第12話 マデルオーラの最後
マデルオーラ戦は、これにて終了となります。
「燃えカスとなるが良い! ブレイズボール!!」
俺達に向けたマデルオーラの掌には先程同様に魔法陣が浮かび上がり、その中央から巨大な火の玉が真っ直ぐに飛んでくる。
「まともに喰らってたまるか! マナドレイン!」
巨大な火の玉をまとマナへと還元し、吸収する。
「ちぃ、小賢しい!!」
吸収したマナを使い、俺はマデルオーラに大きめの魔弾を放つ。
「これでも喰らえ!」
「当たってたまるか! ぐぎゃああああー!!」
魔弾は躱されてしまったが、その隙を見逃さなかったスラストの矢がマデルオーラの右目を射貫く、貫かれた目からは緑色の血が滴り始める。
「甘く見るな! 僕だって戦える!!」
「クソが、調子に乗るなよ若僧がああああー!!」
そして、マデルオーラの後方ではエリーシャとアネットがバルコニーの中央に位置する燭台にある水晶を奪還すべくスケルトンと対峙している。
「エリーシャさん! どうします? おそらくスケルトンには電撃は効きませんよ!!」
「問題ないわ、私の使える魔法は一つじゃないもの。」
そう言い、エリーシャは剣と盾を持ったスケルトンの懐に入り触れた瞬間に魔法を使う。
「パニッシュ!!」
その瞬間、スケルトンはバラバラになり行動しなくなる。
「エリーシャさん、凄いですね! これを繰り返せば燭台にある水晶を取り返す事が出来そうです。」
エリーシャは、攻撃を躱しながらスケルトンを次々とバラバラにしていく。
だが、アネットの後ろにいつの間にか剣を振り上げ今にも振り下ろそうとしている。
「アネット! 後ろ!!」
エリーシャの声に反応し、アネットは後ろを振り向き自分の置かれた状況を理解する。
「え? あぁ!!」
剣を振り下ろしかけた時、大きめの魔弾がスケルトンに直撃する。
「た、助かりました! アルベルトさん!!」
「良かった、さすがアルベルト様ね! アネット、スケルトンは大分片付いたから水晶をお願い!!」
「了解!!」
アネットは水晶をバッグの中に入れ、目的を達成したことを俺にたいして叫ぶ。
「アルベルトさん! 水晶を取り戻しました!! 後は、そいつを倒すだけです!!」
その声を聞いたマデルオーラは、アネットへ向かって掌を向け魔法を放とうとするが、そうはさせまいとスラストの矢がマデルオーラの腕を斬り飛ばす。
「ぐぎゃああああー!! おのれぇー!!」
「そうはさせるか! お前なんかに誰も殺させてたまるか!!」
マデルオーラは片目と片腕を失い、もはや虫の息だ。
「ぐっ……ぞぅ……、誰も逃がざぬぞ……絶対にぃ……。」
最後の力を振り絞りながら、マデルオーラは魔法を使った。
その瞬間、大きな地震が起こる。
「うわっ! な、何だ!?」
「ちょっと! 今度は何!?」
スラストがバルコニーの扉の方をみると舘が明らか崩れていっているのを目にする。
「あ、アルベルト! 舘が崩れてる!! 早く逃げないと!!」
(コイツ、俺達全員道連れにする気か!?)
「ホーホッホッホッ……、お好きな……死に方を選びなざ…い……どのみぢ…アナタ達は…助からない……。」
俺達は、マデルオーラを残して舘からの脱出を試みる。
「スラスト! バルコニーから飛び降りるぞ!! アネットを頼む!」
「エリーシャ! 少しの間、我慢してくれ!!」
俺は、そう言うとエリーシャをお姫様抱っこをしスラストは、アネットをおんぶする。
俺とスラストは、その状態でバルコニーから飛び降りる。
その光景を見ていたマデルオーラは最後に馬鹿にした様に語る。
「ば…馬鹿め……、そこは崖下……エルフは、ともかく…人間は………落ちれば即死だ……。」
「ま、魔王……様………この不甲斐ない……わたくしを……お許し下さい……ゴフッ……。」
そう言い残し、絶命したマデルオーラは崩れ行く舘の底に落ちていった。
「お、おい…アルベルト…、僕は、この高さから落ちても平気だが君は大丈夫なのか?」
俺達は緊急事態の為、咄嗟にバルコニーから跳んだが先の事を考えておらず今は徐々に落ちていく感覚に苛まれていた。
「俺は、大丈夫だが二人が落下の衝撃に耐えられるかどうか……。」
「ちょっ、不穏な事言わないで下さいよ! アルベルトさん!!」
「つまり、私はアルベルト様から離れないように、しっかりつかまっていれば良いのね。」
そう言ってる内に落下スピードがあがる。
「「きゃああああーーー!!!」」
二人の悲鳴が谺するが、エリーシャのは俺に抱きつく事で出た嬉しさから出たモノでアネットに関しては、高所から落下する恐怖から出ているモノのようだ。
それほど長い時間はかからなかったが俺はマジックアーマーを使用する事で落下に対する衝撃を大幅に少なくし、スラストは、エルフ特有の身体能力の高さで衝撃を和らげたようだ。
「あばばばばばば!?」
「大丈夫か? アネット?」
「アルベルト様、私も心配してほしいなぁ。」
「ん、エリーシャも良く頑張ってくれたな!」
そんな会話をしながら崖の上を見ると舘が、崩壊していっているのが見えた。
「終わったんだね、これでもう舘の魔物に悩まされなくて済むな!」
「いや、まだ村に水晶を返さないといけない。」
「うん、ありがとうアルベルト見ず知らずの僕を信用してくれて……何だか君の事、好きになったみたいだ。 だから、これからもよろしく。」
一瞬、その笑顔にドキッとしたが近くに降ろしたエリーシャが頬を膨らまし、俺を見ていた。
「エリーシャ? どうかしたか?」
「別にぃ…。」
(私ったら何で男の子相手に嫉妬してるのかしら?)
「そんじゃ、村に水晶を返しに行くぞ! 立てるか、アネット?」
「な、何とか…。」
アネットの足は、生まれたての子鹿のようにプルプルしていた。
しばらくしてタントルク村へと着き、村の中央へと俺達は足を運び、台座の前までやってきた。
「あんた達、凄いな! あの舘から水晶だけでなく魔物まで倒したんだろう!?」
俺達の周囲には老若男女問わず集まっており、最初に会った中年の男性が話しかけてきた。
「ん、ああ礼ならスラストに言ってくれ! 彼女がいなかったら厳しかったからな!」
「彼女?」
村人達は彼女と言う言葉に引っかかりを感じ微妙な顔になるが、それをスルーした。
「アネット、台座に水晶を。」
「ええ、これで良いんですかね? 何か水晶の中央にドス黒い何かが渦巻いているようですが…。」
アネットは、バッグから水晶を取り出し台座に乗せるが何も起こらない。
「アルベルト様、この水晶…邪悪な魔力で満たされてるわ。」
「魔力なのか? なら、何とかなるかもしれない!」
俺は、水晶に手を翳し無属性魔法を唱える。
「マナドレイン!!」
すると水晶の周りには風が吹き荒れ、村娘とおばちゃん達のスカートがめくれ上がりさまさな下着が見えてしまう。
「きゃああああーーー!?」
村娘達は悲鳴を上げるが、おばちゃん達は動じていないようだ。
その場に集まっていた男性達は、若い村娘の方向を見据えていると奥さんだろうか、ある者はひじ鉄をかまされ、またある者は胸ぐらを掴み上げられていた。
「お! 良い感じに邪悪な魔力だけをマナに変換できてるな!」
ドス黒い魔力は、しばらくマナドレインで吸収すると水晶が輝きだし、村全体に半透明な結界が張られた。
「おお! これで村に魔物が入らなくて済む、ありがとう旅のお方! 疲れたじゃろう、良ければ泊まって行きなさい。」
村長らしき人物から感謝され、タントルク村での休息を促される。
「確かに疲れましたから、お言葉に甘えさせてもらいます。」
「僕は……。」
「そこのエルフさんには悪い事をしたからの、お主も彼らと同様泊まって行きなさい。」
「こう言ってるんだから皆で泊まろう!」
「そうよ! スラストくんも頑張ったんだから甘えて良いんじゃない?」
「そうですよ! 今回一番頑張ったのはスラストなんですから!!」
スラストは、くん付けで呼ばれる事に違和感を感じながら俺達に感謝の言葉を述べる。
「皆、ありがとう! それと、これはアルベルトへの御礼だ!」
そう言うとスラストは、俺に顔を赤らめながらキスをした。
次回は、追放側視点になります。
4月7日の投稿は申し訳ありませんが、お休みします。
楽しんでいただけたのなら幸いです。
 




