第122話 ルーズベルト
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
第五章は第91話からです。
第六章は第113話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
イザベラは俺に預言書を出す様に促し、既に亡くなっている筈のルーズベルトから話を聴くように言ってきた。
「えーと、ルーズベルトに話を聴けと言われてもな……エリーシャ預言書は持って来てるか?」
「はいアルベルト様、イザベラさんコレで良いの?」
「うむ、預言書に手を触れよ……その本にはルーズベルトの魂の一部が封されておる。」
「これで良いか?」
「では、行くが良い。」
俺は預言書に手を添えるとイザベラは預言書にマナを送り込んだかと思えば、俺の意識は遠のきしばらくすると真っ白な空間にいた。
「うん……、何だここ? 辺り一面真っ白だ。」
立ち呆けていると遠くの方からカチカチと小石どうしが軽くぶつかる様な音が聴こえて来る。
「何か聴こえるな、行ってみるか。」
音のなっている方角へと脚を進めて行くと一人の男が後ろ向きで胡座をかき右手で何か音を出している様だった。
「あの……。」
「やっと来たか、だがやはり俺の記憶は持ってねーみてーだな。」
男は立ち上がり、振り返るとその姿がハッキリと分かる。 おそらく、イザベラの言っていたルーズベルト本人だ。 しかし、左腕が無く右手には二つの小石を持ち髪の色は黒く瞳は黄色かった。
「イザベラから聴かなかったか?」
「いや、何も。」
「そうか、俺の記憶をそのまま受け継いでいたなら話しは早かったのだがな。 仕方ないか、悪いが力試しをさせてもらう! 俺を失望させるなよ?」
一方、本の世界の外側ではイザベラがアルベルトの顔に油性ペンで落書きしていた。
「うむ、中々様になったの。」
「ちょっと! アルベルト様に何て事してるの!?」
「えー、こうした方が格好良いよ!」
トレーシィはイザベラから油性ペンを取り、アルベルトの瞼の上に凛々しい目を追加する。
「何やってんのよ、アンタ達は……。」
「それで今アルベルトは意識が無さそうダガ?」
「そう、心配するでない今頃は本の中でルーズベルトの魂の一部と話し合っておるはずじゃ。」
そして、洗濯機の稼働が終わり中からラクシーが取り出されドライヤーでブオォォーという音で乾かされていた。
「熱い! アツ、アツゥイ……アツ……アツイ!! アーモウ、ヤアアアアダアアアア!!」
「ねえ、この声ラクシーさんじゃありません?」
「そうだね、多分だけどドライヤーで乾かされているんじゃないかな?」
そんな会話をしていると預言書から膨大な魔力が溢れ出る。
「きゃっ!? 何、預言書が!!」
「始まった様じゃの、さて意識が戻る頃にはルーズベルトに変わっておるか、はたまたルーズベルトに認められて自我を持って戻って来れるか見物じゃな。」
「えっ、待って! 今なんて言ったの!?」
イザベラの口から、聞き捨てならない言葉が飛び出しエリーシャが詰め寄り問いただす。
「何とは? 意識が戻った時には、自我を持っておるか別人に変わっておるかの違いってだけじゃぞ?」
「何よ……それ……、何でそれを先に言わないの!! アルベルト様が別人に変わっちゃうかもしれないって事でしょ!?」
「そう言われてものう、既に本の中へ意識を飛ばしておるし……あ奴次第じゃな。」
「そんな……。」
預言書に飛ばされたアルベルトの意識は、ルーズベルトの力試しを受けていた。
「あ、危なかった……ギリギリ躱せた。」
「この程度の攻撃くらいは避けれて当然だ、だが反応が遅すぎるな。」
俺はルーズベルトが掌を向けたと同時に魔弾を放たれ、反応が遅れたが至近距離まで近付いた所で回避に成功した。
「さて、消えたくなければ本気でぶつかって来い!」
「消えたくなければ?」
「大魔王ダイアロスを倒す為なら、お前の身体を奪う事も持さない!」
そう言うとルーズベルトは体内のマナを最大限解放し、俺が今までに感じた事が無い程の殺気が全域に広がる。
「!?」
(何だ、この魔力量!? 俺の何倍もある、それだけじゃない……この殺気、本気で俺を消す気だ!!)
俺は咄嗟にルーズベルトに構え、一瞬の油断が命取りになる事を実感する。
「覚悟は良いか?」
「ああ、俺も消える訳にはいかない全力で戦わせてもらう! マジックアーマー!!」
身体能力をマジックアーマーで強化すると、ルーズベルトは真っ直ぐ俺に向かい拳を振り抜き、俺は両腕を交差させ防ごうとするがパワーが違いすぎた為遠くへと吹っ飛ばされる。
「甘い!」
「ヤベッ!?」
(くっ! 何だ、力が違い過ぎる!?)
「ウラアッ!!」
「うわああああっ!!」
吹っ飛ばされた衝撃で床に倒れ込むが直ぐに起き上がると眼の前にはルーズベルトが突っ込んで来ており、右脚で回し蹴りを放っていた。
「そらよっ!!」
「うわっ!?」
何とか左腕にマナを集中させ、ダメージを軽減させるが再び遠くへと飛ばされる。 次は地面に背中が着く反動を利用し、立ち上がるがルーズベルトは先程同様に近くまで接近しようとしていた。
「どうした、その程度か? 消えたくなければ抗ってみせろ!!」
「くっ……、フラッシュ!!」
「…………残念だ。」
「ぐはあっ!?」
俺は何とか攻撃のチャンスを作ろうとしフラッシュで目眩ましをするがルーズベルトには通用せず、目を閉じたまま俺の鳩尾にルーズベルトの拳が入る。
「ゲホッ……、ゲホッ……! オエッ……、クッ……ウッ!」
「期待外れにも程があるな、俺が態々転生後の為に石版へ無属性魔法を記していたにも関わらず、この体たらくとは。」
「はぁ、はぁ……。」
(強い……、マジックアーマーで身体能力を強化しても反応が追いつかないなんて、流石は大魔王を封印した英雄ってだけの事はある。)
「今ので、お前の戦い方が分かった。 マジックアーマーで身体能力を強化し考え無しに突っ込む脳筋スタイルだろ? 俺には通用しない、さっきの目眩ましも最初の攻撃でお前に付けたマナを追えば目を閉じたままでも位置は分かる。」
「ははっ……、やっぱり強いな……けど俺だって負ける訳にはいかねえ。 うああああああああっ!!」
「龍気か。」
俺は勇気を解放し、再びルーズベルトに構え本気で戦う為に思考を巡らしていく。
何時も読んでくださり有難う御座います。
次回も不定期投稿になります。




