第105話 ショータイム
第二章は第26話からです。
第三章は第46話からです。
第四章は第66話からです。
第五章は第91話からです。
では、引き続き無属性魔法使いをお楽しみ下さい。
四つのトランプマークの鍵を手に入れた俺達は、ヴァレンス王国を支配している魔物の居るテント型の建物の扉にそれぞれ鍵を差し込んでいくとゆっくりと扉が開いていく。
「この先に奴が、ヴァレンス王国をめちゃくちゃにしたラクシドールが待ってる! ここから先はオレの戦いだ、これ以上進むかどうかは君達で決めてくれ。」
「乗りかかった船だしな、最後まで俺は付き合うよ。」
「アルベルト様の言う通りよ、平和を取り戻しましょう!」
「あたし達も力を貸すよ!」
「そうだね、僕達だって特訓して強くなったんだ! きっと大丈夫だ!」
「では、私も征悦ながらお手伝いさせていただきます。」
「有難う、こんな自分一人じゃ何も出来ない王族の為に。」
アスティオ王子は俺達の行為に感謝しながら、皆でテントの中を進んでいき、しばらくすると真っ暗な空間に出てしまう。
「真っ暗ですね……。」
「何だ、暗闇の先に何か居るな。」
「ようこそ、オシオキ部屋へ。」
暗闇の先に何者かの気配を感じ、その方向を見ていると何処からともなく声が聞こえてきたと思うとスポットライトが声の主を照らす。
「ラクシドール………。」
「おっと、困るよ先にボクの名前を言っちゃ……自己紹介は自分で名乗らなきゃ駄目って習わなかった? 気を取り直してボクはラクシドール、子供達の救世主さ!」
「何が救世主だ! 親子を離れ離れにした挙げ句、父上や兵士達まで操り人形とした癖に! お前が子供達の幸せを語るな!!」
「はぁ〜、君にはガッカリだよ……まるで見たくない物は見ないで表面上だけ見ている。 世の中ね、家族が居るからって必ずしも幸せな家庭って訳じゃないんだよ? いい加減、ボクも君には苛ついてたんだ……もう大人認定して殺しちゃっても良いよね?」
目の前に居る赤い帽子でピンク色の兎の着ぐるみは、如何に自分が正しいかを述べ分かり会えない事が分かると建物を覆う程の殺気が充満し、入って来た扉が閉ざされる。
「アルベルト様、扉が!」
「分かってる!」
ラクシドールは息を大きく吸い込むと燃え盛る火炎を吐くと火は俺達を囲む様に燃え広がった。
「今度は逃げられない様にしないといけないからね、火の周りには蛇でも配置しようかな? 猛毒持ってる奴!」
両手をラクシドールが広げると何処からか猛毒を持った蛇が大量に火炎の外側に降り注ぐ。
「これで準備万端! さあ、オシオキの時間だよ!」
「それがどうした! オレはお前を倒す為に戻って来た、逃げる事など決してない! 火炎切り!!」
逃げられない状況を作り出したラクシドールに対し、アスティオ王子は腰に携えた二つの剣を両手に持ち、ラクシドールへと剣と剣での摩擦による熱で火を起こし斬りかかる。
「おっと危ないな、そんなの当ったら燃えちゃうじゃないか!」
「アイシクルバレット!」
「残念、ボクに魔法は効かないよ?」
「マイトアロー!」
「聞いてた? 魔法は聞かないんだって。」
「それはどうかな?」
「!?」
アスティオ王子の放った技をラクシドールは軽く躱し、その隙をトレーシィが魔法で攻撃するが効かずスラストが新たな魔法の矢、マイトアローを放つとラクシドールに刺さりしばらくすると爆発する。
「なるほどね〜、今のはちょっとだけ驚いたよ。 けどそれ、中身が有る奴にしか効果無いよ?」
「だろうね、だから今のは只の目眩まし。」
「目眩まし?」
「こう言う事だ!」
「あら?」
俺は勇気を纏いスラストのマイトアローの爆煙に紛れ、ラクシドールの懐まで飛び込み腹部を殴るが中身が無いのか手応えを感じなかった。
「何だ、この感じ!?」
「無駄無駄、ボクに勝てる訳ないでしょ?」
「様子がおかしいですね、まるで魔法も物理的な攻撃も効いてないように伺えます。」
「そんな……、でも何か弱点くらいは有るはずよ!」
「おわっ!」
ラクシドールにダメージを与えられない俺達の戦いを観察しながら、メルダは弱点を探っている最中、唐突にラクシドールは着ぐるみみたいな身体を風船の様に膨らませ息を吐きだし天井まで飛んでいった。
「な、何だ?」
「おい! 降りて来やがれ、逃げる気か!!」
「逃げる? まさか、こんな楽しいショーに欠かせない観客の存在を忘れてたからね! さあ、ご案〜内!!」
「何か降りて来ます!」
「ひ、人!?」
陽気な声が響き渡ると天井から両手足が切断されたかの様に無くなっている大人の人が数名火炎の外側で毒蛇に噛まれない位置まで糸に吊るされた状態で降りて来る。
「なんて、酷い事を……許せねえ!」
「シュタッ……と、ん〜良いね良いね! これでやっと場の雰囲気作りがらしくなって来たね!」
「た、助けてくれて! 頼む、君達だけが頼りなんだ! 金なら幾らでも有る、他の奴はどうでも良いから早く私を助けろおおおお!!」
「…………耳障りだね。」
「ぎゃああああ! ひぎゃあああああっ!!」
吊るされた大人の一人は子供に暴力を奮った遊園地のオーナーであり、自分だけ助かろうと騒ぎ立てるがラクシドールの怒りに触れてしまいブツッと糸が切れ落ちると毒蛇が群がり一瞬にして姿が見えなくなり噛まれ続ける。
「簡単に死んでもらっちゃ、オシオキにならないからねリジェネレーション……。」
「おい、何もそこまでする必要は無いだろ!!」
ラクシドールは毒蛇の中へ落とした大人へ持続する回復魔法をかけ、さらなる苦しみを与える。
「はあ〜、分かって無いね〜ここに居る大人は皆子供達にとって悪い大人なんだから罰を与える必要が有るのにな。 さっきの奴、何て言ったか聞いてた? 自分だけ助かりたいんだってさ、それってさ全く反省してない証拠だよ? なのに何でボクが悪いみたいになってんの意味分かんない……。」
呆れた様にラクシドールは頭を俯きながら横に振り、俺達に向き直ると左目の穴の空いている部分から輪っか状の赤い瞳が妖しく光りだす。
「さあ、始めようか……観客も舞台も整った事だし楽しい楽しいショータイムをね?」
何時も読んでくださり有難う御座います。




