第117話 宿屋のサービスと働き蟻(追放側視点)
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
第五章は第91話からです。
第六章は第113話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
パラディオーネ王国のトイレにて悪態を付く者がいた、そうクレメンスである。
「クソッ、あのアバズレめ! 俺様で訳分からん遊びをしやがって!! そのせいで漏らしちまったじゃねーか!!」
クレメンスはトイレットペーパーを使い切り、漏らした分を拭き終えるとトイレから出る。
「ったく、酷い目に合ったぜ……。」
「こちらに居られたのですね、今日は城の客室に泊まられますか?」
「何だと!? 冗談じゃない、こんなトコに居られるか! 俺様は一人になれる宿屋を探させてもらう! じゃあな!!」
そう言うとクレメンスは城から出ると服屋へと向かい、新しい服を買いに行った。
「いらっしゃいませー!」
(何か臭うな、この人……。)
「おう、これとこれとこれを買わせてもらおうか。」
「はい、合計で12600ゴールドになりまーす。」
「もう少し安くならないのか?」
「そう言われましても……。」
(うわぁ……、値引き交渉してくる嫌なタイプだ。)
店員は困った顔をしながら、冷静に値下げが出来ない事を伝えるとクレメンスは店員を睨みながら悪魔の様な思考に辿り着き脅しとも言える交渉をする。
「良いのか? そんな事を言って……。」
「何を言われても安くは出来ません!」
「それは残念だ、ではお望み通り店内で漏らすとしよう……。」
そう言うとクレメンスはズボンに手をやるとカチャカチャと音を鳴らし、店内は咄嗟にクレメンスが店内でクソをしようとしている事に気付く。
「わ、分かった! 分かったから、それだけは止めてくれ!! 商売上がったりだ! 12000ゴールドで良いから!!」
「…………もう一声。」
「いや、これ以上は……。」
無言でクレメンスは、カチャカチャと音を鳴らす。
「分かった! 10000ゴールド、10000ゴールドで良いから! 頼むから、速く出てってくれ!!」
「そうかぁ? いや、悪いなぁ俺様も店員の善意を無下に出来ないし10000ゴールドで買わせてもらうか!」
「有難う……ぐぉずぅあいましとぅあ!」
(二度と来るじゃねーぞ、このクソ野郎!!)
クレメンスは店員を脅し、10000ゴールド丁度の値段で新しい服を購入すると宿屋へと向かった。
「ガーハッハッハッ! 気分が良いぜ、さーてと次は宿屋で着替えるとするか。」
早速クレメンスは宿屋で受け付けを済ませると部屋に入り、風呂で温まった後に新しい服に着替える。
「サッパリしたぜ……、ん? ギルドの発行している記事か……どれどれ。」
記事に目を通すとカジノにて大勝して1億ゴールドもの大金を手にした老人の話が掲載されていた。
「おー、良いねえ……ジジイになって大金獲得しても使い切る前におっ死んじまうのが目に見えているが夢が有って良いじゃねえか。」
カジノ関係の記事に目を通していると部屋をコンコンとノックする音が聞こえてきた。
「ルームサービスです、コーヒーはいかがですか?」
(女の声……? ルームサービスって言ったか、サービスっつー事は無料か。)
「入って良いぜ、俺様自らサービスとやらを受けてやろう!」
「お邪魔します。」
クレメンスが許可を出すとトレイの上にポットとコーヒーカップ、角砂糖の入った容器を持った女性が部屋へと入り、それぞれ机の上に置いていく。
「それでは、失礼しますね。」
女性はクレメンスの座っている椅子の隣に座り、カップにコーヒーの元を淹れ湯を注いだ。
(ほぅ、中々のサービスだな……にしてもこのコーヒーヤケに黒くないか? それに幾らこの宿屋の中が暖かいからってこんなに短いスカートを穿いてるって事は、そう言うサービスとして捉えて良いんだな? では、遠慮なく。)
「きゃあっ!?」
「ほげあっ! アッツアチアチチチアッツ!!」
「こんの変態! 死ね! 訴えてやるっ!!」
クレメンスは隣に座り湯を注いでいる女性の太腿を擦ると驚いた女性が手に持っていたポットをクレメンスの顔面にぶつけ涙目で部屋から出ていった。
「あ? 何だよ、あのアマ! サービスっつーから受けてやったのによ! 二度と受けるかこんなサービス! ズズ……苦っが!! これブラックじゃねーか、ったくコーヒーのツウな飲み方ってのは砂糖を沢山入れて甘くして飲むのが常識なんだぞ!?」
顔面に湯がかかり火傷をしたクレメンスは、少しでも落ち着こうとコーヒーを口にするが苦い物が苦手であり、大量の砂糖を入れる。
「全く、全部入れてようやくマシになったな。 まさか、この国の女はあんなのばっかなのか? こいつを飲んだら寝るとするか……明日からカジノで俺様は大金持ちになってやるぜ!」
コーヒーを飲み終えるとクレメンスはベッドに横になり、翌日の事を考えながら眠りにつくがクレメンスに黒く小さな生物が近付いて行く。
しばらくするとクレメンスはイビキをかきながら、グッスリと眠りにつき黒い生物、そう蟻の大群がクレメンスの口の周りに集まっていた。
ー蟻視点ー
「テメーら、今回も女王蟻の為に糖分を持ち帰るのが俺達の最重要任務だ! では、早速取り掛かれ!!」
「あの、僕は初めてなのですが……どうやって糖分を取り出すのですか?」
「そういや、新人にはまだやり方を見せてなかったな。 よーく見ておけよ? 繊細な技術がいるが、見様見真似で大体なんとかなる。」
そう言うとリーダー各の蟻は呼吸を整え、二本の前足を交互にクレメンスの口元に奇妙な声を発しながら叩きつける。
「虫義蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻、蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻ARyyyyyyyyy!!」
「す、凄い! リーダーの踏みならしたところから糖分が浮き出て来てる!!」
「何ボサッとしている? 覚えたなら新人も速くアリアリラッシュをするのだ!」
「はい!」
翌朝クレメンスの口の周囲は赤く腫れ上がり、タラコ唇の様な状態になっているのは言うまでもなくない。
何時も読んでくださり有難う御座います。
次回も不定期になります。




