ぎ扉を開けると完全に外と繋がっており夜の為、身体が直ぐに冷え込む。 眼の前に有る温泉も大人一人入れる広さしかなく近くに有った桶で掛け湯して温泉に入る。
「寒っ! 熱っつ!!」
「これは酷いね……。」
「ん、ラクシーか何で居るんだ?」
「ちょっと話がしたくてね、ほらアクナヴィーテとかいう奴が紅い宝石みたいなの持って行ったでしょ?」
「そういやそうだな。」
「あの宝石からアルエッタの魂を感じたんだよ。」
「何だって!?」
「だから、ボク絶対にアイツからアルエッタを助けたいんだ! 勿論協力してくれるよね?」
「ああ、良いぞ! 俺達はもう仲間だからな!」
ラクシーは俺の前に現れると胸中を語り、アクナヴィーテに持っていかれたアルエッタの魂をラクシーは取り返したく協力を仰ぎ、俺は二つ返事で承諾した。
一方その頃、女湯の脱衣所ではイザベラ以外皆タオルを巻きその光景を見て意見するイザベラが居た。
「何故タオルを巻いておる! 裸の付き合いをするというのに!!」
「えーと、何ていうか恥ずかしいと言うか………。」
「なーにが恥ずかしいよ、こんな大っきい物ぶら下げちゃって!!」
「ひゃあっ!!」
エリーシャが恥ずかしそうに語るとレニーが後ろから胸を下から押し上げる。
「…………。」
(僕だって毎日牛乳飲んでるのに何でああならないんだろ……。)
「スラスト様、大丈夫ですか? 眼に涙が見えますが?」
「大丈夫だよ、胸がぺたんこなくらいで死にはしないから!」
「トレーシィ、それ本人が一番傷つく奴なんダガ……。」
トレーシィの一言により、スラストはず〜んと俯き落ち込み始めた。
「はは、どうせ僕なんて一生まな板のままなんだ。」
「あーもう、いい加減風呂に入るぞ! サッパリすれば嫌な事も忘れるじゃろ!」
(く〜、これでは身体を洗う時ぐらいしかおなごの裸が見れんではないか!)
(何故あの人泣いてるのか分かりませんね……。)
少しばかりイザベラから距離を置き遠くからアネットは、溜息を吐くのであった。
何時も読んでくださり有難う御座います。




